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再エネ特措法上の認定手続にあたっての規制強化について
2023.08.10
概要
2023年7月21日に再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法施行規則(以下「再エネ特措法施行規則」といいます。)の一部改正に関する省令案等(以下「本省令案等」といいます。)に関するパブリックコメントが開始されており、改正案の概要が公表されております(※1)。当該パブリックコメントは、2023年8月20日まで募集されております。
本省令案等は、以下に記載する再エネ特措法上のFIT/FIP認定手続にあたっての一定の許認可取得を条件とする等の規制強化を図るものです。これまで地域共生に向けた制度的検討について、総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会/電力・ガス事業分科会 再生可能エネルギー大量導入・次世代型電力ネットワーク小委員会 再生可能エネルギー長期電源化・地域共生ワーキンググループ(以下「長期電源化・地域共生WG」といいます。)において、中間とりまとめが行われ(※2)、事業規律強化を前提に議論が進められてきておりましたが、これが具体化されたものです。
(※1)https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=620123019&Mode=0
(※2)中間とりまとめ(https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/kyosei_wg/pdf/20230210_1.pdf)
具体的な改正の内容
この点、再エネ特措法施行規則4条の2においてFIT/FIP認定手続にあたって必要な添付書類が掲げられておりますが、当該認定手続にあたって必要な添付書類として、以下①から③までの書類を必要な書類として追加するものとしています。以下①から③までの許認可については、災害の危険性に直接影響を及ぼし得るような土地開発に関わるため、一度許認可対象の行為が行われた場合は原状回復が著しく困難であるため、FIT/FIP認定の申請要件とするものとされております。
① 森林法における林地開発許可
② 宅地造成及び特定盛土等規制法の許可
③ 砂防三法(砂防法・地すべり等防止法・急傾斜地法)における許可
但し、上記には例外規定が設けられており、風力発電又は地熱発電については、法アセス又は条例アセスの対象である場合には、認定から3年以内に当該許可等の処分を取得することを条件とした条件付認定を行うこととされており、認定から3年以内に当該許可等の処分を取得できなかった場合は、認定を取り消すものとされています。
経過措置
但し、既存案件に対する配慮のため、本省令等に基づく改正の施行日前に、以下に基づく事項が行われていた場合には、本省令案等に基づく改正は適用されないこととする経過措置が設けられています(※3)。
① 入札案件に該当しない場合で、認定申請が行われた場合
② 入札案件の場合に、落札に係る案件に関する事業計画の提出期限が到来する場合
③ 洋上風力の入札案件に関して、選定事業者が提出した事業計画であって、公募占用計画の提出期限が到来する場合
(※3)具体的な2023年度の入札実施スケジュール等については、以下の第6回長期電源化・地域共生WGの「資料1 再エネの長期電源化及び地域共生に向けた制度的検討P11に示されています。https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/kyosei_wg/pdf/006_01_00.pdf
本省令案等の施行日
この点、長期電源化・地域共生WGにおいては、事業者や自治体への影響を踏まえて、一定の周知期間を設けつつ、速やかに施行するとされ、2023年夏に省令等を改正し、一定の周知期間を置いて、秋頃に施行することが検討されておりましたが、本省令案等では2023年10月1日に施行するものとされております。
その他エネルギー業界の主な動きについて
(1)モビリティ水素官民協議会の中間とりまとめの公表(2023年7月11日)
令和5年6月6日に水素基本戦略が改定されており、その中で、自動車をはじめとするモビリティ分野における水素需要拡大に向けた取り組みも期待されております。一方で、燃料電池自動車の需要の見通し、燃料電池自動車と水素ステーションの普及台数見通し、燃料電池自動車の普及台数見通しが不明であり、投資計画が立てられないといった三すくみ状態となっております。かかる事態の打破に向けて、各団体が一定の前提の元に将来の見通しと普及に向けた課題を共有すべく中間とりまとめが公表されており、政府目標達成に向けた車両の開発・供給見通しの試算、水素供給コストの見通しの試算などが記載されています。
(モビリティ分野における⽔素の普及に向けた中間とりまとめ)
https://www.meti.go.jp/press/2023/07/20230711001/20230711001.html
(2)総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会 制度検討作業部会 第十二次中間とりまとめ(2023年7月11日)
総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会 制度検討作業部会において、 5 つの市場(ベースロード市場、間接オークション・間接送電権市場、容量市場、需給調整市場、非化石価値取引市場)等の詳細制度設計の検討を目的として検討がなされてきました。第十二次中間とりまとめでは、ベースロード市場について、長期商品のあり方、燃料価格の変動リスクへの対応方法、長期相対契約や内外無差別な卸売との関係について、委員会での議論の内容が取りまとめられています。
(電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会 制度検討作業部会 第十二次中間とりまとめ)https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/seido_kento/20230711_report.html
(3)宮城県 再生可能エネルギー地域共生促進税条例の公布(2023年7月11日)
当該条例は、0.5haを超える森林を開発し、再エネ設備を設置した場合、その発電出力に応じて、設備の所有者に課税する条例になります。一方で、地域との共生が図られていると認められる場合(温対法の促進事業計画に基づく場合・農山漁村再生可能エネルギー法の設備整備計画に基づく場合及びこれらに準ずるものとして市町村長が認め、知事が認定した事業計画に基づく場合)は、非課税とされ、また条例の施行日前に工事を開始した場合についても適用除外が設けられております。宮城県は2024年4月1日を予定として本条例の施行を目指していますが、当該条例の施行には、総務大臣の同意が事前に取得されることが必要となります。
(宮城県条例第三十四号 再生可能エネルギー地域共生促進税条例)
https://www.pref.miyagi.jp/documents/47230/02jourei.pdf
(4)「脱炭素成長型経済構造移行推進戦略」の閣議決定(2023年7月28日)
「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律」(GX推進法)が2023年5月12日に成立し、同年6月30日に施行されております。GX推進法に基づいて、今後10年間で150兆円を超える官民のGX投資を行うものとされておりますが、今般GX推進法に基づき整備される「脱炭素成長型経済構造移行推進戦略」が閣議決定され、その中でGX 経済移行債等を活用した先行投資支援や新たな金融手法の活用等が言及されております。
(「脱炭素成長型経済構造移行推進戦略」が閣議決定されました)
https://www.meti.go.jp/press/2023/07/20230728002/20230728002.html
(5)再エネ特措法施行規則の一部を改正する省令案に対するパブリックコメントの募集(2023年7月31日)
10kW以上の事業用太陽光発電設備を対象とした廃棄等費用積立制度が2022年7月から開始している中、FIT/FIP制度上、①認定出力の「10kW以上」から「10kW未満」への減少や、②認定出力の「10kW未満」から「10kW以上」への増加が生じた場合における適正な廃棄等費用を確保するための運用の明確化等を図るための改正につき、2023年7月31日パブリックコメントに付され、2023年8月29日まで意見が募集されております。
(再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令案に対する意見公募)
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=620123020&Mode=0
以上
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