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今後の電力政策の方向性について中間とりまとめ(案)の公表について
2023.02.01
2022年12月27日に資源エネルギー庁により、「今後の電力政策の方向性について 中間とりまとめ(案)」(以下「本中間とりまとめ案」といいます。)が公表され(※1)、2022年12月27日より2023年1月25日までの間、パブリックコメントに付されました(※2)。
今般、日本政府はGX(グリーントランスフォーメーション)の推進に積極的であり、カーボンニュートラルの実現に向けた取組みが重要である一方で、エネルギー安定供給の再構築の政策も同時に必要であるため、電力・ガス基本政策小委員会において、電力システム改革に係る論点について議論が行われております。11 月 24 日に開催された電力・ガス基本政策小委員会において、電力制度の再点検結果を踏まえた今後の電力政策の方向性(案)が整理され、本中間とりまとめ(案)は、これを踏まえて当該今後の方向性について取りまとめたものとなります。
(※1)https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000245930
(※2)https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=620221227&Mode=0
本中間とりまとめにおいては、①安定供給に必要な供給力の確保、②カーボンニュートラル実現に向けた送配電網のバージョンアップ、脱炭素電源の導入推進、並びに③小売事業、市場・取引環境、及び制度のバージョンアップを取り上げておりますが、今回は、本中間とりまとめ案で言及されている発電側課金の導入及び小売電気事業制度の整備について取り扱います。
発電側課金の導入について
発電側課金とは、現在、小売事業者が全て負担している送配電設備の維持及び拡充に必要な費用について、需要家とともに系統利用者である発電事業者に一部の負担を求める制度をいいます。昨年中旬頃まで、発電側課金についての発電事業者への課金については、既存FITに関して区別なく議論され、既存のFIT案件についても発電側課金がなされる前提で検討がなされてきました。今般、発電事業者側に新たな負担を求める発電側課金の円滑な導入に向けては、再エネの最大限の導入を妨げないよう、既存FIT/FIP電源等の取扱いを慎重に検討する必要があるとの指摘がなされました。その結果、本中間とりまとめ案においては、発電側課金については、以下のような取扱いとする方向性で、検討されています。
(1) 既存FIT/FIP(※3)=既存FIT/FIPの調達期間等が終了してから発電側課金の対象とされます。つまり調達期間終了までは発電側課金がなされないこととなります。
(2) 新規FIT/FIP(※4)=新規FIT・FIPの調達価格等の算定において考慮するとされています。
(3) 非FIT/FIP=発電事業者の相違工夫(相対契約等)の促進及び円滑な転嫁の徹底を行うとされ、発電側に課金することを前提としていると考えられますが、今後の開催される委員会の検討対象とされております。
(※3)既存FIT/FIPとは、発電側課金の導入年度の前年度の入札で落札した案件以前の案件をいうものとされています。
(※4)新規FIT/FIPとは、発電側課金の導入年度以降の入札で落札した案件を意味するものと考えられます。
なお、2023年1月30日に開催された電力・ガス取引監視等委員会の制度設計専門会合(第81回)においても、上記と同様の方針で議論が進められております(※5)。
既存FIT/FIPについては、すでに運転開始済の案件も相当数あると思われ、既存FIT/FIP案件に発電側課金がなされるかの点については注目されている発電事業者も多いと思われ、また、今後導入が期待される非FIT/FIP案件についても同じくどのような形で発電側課金がなされるのかについては、関心の高いところであると考えられます。その意味で、パブリックコメントの結果及び今後の政府の方針の公表が待たれるところです。
(※5)https://www.emsc.meti.go.jp/activity/emsc_system/pdf/081_04_00.pdf
小売電気事業制度の整備について
小売電気事業は、一般の需要に応じて電力を供給する事業であり、小売電気事業を行うためには、小売電気事業者としての登録が必要になります。2016 年の小売全面自由化後、小売電気事業者の数は大幅に増加しており、現在700者を超える事業者が小売電気事業に参入しています。一方で近時の電力価格の急騰等に伴って、小売電気事業の経営環境の悪化から、小売電気事業からの撤退や縮小といった事象が相次いでいるといわれております。このような中、現在小売電気事業者に対する規律の在り方が検討され、小売電気事業者への規律を厳しくする方向性で検討がなされており、具体的には休廃時及び中途解約時における規律の強化、また小売電気事業の登録審査やモニタリングの強化が検討されております。
上記の小売電気事業者に対する規律強化の一方で、多様化する小売事業及び需要家の形態に応じた制度整備も検討されております。
より具体的には、小売電気事業の自由化以降に想定されていなかった自社グループ会社等、グループ内のみの電力供給を目的としたビジネスモデルが出現し、このような供給形態は、一般の需要家と比較し、その保護の必要性が低いことになります。上記の通り、小売電気事業者についての規律が厳格化されることを踏まえ、グループ内供給についても新たなライセンス(特定需要供給事業者(仮称))を設け、小売電気事業者とは別のライセンス類型とすることが検討されております。
現在、オンサイト型の電力供給モデルに加えて、自己託送をベースとした密接関係性のあるグループ会社間のオフサイト型の電力供給モデルや組合型のオフサイトPPAに基づく電力供給といった形で電力供給の形態が多様化しております。
この点について、本中間とりまとめ案では、新たに導入される特定需要供給事業者(仮称)については、小売電気事業者とのバランスの観点から、小売電気事業者に準ずる類型として、一般送配電事業者への託送契約に基づく託送料金等の支払、再エネ特措法の納付金及び容量拠出金の支払を求めることとすることが適当であるとされております。
また、自己託送モデルについても言及されており、「現在、自己託送のスキームを用いて電力を供給し、その後、需要地内融通として実際には別の者が電力を使用するといった事例が出現している。このような供給は法に抵触はしないが、自己託送の制度の趣旨を超えるものであるため、そのような供給形態は、小売電気事業者又は特定需要供給事業者(仮称)として電気を供給するものと整理することが適当である」との指摘もなされております(※6)。
現在導入が進められているグループ間供給や自己託送モデルに一定の影響を与えるといえるかと思われますので、この点についてもパブリックコメントの結果及び今後の政府の方針の公表が待たれるところです。
(※6)本中間とりまとめ案(https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000245930)P20以降
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