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特許ブログ【海外情報】各国特許最新レポート
2023.03.03
特許に関し各国の注目すべき最新状況を発信致します。2023年3月の注目情報は以下の通りです。
【欧州】 統一特許裁判所協定(UPCA:Unified Patent Court Agreement)の発効日の決定
2023年2月17日、ドイツによる統一特許裁判所協定(UPCA:Unified Patent Court Agreement)に批准の寄託が完了し、欧州連合(EU)の単一効特許(UP:Unitary Patent)及び統一特許裁判所(UPC:Unified Patent Court)制度が2023年6月1日より開始されることとなりました。
これに伴い、2023年3月1日より、サンライズ期間が開始されます。
サンライズ期間とは、統一特許裁判所協定発効前の3カ月間、UPCの適用除外を求める“オプトアウトの申請”が可能となる期間となります。
2023年6月1日以降、欧州特許(欧州特許庁〔EPO:Eurpean Patent Office〕にて許可され所望の国に有効化した特許)の束に対し統一特許裁判所(UPC)に無効訴訟が提起され、無効判決が確定した場合には有効化した全ての国で欧州特許が無効にされるというリスクがあります。
このようなリスクを避けるべく、欧州特許の出願人及び特許権者が自身の欧州特許及び欧州特許出願についての裁判管轄を統一特許裁判所の裁判管轄下に置くことを希望しない場合には、UPCAの適用除外(オプトアウト)を申請することで、自身の欧州特許の裁判管轄を有効化(validation)した国の裁判所のみとすることが可能となります。
オプトアウトは、欧州特許に加えてEPOに係属中の欧州特許出願に対しても申請が可能となります。なお、オプトアウトの申請の際には、真の出願人/特許権者の名義で行うこと、及び、共有に係る欧州出願/欧州特許につきましては、共有者全員の同意が必要となりますので、ご留意ください。
(批准国)
2023年3月時点におきましてUPCA批准国は17カ国(オーストリア、ベルギー、ブルガリア、ドイツ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、イタリア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、オランダ、ポルトガル、スロベニア、スウェーデン)であり、2023年6月1日にUPCAが発効された際には、これら17ヵ国に対して有効化(Validation)された欧州特許がUPC管轄の対象となります。少し古いデータになりますが、参考までに2019年における批准17ヵ国(青グラフの国)及び現在UPCAに批准していない国(スペイン、ギリシャ)又はEU加盟国ではない国(スイス、イギリス、トルコ)(黄色グラフで示される国)へのValidationの件数を以下に示します。
(EPO Annual reports よりデータ抜粋)
Source:
■ Practical information on the upcoming launch of the Sunrise period:Unified Patent CourtのHP
■ Statistics and trends:EPO
【米国】米国特許商標庁(USPTO)
(1)DOCXによる出願書類の提出について
USPTOにより新規特許出願についてDOCX形式での提出の義務化が発表されております。本制度は、幾度かの延期を重ね、現在2023年4月3日(2023年6月30日に延期されました。)からの開始が予定されております。DOCX形式での義務化が開始された後も、特許出願をPDF形式で提出することは可能ですが、別途USD 400(Small Entities:USD 200、Micro Entities:USD 100)の追加料金が課せられることとなります。
なお、現在の義務対象は米国への直接出願(非仮出願(通常の出願)、継続出願、一部継続出願、分割出願、日本語による直接出願を含む)であり、PCT出願の米国への国内移行、仮出願、意匠出願等については対象とされておりません。
使用可能なフォントなど各情報につきましては以下のSourceをご参照下さい。
Source:
■ File patent application documents in DOCX :USPTO(Q&Aを含む)
■ DOCX supported fonts :USPTO
■ DOCX section headers :USPTO
(2)電子特許付与 (eGrants)の発行について
現在紙で発効されている特許証について、USPTOにより2023年4月18日以降、電子版に置き換わる旨がアナウンスされております。同日以降、所定の猶予期間を経た後、特許証は、紙での発行及び郵送はされず、特許権者等がPatent Center(USPTOの提供する特許情報サイト)から閲覧又は印刷することとなります。また、猶予期間の際には、“ceremonial paper copy”という紙での電子版の特許証のコピーが無料で提供されます。当該ceremonial paper copyは猶予期間の経過後も希望により購入可能とのことです。
USPTOのFAQに掲載されているその他の情報は以下の通りとなります。
・対象(2023年4月18日時点):
全ての特許(意匠、植物特許、再発行特許を含む)
(現時点で、訂正の証明書(Certificates of Correction)及び再審査証明書(reexam certificates)は電子付与の対象に含まれておりません。)
・特許発行料の納付から特許の発効日までの期間の短縮
現状に比べ、特許発行料の納付から特許の発効日までの期間が短縮されることが予測されております。
例えば、継続出願、一部継続出願、分割出願等の継続的出願(Continuing Application)は特許の発効日まで出願を行うことが可能となりますが、特許発効までの期間が短縮されることが予測されることから、USPTOは特許発行料の納付前にこれら継続的出願を行うことを推奨しております。また、特許発行料の納付から特許の発効日までの期間の短縮はIDS(情報開示陳述書)の提出にも影響すると思われますのでご留意ください。
・電子版の特許証のコピーは発行日以降、印刷数の制限なく印刷が可能です。
その他、詳細につきましては、以下のSourceをご参照ください。
Source:
■ eGrants :USPTO
■ eGrants FAQs:USPTO
■ Patent Center:USPTO
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