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特許ブログ【海外情報】各国特許最新レポート
2023.07.06
特許に関し各国の注目すべき最新状況を発信致します。2023年7月の注目情報は以下の通りです。
【欧州】欧州 単一効特許制度および統一特許裁判所協定の始動
長くその始動が待たれていた欧州連合(EU)の単一効特許(UP:Unitary Patent)及び統一特許裁判所(UPC:Unified Patent Court)制度が2023年6月1日より始動致しました。
現在のUPCA批准国は17カ国(オーストリア、ベルギー、ブルガリア、ドイツ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、イタリア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、オランダ、ポルトガル、スロベニア、スウェーデン)となります。
UPCのHPで確認したところ、一週間経過後の2023年6月7日時点で、既に、Infringement Action(侵害訴訟:6件)及びRevocation Action(無効訴訟:7件)が確認されました。無効訴訟の請求にはAmgenのPCSK9に関する特許も含まれております。また、無効訴訟の請求7件のうち4件は、Infringement Actionが請求されている件となります。
また、現時点2023年7月5時点では、Infringement Action(侵害訴訟:13件)、Revocation Action(無効訴訟:3件)と侵害訴訟の数は増えておりましたが、サーチ結果上は無効訴訟の数が減っております。
制度が開始されて1か月ほどですが、本制度の注目度がうかがえる結果となっております。
- Infringement Action(6件)
EP3375337(Franz Kaldewei GmbH & Co. KG)、EP4108782(HARVARD COLLEGE)、EP1612910(Broadcom Corporation)、EP4101791(Ocado Inovation Limited)、EP3795501(Ocado Inovation Limited)等 - Revocation Action(7件)
EP3666797(AMGEN INC)、EP3375337(Franz Kaldewei GmbH & Co. KG)、EP4108782(HARVARD COLLEGE)、EP1612910(Broadcom Corporation)、EP4101791(Ocado Inovation Limited)、EP3056563, EP3056564(共に、HEALIOS K.K., RIKEN, Osaka Uniersity)
Source:
■ Cases search : UPCのWEB PAGE
【米国】米国、米国特許商標庁(USPTO)
(1)実施可能要件(enablement)に関する米国最高裁判所判決 (Amgen v. Sanofi)
5月18日付で、以前より注目されていた実施可能要件(enablement)に関する事件(Amgen v. Sanofi)に対し、米国最高裁判所が連邦巡回区高等裁判所(CAFC)の判決を支持する判決を下しました。本事件は、広く機能的な表現で記載されたクレームに対する実施可能要件に関するものとなります。また、本件は最高裁判事の全会一致での判決となります。
判決の要旨は以下となりますが、本事件の判断の影響がどのような範囲にまで及ぶことになるかが注目されております。
【背景】
・ Amgen(原告)は高コレステロール血症治療薬「レパーサ(REPATHA)」に関する自らの特許(US 8829165,US8859741)でSanofi他数社(被告)に対し特許侵害を提起
・ 被告により実施可能要件(米国特許法112条(a))違反に基づく特許無効の主張
・ CAFCが、クレームの全範囲を実施可能とするような明細書中の示唆はなく、クレームの全範囲を実施するためには「不当な実験」(undue experimentation)が要求されるため実施可能要件を満足しないと判断
・ Amgen(原告)が最高裁判所に控訴
【最高裁判所の判断】
■ 判断した事項:
実施可能要件を満たしているか否かの判断に際し、不当な実験を行うことなく、当業者がクレームの“全範囲”について実施できるように明細書は記載されているべきか否か。
■ 最高裁の判断:
CAFCの判断は正しく、プロセス(processes)、機械(machines)、生産物(manufactures)、組成物(compositions of matter)の全てのクラスについて特許を請求していた場合、特許明細書は全てのクラスについて当業者が発明を製造及び使用できるように記載されていなければならない。換言すると、明細書はクレーム中で定義された発明の全範囲について実施可能なように記載されていることが必要である。
但し、明細書はクレームされた全てのクラス内の実施形態において詳細に説明をすることが常に求められているのではなく、特定の目的に対する特有の適合性(a peculiar fitness for the particular purpose)を与える何らかの一般的な性質(general quality)を開示することで当業者がクレームされた発明を製造又は使用でき実施可能性要件を満たすこともありうる。
(2)DOCXによる出願書類の提出について
USPTOにより新規特許出願についてDOCX形式での提出の義務化が発表されております。本制度は、幾度かの延期を重ねており、2023年4月3日⇒6月30日と開始が予定されておりましたが、更に延長され、2024年1月17日に開始予定となっております。
また、DOCX形式での提出義務化の開始日の延期に伴い、現在DOCX形式で提出する際にバックアップとしてPDFも同時に提出できる運用の延期が発表されております。
DOCX形式にて使用可能なフォントなど各情報につきましては以下のSourceをご参照下さい。
Source:
■ DOCX義務化延長に対するFEDERAL REGISTER : NATIONAL ARCHIVES
■ File patent application documents in DOCX :USPTO(Q&Aを含む)
■ DOCX supported fonts :USPTO
■ DOCX section headers :USPTO
韓国特許庁(KIPO)料金改定について
KIPOより特許審査請求料、特許登録料、商標、権利移転登録料等に対する料金の改訂案(立法予告)が発表されております。施行日は2023年8月1日となる予定です。今回の改訂では、特許分割出願に対する加算量が導入されている点でも注目となります。
主な変更対象は以下となります。
■ 特許審査請求料:基本審査請求料、請求項加算額ともに16%の値上げ
■ 特許登録料:存続期間の全期間に対し10%の値下げ
■ 特許分割出願に対する加算料の導入:二回目以降の分割出願に対し追加費用を求める新制度が導入されております。本制度によりますと、2回目の分割出願の出願料が1回目の分割出願の2倍、3回目の分割出願の出願料が1回目の分割出願の3倍となります(5回以上の分割出願費用は1回目の分割出願の5倍で据え置きとなります)。
分割出願に対する新制度の適用は、2023年8月1日以降に出願される分割出願が対象となります。
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