ブログ
【中国】【意匠】部分意匠出願の審査開始に関する弁法の公表
2023.01.10
中国国家知識産権局(CNIPA)は、2023年1月5日に、「改正専利法の施行に関する関連審査業務処理の暫定弁法」を公表しました。これにより、専利法実施細則の改正後に始めるとされていた部分意匠出願、及び意匠の国内優先権主張の審査が、実施細則改正を待たずに開始される可能性があります。また、部分意匠出等を、CNIPAが近く導入予定とされている新オンライン出願システムを通じて提出することが可能になります。
2021年6月1日の改正専利法施行にあたっては、施行直前の2021年5月24日に、今般公表された弁法と同じ名称の「改正専利法の施行に関する関連審査業務処理の暫定弁法」が公表されていました。この2021年5月の弁法の内容は、部分意匠出願、意匠の国内優先権主張出願、特許期間延長、開放式実施許諾等の改正法で新たに盛り込まれた制度について、2021年6月1日より主に紙出願の形で申請を受けつけるものの、「実際の審査は専利法実施細則の改正後に行う」とするものでした。しかしその後、実施細則及び審査基準の改正作業が難航し、昨年中に改正されるとのアナウンスがあったものの、現時点で、改正内容は正式公表されていません。今般公表された新たな弁法は、この2021年5月24日の弁法を差し替えるものです。
今般の弁法の前文には、「イノベーション主体の部分意匠、意匠の国内優先権の審査に対する切迫した需要に応じるために」と記載されており、本文からも「実際の審査は専利法実施細則の改正後に行う」との文言が削除されています。そのため、今回の弁法は、大量に積滞している部分意匠及び意匠の国内優先権主張出願について、実施細則の改正を待たずに審査を開始することを宣言するものと考えられます。現在までに公表されている、部分意匠出願の出願方法に関する審査基準改正案は、本ブログの別記事にて紹介しておりますので、ご参照ください。また、条文では更に、部分意匠出願等を紙出願だけでなくオンライン出願でも提出できることが明記されました。CNIPAでは、近く新たなオンライン・システムの導入を予定しており、この新システムは部分意匠出願等に対応しているものと思われます。
ただし、今般の弁法でも、審査遅延及び新薬発売許可申請のための特許期間延長、並びに専利権の開放式許諾については、実施細則改正後に審査することが明記されています。
以下、今般公表された弁法の和訳(仮訳)を掲載します。
(仮訳)
国家知識産権局による「改正専利法の施行に関する関連審査業務処理の暫定弁法」の公告
(第510号)
改正専利法の施行を保障し、イノベーション主体の部分意匠、意匠の国内優先権の審査に対する切迫した需要に応じるために、国家知識産権局は「改正専利法の施行に関する関連審査業務処理の暫定弁法」を制定し、ここに公布し、2023年1月11日より施行する。
国家知識産権局
2023年1月4日
改正専利法の施行に関する関連審査業務処理の暫定弁法
第1条 専利出願人は、2021年6月1日(同日を含み、以下同じ)より、紙出願又は電子出願の形式で、改正専利法第2条第4項に従って部分意匠出願を提出することができる。
部分意匠出願をする者は、全体の製品の図面を提出し、破線と実線を組み合わせた形式方は他の形式で保護を求める内容を表現しなければならない。保護を求める部分が立体形状を含む場合、提出図面は当該部分を明確に示すことができる斜視図を含まなければならない。製品全体の図面において破線又は実線の組み合わせの方式で保護を求める内容を表現していない場合、意匠の簡単な説明において、保護を求める部分を明記しなければならない。
第2条 本弁法の施行日から、出願日が2021年6月1日以降の専利出願について、出願人は、改正専利法第24条第1項に規定される状況があると考える場合、紙出願又はオンライン出願の形式で申し立てをすることができる。国家知識産権局は、新たに改正される専利法実施細則の施行後に、上記申立を審査する。
第3条 出願日が2021年6月1日以降の意匠出願について、出願人は、改正専利法第29条第2項に従って、意匠の国内優先権を主張する書面を提出することができる。
意匠出願人が国内優先権を主張する場合であって、先の出願が意匠出願である場合、同じ主題について意匠出願をすることができる。先の出願が発明特許又は実用新案出願である場合、図面に示された意匠について、同じ主題の意匠出願を行うことができる。
意匠出願人が国内優先権を要求する場合、先の出願は後の出願の提出日から取り下げられたものとみなされる。ただし、意匠出願人が発明特許又は実用新案出願を国内優先権の基礎とする場合を除く。
第4条 出願日が2021年6月1日以降の専利出願について、出願人は、改正専利法第30条に従って最初に出願した専利出願書類の写しを提出することができる。
第5条 2021年6月1日以降に登録公告がされた発明特許について、特許権者は、改正専利法第42条第2項に従って、特許権付与の公告日より3か月以内に、紙出願の形式で特許期間の補償請求を提出し、続いて国家知識産権局が発行した費用納付通知書に従って関連費用を納付することができる。国家知識産権局は、新たに改正される専利法実施細則の施行後に、上記請求を審査する。
第6条 専利権者は、2021年6月1日より、改正専利法第42条第3項に従って、新薬発売許可申請が許可された日から3か月以内に、紙出願の形式で特許期間の補償請求を提出し、続いて国家知識産権局が発行した費用納付通知書に従って関連費用を納付することができる。国家知識産権局は、新たに改正される専利法実施細則の施行後に、上記請求を審査する。
第7条 本弁法の施行日より、専利権者は、改正専利法第50条第1項に従って、紙出願又は電子出願の形式で自らの専利権に対して開放式許諾を実施する意思があると声明することができる。国家知識産権局は、新たに改正される専利法実施細則の施行後に、2021年6月1日以降に提出された上記声明を審査する。
第8条 本弁法の施行日より、侵害者として訴えられた者は、改正専利法第66条に従って、紙出願又はオンライン出願の形式で国家知識産権局に専利権評価報告書を発行するよう申請することができる。
第9条 2021年6月1日より、国家知識産権局は、改正専利法第20条第1項、第25条第1項第5号に従って、方式審査、実体審査、及び覆審手続きにおける専利出願を審査する。
第10条 出願人は、国家知識産権局が本弁法に従って行った決定に不服である場合、行政復議の申し立て、復審請求、又は行政訴訟を提起することができる。
第11条 出願日が2021年5月31日以前(同日を含む)の意匠権の保護期間は10年とし、出願日から起算するものとする。
第12条 本弁法は、2023年1月11日より施行される。2021年6月1日施行に係る「改正専利法の施行に関する関連審査業務処理の暫定弁法」(国家知識産権局第423号通知)は同時に廃止する。
Member
PROFILE