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GX脱炭素電源化法案の閣議決定について
2023.04.06
GX脱炭素電源化法案の閣議決定について
本年3月1日のブログでは、GX推進法案(※1)の閣議決定について取り上げましたが、GX 関連法案の閣議決定が続き、本年2月28日に、GX脱炭素電源法案(以下「本法律案」といいます。(※2))が閣議決定されております。本法律案の改正の対象とする法令は、電気事業法、再エネ特措法及び原子力関連規制法となっており、広範な法令を対象とするものです。本法律案の目的としては、2050 年カーボンニュートラルの実現に向けて、脱炭素電源の利用促進を図る一方で、電力の安定供給の確保を目的として適切な制度整備を図るものです。
(1)地域と共生した再エネの最大限の導入促進 | |
① | 再エネ導入に資する系統整備のための環境整備(電気事業法及び再エネ特措法) |
② | 既存再エネの最大限活用のための追加投資促進(再エネ特措法) |
③ | 地域と共生した再エネ導入のための事業規律強化(再エネ特措法) |
上記のうち、②及び③については、本年2月の政府の「再生可能エネルギー長期電源化・地域共生ワーキンググループ中間とりまとめ」(※3)を反映したものになります。 | |
(2)安全確保を大前提とした原子力の活用・廃炉の推進 | |
① | 原子力発電の利用に係る原則の明確化(原子力基本法) |
② | 高経年化した原子炉に対する規制の厳格化(炉規法) |
③ | 原子力発電の運転期間に関する規律の整備(電気事業法) |
④ | 円滑かつ着実な廃炉の推進(再処理法) |
(※1)GX推進法案の閣議決定(https://www.meti.go.jp/press/2022/02/20230210004/20230210004.html)
(※2)GX脱炭素電源化法案(https://www.meti.go.jp/press/2022/02/20230228005/20230228005.html)
GX政策を推進する国のGX推進戦略を定めること等を目的とするGX推進法案とは内容は異なるものです。
(※3)中間とりまとめ(https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/kyosei_wg/pdf/20230210_1.pdf)
本稿においては、上記のうちの(1)について採り上げます。
(1) 再エネ導入に資する系統整備のための環境整備(①)
上記①の点については、再エネのさらなる導入拡大に向けて、これまで系統の増強について検討されてきており、再エネの利用促進に資する系統の増強に必要な費用を、再エネ賦課金の一部を原資として一般送配電事業者等に交付する系統設置交付金制度が既に導入されております(再エネ特措法28条)。この点、さらなる電力の安定供給確保の点から、特に重要な送電線の整備計画については、経済産業大臣が認定し、認定を受けた整備計画のうち(改正電気事業法28条の49第1項)、再エネの利用の促進に資するものについて、工事に着手した段階から当該認定を受けた一般送配電事業者等(以下「認定事業者」といいます。)に対して系統交付金を交付することとされております(改正再エネ特措法28条の2第1項)。また、認定を受けた整備計画に係る送電線の整備に向けて、認定事業者が認定事業計画に基づく電気工作物の整備及び更新に必要としている資金をOCCTOが貸し付ける制度も新たに導入されております(改正電気事業法28条の40第1項5の3)。
(2) 既存再エネの最大限活用のための追加投資促進(②)
現在、既存の事業計画認定を受けた再エネ発電設備において、再エネ発電設備の増設等を行った際には、既存の再エネ発電設備に対して適用されていた調達価格を含めて価格が事業計画認定の変更時点の調達価格に変更されることとなっております。既存の調達価格に対して事業計画認定の変更時点の調達価格が適用されることになると既存の再エネ発電設備に対して適用される調達価格が一般的に減額されることが多く、再エネ事業者の追加投資を阻害する一因となっていました。本法律案においては、再エネ発電設備に係る追加投資(更新又は増設)を促進するため、調達価格の適用の特例として、再エネ発電設備の増設等の部分に関しては、既設の部分と区別した新たな買取価格を適用することとされております(改正再エネ特措法10条の2)。なお、本法律案では、上記の特例が適用される再エネ発電設備については明確にされておらず、具体的には省令で規定されることになると思われますが、本法律案を公表する経済産業省のウェブサイトによると、太陽光発電設備を対象としていると考えられます。
(3) 地域と共生した再エネ導入のための事業規律強化(③)
2050 年カーボンニュートラルの実現に向けて、再エネの最大限の導入が求められる一方、安全面、防災面、景観や環境への影響、将来の廃棄等に対する懸念が高まっております。これを踏まえて、総合資源エネルギー調査会省エネルギー・新エネルギー分 科会/電力・ガス事業分科会 再生可能エネルギー大量導入・次世代型電力ネットワーク小委員会(以下「大量導入小委」といいます。)において、事業規律強化を前提に、対応方針が示されてきておりましたが(※4)、本法律案は、これを具体化するものです。この点については、本年3月1日付のブログでも取り上げております(※5)。
(※4)論点整理(https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/pdf/20221007_1.pdf)
(※5)GX推進法案の閣議決定について(https://www.tmi.gr.jp/eyes/blog/2023/14389.html)
このうち、主として以下の点について、改正再エネ特措法において新たに規定されております。
① 地域とのコミュニケーション要件化
この点につき、本法律案においては、出力その他の事項に関する一定の要件に該当する再エネ発電設備について、設置の場所の周辺地域の住民に対する説明会の開催その他の再エネ発電事業の実施に関する事項の内容を周知させるための措置の実施状況に関する事項を事業計画の記載事項とするとともに、当該措置の実施を認定要件としておりますが、具体的な措置の内容については省令で定められることとされております(改正再エネ特措法9条2項7号、同条4項6号)。
② 認定事業者の責任明確化
認定事業者は、認定計画に従って、再エネ事業を実施しなければならず(改正再エネ特措法10条の3第1項)、また、委託先及び再委託先も認定基準や認定計画を遵守するよう、認定事業者に委託先や再委託先に対する監督義務を課すこととすることとされております(改正再エネ特措法10条の3第2項)。
③ 返還命令等
事業者が認定計画に違反していると認められるときは、経済産業大臣は、FIT/FIP交付金相当額(※6)をOCCTOに対して積立金として積み立てることを命ずることができるとされております(改正再エネ特措法15条の6)。また、経済産業大臣は、認定事業者の認定を取り消すときは、認定事業者に対しては、発電した交付金の全部又一部をOCCTOに返還する等請求することができるとされております(改正再エネ特措法15条の11)。この点の詳細な手続については本法律案では定められておらず、具体的には省令で定められることになります。
(※6)FIPの場合には供給促進交付金(プレミアム)の額、FITの場合には調整交付金(再エネ特措法15条の2第2項に規定する調整交付金)の額を基礎として省令で定める方法により算定した額をいいます(改正再エネ特措法15条の7)
その他エネルギー業界の主な動きについて
(1) 発電側課金の導入について 中間とりまとめ(案)に対するパブリックコメント募集(2023年3月8日)
2024年度から導入が予定されている発電側課金(現在小売事業者が全て負担している送配電設備の維持・拡充に必要な費用について、需要家とともに系統利用者である発電事業者に一部の負担を求め、より公平な費用負担とする制度)について、制度設計専門会合等で議論・検討を進めた結果として中間とりまとめ(案)が公表され、パブリックコメントが募集されています。パブリックコメントの期間は、本年3月8日から4月7日までとされております。
(発電側課金の導入について 中間とりまとめ(案)に対する意見公募について)
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=595223017&Mode=0
(2) 事業計画策定ガイドラインの改正案に対するパブリックコメントの実施結果について(2023年4月3日)
再エネ発電事業者の指針となる各電源の事業策定ガイドラインの改正案が、2023年2月21日より2023年3月22日までパブリックコメントに付され、これに対する結果が2023年4月3日に公表されました。
この点、風力発電に関する事業計画策定ガイドラインについては、他の電源の事業計画策定ガイドラインと同様に、認定失効制度に関する記述が盛り込まれたほか、陸上風力発電所の撤去時における地下基礎の取扱いについての事項が新たに規定され、JWPAが公表する「陸上風力発電機の基礎の取扱いに関する解説」も言及されております。
(「事業計画策定ガイドライン改正案」に対する意見公募の実施結果について)
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCM1040&id=620223011&Mode=1
(陸上風力発電機の基礎の取扱いに関する解説)
https://jwpa.jp/information/6835/
(3) 廃棄等費用積立ガイドライン改定案に対する意見公募(2023年2月28日)
廃棄等費用積立ガイドラインについて、廃棄等費用の積立制度に関する規定の趣旨を更に具体化等するため改定が検討されております。2024年度の解体等積立基準額が明記されたほか、電気事業法改正に伴う調整、認定事業者が上場会社である場合の証明資料に「有価証券報告書」が追加されるなどの改定がなされております。かかる廃棄等費用積立ガイドラインの改定案について、本年2月28日から3月29日までパブリックコメントに付されておりました。
(廃棄等費用積立ガイドライン改定案に対する意見公募について)
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCM1040&id=620222009&Mode=1
(4) 安定的なエネルギー需給構造の確立を図るためのエネルギーの使用の合理化等に関する法律等の一部を改正する法律に関連する意見募集の結果について(2023年3月28日)
「安定的なエネルギー需給構造の確立を図るためのエネルギー使用の合理化等に関する法律等の一部を改正する法律」に関連し、本年2月6日から3月7日にかけて、パブリックコメントに付されておりましたが、パブリックコメントの結果が3月28日に公表されています。電気事業法に関連して、スタンドアローンの大型蓄電設備については、特段の規制は置かれておりませんでしたが、蓄電設備を「蓄電所」と定義して規制を及ぼすこととし、また「発電事業」の定義に10MW以上の大型蓄電池等を含めることとしております。
(安定的なエネルギー需給構造の確立を図るためのエネルギーの使用の合理化等に関する法律等の一部を改正する法律の施行に伴う関係省令・告示の整備等に関する省令案・告示案に対する意見募集の結果について)
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCM1040&id=620123005&Mode=1
(5) 「電力の小売営業に関する指針(改定案)」に対する意見募集の結果について(2023年3月31日)
令和4年5月に安定的エネルギー使用合理化法の改正法が成立し、電気事業法上、蓄電用の電気工作物を用いて小売電気事業等の用に供するための電気を放電する事業が発電事業に位置付けられ、2023年4月1日に改正法が施行されることに伴って指針が改定されており、これに基づき指針について本年2月28日から3月29日までの期間、パブリックコメントに付されておりました。
小売電気事業者による需要家の帰責事由によらない小売供給契約を解除等する場合の手順等を明記するなどの改定も行われていますが、当該パブリックコメント募集の結果が、本年3月31日に公表されております。
(「電力の小売営業に関する指針(改定案)」に対する意見募集の結果について)
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCM1040&id=620223014&Mode=1
以上
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