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【中国】速報:専利法実施細則改正内容の公表
2023.12.25
実施細則改正の概要
中国国務院は、2023年12月21日、専利法実施細則の改正条文を公表しました。
本改正は、2021年6月1日から施行されている第4回改正専利法に対応したものであり、2020年11月の実施細則改正案の公表とパブリックコメント募集以降、長期に渡り、正式な改正内容の公表が待たれていたものです。
改正にあたっては、「改正後の専利法及び実施細則の施行に関連する審査業務処理に関する過渡弁法」も公表され、改正実施細則の施行日が2024年1月20日になること、また、実施細則の条文ごとの適用開始時期や適用対象出願が明らかにされました。
更に、2023年12月21日夜には、中国国家知的財産局(CNIPA)により、審査指南の改正内容も公表されました。
本文では、まず、実施細則の主な改正事項をご紹介します。
手続き関連の改正
(1)電子出願での15日の書類送達期間廃止
・電子出願システム経由で発送された庁書類の送達日については、15日間の猶予期間を加算しない。紙出願に対し郵送により発送された庁書類の送達日については、引き続き15日間の猶予期間を加算する(第4条)。
・この規定は2024年1月20日以降に発行される庁通知に適用される(過渡弁法第7条)。
(2)優先権期限徒過等の救済規定
・国内優先権及びパリ優先権主張出願について、正当な理由がある場合、優先日から14か月以内であれば優先権回復の請求が可能(第36条)。
・国内優先権又はパリ優先権を主張した出願について、優先日から16カ月以内又は出願日から4カ月以内であれば、優先権主張の追加・補正が可能(第37条)。
・国内優先権又はパリ優先権を主張した出願書類の一部に誤り又は漏れがあった場合、出願日から2か月以内又は国家知的財産局(CNIPA)の指定期限内に、優先権基礎出願を援用する方式での補正ができる。補正書書類が規定の要件を満たす場合、優先権基礎出願の出願日を出願日とする(第45条)。
・2024年1月20日以降、出願人は改正後の上記第36条、第37条、第45条の規定に従って、優先権回復の請求、優先権の追加・修正、及び優先権基礎出願の援用による補正が可能である(過渡弁法第3条、第4条)。
・PCT出願について、優先日から14カ月以内に国際出願し、受理局が優先権回復を認めた場合、中国においても権利回復請求を請求したものとみなされる。国際段階で優先権回復を請求しなかった、或いは請求が認められなかった場合であっても、正当な理由がある場合、国内段階移行後2カ月以内に権利回復の請求が可能(第128条)。
(3)新規性喪失の例外適用要件の緩和
・新規性喪失の例外事由のうち、学術会議又は技術会議における発表については、従来、これまで中国国内における学術会議又は技術会議における発表しか認められていなかったが、国家知的財産局が認可する国際組織が開催する学術会議又は技術会議での発表についても、例外適用の申請が可能となった(第33条)。
・所定の国際展示会、学術会議又は技術会議での発表に基づいて新規性喪失の例外を申請する際に必要な証明書類の要件から、「国際展示会、学術会議又は技術会議の関係機関が発行した」証明書類との要件が削除された(第33条)。
(4)外国出願人が自ら可能な手続き
・外国出願人・権利者は、中国代理人を通さず、自身で、優先権証明書の提出、費用納付、その他規定の手続きを行うことができる(第18条)。
・この規定は2024年1月20日以降に行われる手続きに適用される(過渡弁法第2条)。
拒絶査定不服審判に関する改正
(1)審判請求期限徒過の救済
・復審請求期限を徒過した場合、請求期限から2か月以内に知的財産局に権利回復の請求をすることができる(第6条)。
(2)不服審判における職権審理
・復審委員会は、拒絶査定の理由以外の理由についても職権で審査し、復審意見通知書にて出願人に通知することができる(第67条)。
実用新案・意匠関連の改正
(1)部分意匠出願関連
・部分意匠出願の際には、物品全体の図面を提出し、波線と実線の組み合わせ又はその他の方式を用いて保護を求める部分を表示しなければならない(第30条)。
・物品全体の図面において波線と実線の組み合わせを用いて保護を求める部分を表示した場合を除き、意匠の簡単な説明において、保護を求める部分を明記しなければならない(第31条)。
・改正後の上記第30条、第31条の規定は、2021年6月1日以降に出願された部分意匠出願の審査に適用される(過渡弁法第10条)。
(2)意匠の国内優先権主張関連
・意匠出願において、意匠出願に基づく国内優先権主張の他に、特許又は実用新案出願の図面に示された意匠に基づく国内優先権主張も可能である。この場合、優先権主張の基礎となる特許又は実用新案出願は取下げ擬制されない(第35条)。
・改正後の上記第35条の規定は、2021年6月1日以降に出願された意匠出願に適用される(過渡弁法第12条)。
(3)実用新案・意匠の初歩審査で進歩性を審査
・実用新案の初歩審査において、明らかに進歩性を有していないかどうか、意匠の初歩審査において、明らかに創作非容易性を有していないかが審査されることになった(第50条)。
・改正後の上記第50条の規定は、2024年1月20日以降の審査に適用される(過渡弁法第9条第2項)。
(4)被疑侵害者が評価書請求可能に
・被疑侵害者が実用新案・意匠の評価書請求が可能であることが明記された(第62条)。
・出願人は、実用新案・意匠権の設定登録手続き時に評価書請求をすることができる。
特許権存続期間延長制度の詳細
(1)特許期間調整(PTA)制度
・権利者は特許権の設定登録の公告日から3カ月以内に特許期間調整の申請が可能(第77条)。
・出願日から4年又は審査請求日から3年のいずれか遅い方までに特許の設定登録がなされなかった場合、審査の遅延期間について特許権の存続期間を延長する。ただし、特実同日出願制度を利用した特許出願については、特許期間調整の申請はできない(第78条)。
・審査の遅延期間のうち、出願人の責めに帰する理由により審査が遅延した期間(例えば、出願人が指定された応答期間内に応答しなかった場合、遅延審査を請求した場合、細則第45条の優先権基礎出願に基づく補正をした場合等)を控除した日数を、存続期間の延長日数とする(第79条)。
・改正後の上記第77~79条の規定は、2021年6月1日以降に登録公告された特許権のであって、権利者が公告日から3ヵ月以内に行った特許期間調整の申請の、2024年1月20日以降の審査に適用される(過渡弁法第13条第1項)。
・特許期間調整のオフィシャルフィーは、関連の費用が公表された後で、国家知的財産局(CNIPA)が指定する期間内に納付することができる(過渡弁法第13条第4項)。
(2)薬品特許の存続期間延長制度
・存続期間延長の対象となる新薬関連特許とは、所定の規定を満たす新薬の製品特許、製造方法特許、及び医薬用途特許を指す(第80条)。
・1つの新薬に対して複数の特許権が存在する場合、そのうちの1件の特許に対してのみ存続期間延長の申請が可能。逆に、1件の特許権が複数の新薬に関連する場合、そのうちの1つの新薬に関してのみ存続期間延長申請が可能。1件の特許権に対しては、1回のみ薬品特許に関する存続期間延長を受けることができる(第81条)。
・存続期間の延長日数は、特許の出願日から中国での新薬の販売許可の日までの期間から、5年を減算した期間とする(第82条)。
・延長期間における特許権の保護範囲は、当該新薬及びそれが許可を受けた適応症に関連する技術に限られる(第83条)。
・改正後の上記第80~83条の規定は、2021年6月1日以降であって、中国での新薬の販売許可の日から3ヵ月以内に提出された薬品特許の存続期間延長申請の、2024年1月20日以降の審査に適用される(過渡弁法第13条第2項)。
・薬品特許の存続期間延長のオフィシャルフィーは、関連の費用が公表された後で、国家知的財産局(CNIPA)が指定する期間内に納付することができる(過渡弁法第13条第4項)。
職務発明関連に関する改正
(1)奨励金及び報酬に関する規定
・職務発明により特許権を受けた機関(企業等)が、株式等の形態で発明者又は設計者に利益を分配することを奨励する旨が追記された(第92条)。
・特許登録時の奨励金の最低金額が3000元から4000元に、実用新案・意匠登録時の奨励金の最低金額が1000元から1500元に引き上げられた(第93条)。
・発明等の実施時の報酬について当事者間の約定がない場合、「中華人民共和国科学技術成果活用促進法」の規定に従って、発明者等に合理的な報酬を与えるべきことが規定された。約定がない場合は、発明・実用新案の実施による営業利益の2%以上、意匠の実施による営業利益の0.2%以上、又は、実施許諾料の10%以上を発明者等への報酬としなければならない、との規定は削除された(第94条)。
解放式許諾制度に関する改正
(1)解放式許諾制度の詳細
・解放式許諾制度の申請方法が明記されたが、使用料の決定方法等に関する規定はされなかった(第85条)。
・独占的実施権設定、年金未納、質権設定等のある特許権に対しては開放式許諾の宣言ができない(第86条)。
・解放式許諾契約については、権利者又は被許諾者が、証明書類を付して国家知的財産局(CNIPA)に届出をする義務があることが明記されたが、届出がないことに対する罰則規定は設けられなかった(第87条)。
・解放式許諾期間中、権利者は年金の減免を受けられるが、減免率に関する規定はされなかった(第88条)。
非正常出願対策に関する改正
(1)虚偽・欺瞞行為の禁止
・出願は誠実信用の原則を遵守すべきであり、専利出願はいずれも真の発明・創造活動に基づくべきであって、虚偽又は欺瞞があってはならないことが明記された(第11条)。
・解放式許諾について、虚偽の申請等により年金の減免を受けてはいけないことが明記された(第88条)。
(2)罰則規定
・上記2つの虚偽・欺瞞行為があった場合、地方当局からの警告がなされ、10万元以下の罰金を科せられることが明記された(第100条)。
行政ルートによる紛争解決に関する改正
・国家知的財産局(CNIPA)が裁定をすることができる、全国的に重大な影響を与える専利侵害紛争の条件が明確にされた(第96条)。
国際意匠出願関連の改正
・ハーグ協定に基づく国際意匠出願に関する規定が設けられた(第136~144条)。
・改正後の上記第136~144条の規定は、2022年5月5日以降の国際意匠出願に適用される(過渡弁法第16条)。
まとめ
今回の改正内容は、2011年10月に公表された改正案から大幅な変更は少なく、おおむね予想された範囲内の改正に留まりました。
同日に国家知的財産局(CNIPA)から公表された改正審査基準(全613頁)には、上記の新規定について、更に詳細な運用が規定されています。こちらについても内容を確認次第、順次、皆様にご報告させて頂きます。
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