ブログ
特許ブログ【海外情報】各国特許最新レポート
2022.08.08
特許に関し各国の注目すべき最新状況を発信致します。2022年7月の注目情報は以下の通りです。
米国、米国特許商標庁(USPTO)
テキサス州西部地区連邦地方裁判所の特許訴訟の割り当て方針について
2022年7月25日に付けで、テキサス州西部地区連邦地方裁判所(United States District Court for Western District of Texas)のChief JudgeであるOrland Garcia氏により、Waco支部に提起された特許訴訟を同支部に在席する12人のJudgeに均等に割り当てられるようランダムに担当Judgeを選定する旨の命令を発行しました。本命令の背景は、同地区のJudgeであり特許権者側に有利な進行を行うことで有名なAlan Albright氏が同地区に提起された全ての特許訴訟を担当していること、及び、フォーラムショッピング(特許権者が有利な訴訟地を選択して特許訴訟を提起すること)により米国に提起される特許訴訟の多くが同支部に集中している点につき、CAFCや議会から批判を多く浴びていたことにあります。
テキサス州西部地区連邦地方裁判所は、特許権者に有利な結論を出すため特許訴訟が多く提起されることで有名でしたが、今回の対応により今後、特許訴訟が提起される地区が他へと移行されるか否かが注目されております。
■ Orlando Garcia 主席判事によるOrder (テキサス州西部地区連邦地方裁判所)
特許審判部(PTAB)の審理回避拒否に関するガイダンス
2022年6月21日に発表のものとなりますが、USPTOより特許審判部(PTAB)の審理回避拒否に関するガイダンスが公表されております。
現行の米国特許法で新設された当事者系レビュー(Inter Partes Review: IPR)、及び付与後レビュー(Post-Grant Review;PGR)は、第三者等から特許の取消(無効)を請求するための制度となります。これら両レビューにつきましては、請求後に審理を開始(institute)されるか否かの決定がなされます(米国特許法314条、324条)。
今回のガイダンスは、裁判所とPTABとに同一の当事者による特許訴訟が並存している際にPTABが当事者系レビュー等の審理開始を裁量によって拒否できる場合に関するメモランダムとなります。また、本メモランダムは、先例(precedential:Apple Inc. v. Fintiv, Inc)において示された一連の非排他的要因(所謂 “Fintiv factors”)に関するものとなります。
当該メモにおきましては、PTABは、IPR等の審理開始を拒否できないものとして以下を明確にしております。
(i) 請求人による請求(petition)で特許性の欠如を示す強力な証拠が提示されている場合
(ii) Fintivルールに基づく審理開始拒絶の請求が並行するITC手続に基づく場合
(iii) 申請人が、請求(petition)に記載した同一の理由又合理的に提起され得る何らかの理由を、並行する地裁訴訟手続において追行しない旨を定めている場合、
また、当該メモにおきましては、米国特許法第314条(a)、第324条(a)及び第325条(d)に基づく他の理由によりPTABが審理開始を拒否する権利を留保する点についても言及されております。
今回のガイドライン(メモランダム)は暫定指針であるものの、USPTOに係属しているすべての手続に適用される旨が記載されております。
また、USPTOは、今後今回の暫定指針が正式な規則制定に置き換えられることを期待しております。
■ 審理回避拒否に関するMEMORANDUM - USPTO
■ Precedential:Apple Inc. v. Fintiv, Inc., IPR2020-00019, Paper 11 (PT AB Mar. 20, 2020)
■ USPTO: Inter Partes Review(IPR:当事者系レビュー)
■ USPTO: Post Grant Review(PGR:付与後レビュー)
カナダ特許庁
(1)2022年度版特許法規則改正
カナダ特許庁にて特許法の規則が改正されております。本改正は、一部施行済みのものを除き2022年10月3日に施行が予定されております。当該改正は、「カナダ・米国・メキシコ・協定(CUSMA)」、「EU・カナダ包括的貿易投資協定 (CETA)」及びPCT規則等の改正(塩基配列及びアミノ酸配列の作成に関するWIPO標準ST.26への移行)などが背景となっております。
クレームの超過費用及びRCE等に関しましては「審査請求時」が基準となりますので、これらの新制度の適用回避を希望され場合には、2022年10月1日までに審査請求を行うことが推奨されております。
主な改正内容は以下の通りです。
i) 超過クレーム料の導入(対象:2022年10月3日以降に審査請求を行った出願)
クレーム数が20を超えた場合、20を超えたクレーム1つ当たりにつき、超過料金100カナダドル(CAD;但しSmall EntityはCAD $50)の支払いが必要となります。
超過料金の支払い時期は、審査請求時、及び、特許許可時であり、審査請求時にはその時点におけるクレーム数で超過料金が算出されます。また、審査過程においてクレームが増減した場合には、審査過程におけるクレームの最大数に基づき超過料金が算出されます。このため、審査請求時よりも審査過程におけるクレーム最大数が大きい場合には、審査請求時との差に基づいて追加の超過料金が算出されます。
ⅱ) RCE(Request for Continued Examination;継続審査請求)制度の導入 (対象:2022年10月3日以降に審査請求を行った出願)
今回の規則改正により、審査請求後のオフィスアクション(Examiner’s notice)の発行が3回に制限されます(当該オフィスアクションには単一性違反のみを通知するもの、及び、Final Actionも含まれます)。このため、3回目のオフィスアクションに対応する際には継続審査請求(RCE)の提出が必要となります。RCEの提出期限は最後の通知から4カ月以内であり、816カナダドル(但しSmall EntityはCAD $408)の支払いが必要となります。また、一度RCEを提出した後は、2回目のオフィスアクションの対応毎にRCEの提出が必要となります。
なお、今回の規則改正においては、軽微な補正さえすれば特許可能である場合に、Conditional Notices of Allowanceという通知を発行し、限定的に補正を許可する制度も導入されます。
ⅲ) 塩基配列及びアミノ酸配列の作成に関するWIPO標準ST.26への移行(2022年7月1日より施行)
■ カナダ特許庁 Amendments to the Patent Rules
(2)カナダ特許庁への出願状況(2020-2021)
カナダ特許庁発表の2020-2021の出願状況等に関するデータは以下の通りです。
・出願件数: 総数 37,164件
内訳:Chemistry:13,433件、Electrical engineering:5,912件、Instrument:6,078件、Mechanical engineering:7,245件、Other fields:4,496件
・出願人上位(国):US(16,563件)、CA(5,496件)、GE(2,03 2件)、CN(1,652件)、JP(1,450件)、FR(1,416件)、UK(1,292件)、CH(1,120件)
・出願人上位(企業):RATT & WHITNEY CANADA CORP, SAUDI ARABIAN OIL COMPANY, HUAWEI TECHNOLOGIES CO., LTD, GUANGDONG OPPO MOBILE TELECOMMUNICATIONS CORP., LTD , HALLIBURTON ENERGY SERVICES, INC., THE TORONTO-DOMINION BANK, BASF SE, THE BOEING COMPANY, THE PROCTER & GAMBLE COMPANY, PIONEER HI-BRED INTERNATIONAL, INC.
Member
PROFILE