ブログ
宇宙ブログ始めます。
2020.11.04
弊所30周年にウェブサイトが刷新されたことをきっかけに、今月から宇宙ブログを始めます。案件の具体的な内容は守秘義務上お話しできないのですが、国内外の法的なニュースや弊所の公的な活動などを可能な範囲で発信できたらと思っています。法律の細かな議論に入ることも時にはあるかもしれませんが、出来る限り前提知識のない方々が読まれても面白い読みものにしたいと思っておりますので、どうぞ宜しくお願いします。初回は、TMI宇宙チームが検討している法制について簡単なご紹介したいと思いますが、まずは何といってもやはりアルテミスアコード(Artemis Accords)と13年ぶりの日本人宇宙飛行士募集のことを書かないわけにはいきません!!
アルテミスアコード
アルテミスアコードとは、米国の呼びかけで、日本の他カナダ、英国、イタリア、オーストラリア、ルクセンブルク、アラブ首長国連邦の8か国が今年10月に署名した、月探査に関する法的拘束力のない政治的な宣言のことです。既に日本は昨年10月、2024年までに米国の宇宙飛行士を月の南極に着陸させることを目標としたアルテミス計画に参加することを発表していますが、今回のアルテミスアコードへの署名に加えて、来年秋頃をめどに新たな宇宙飛行士を募集することが文科省により発表されました。2008年以来実に13年ぶりとなります。いよいよ日本人が月面や月周回有人拠点(Gateway)に立つ日が来るかもしれないのです(但しまだ確定ではありません)!!
歴史的瞬間を目にする日を、私は今からとても楽しみにしています。
このニュースに関連して、TMIでは宇宙交通管理(STM)と宇宙状況把握体制(SSA)に関する政策形成にも関与しています。宇宙ごみを減らし、宇宙ではどのような国際ルールで宇宙物体の運用を管理していくのか、そして日本の宇宙開発においてはこの論点においてどのようなメッセージを世界に発信していくのか。メガコンステレーションと言って、何百何千という小型衛星を打上げて相互に連携させることで宇宙インターネットの構築を進めている米国企業のニュース等をお耳にしたことがあるかもしれませんが、このような急激な宇宙物体数の増加により、宇宙においても交通ルールが必要で、宇宙ゴミを増やさない対策が大切になっています。
空中発射?
更に、新しい輸送形態に伴った様々な法的課題も検討しており、文科省宇宙開発利用部会における検討会の委員として、2040年までを見据えたロードマップを検討する機会も頂いています。既に実務レベルでは、現在日本国内に宇宙港として始動することを宣言している地方があり、新しい輸送システムが2020年代前半には始動しようとしています。
この中で一つの新しい輸送形態を挙げると、「空中発射」というものがあります。空中発射とは、母機のお腹につけられたロケットを上空で点火し、宇宙空間に向けて発射するものです。詳細なご説明は措きますが、この方法、実現するととてもメリットがある方法なのです(余談ですが、宇宙航空に関係する議論は、素朴に興味をかき立てられる技術的、理論的な背景が盛りだくさんです。このブログでもご紹介していけたらと思います!)。
日本における空中発射の法的課題を検討するにあたっては、まさに「航空」と「宇宙」、そして「日本」と「外国」の管轄をどう分けていくか、まだ誰も考えたことのない議論及び関係各所の調整が行われています。ここで先例として参考になるのは、米国の打上げ会社を積極的に誘致したニュージーランドと英国の例なのですが、この両国と日本の国内法には違いがあり、議論に面白さが増しています。
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長くなりましたが、日々宇宙航空、そしてロボティクスやAIというDeep Tech分野で世界を大きく変えようとされているクライアントの皆様に伴走しながら、日々の紛争や契約交渉のみならず、新しい法制整備というところで下支えをするのが私たちの仕事です。クライアントの皆様が大きく羽ばたかれるよう、少しでもお力になれればと思っております。
双方向とまではいきませんが、ご意見、ご感想などありましたらいつでもご連絡ください。できる限り採り上げていきたいと思っています。
どうぞ宜しくお願い致します。
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PROFILE
弁護士 新谷美保子