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【改正公益通報者保護法ブログ】第2回 改正公益通報者保護法を踏まえた内部通報制度構築の留意点(概論)
2021.02.01
事業者の体制整備義務について
常時使用する労働者が301人以上の事業者が整備すべき体制その他の必要な措置の内容については、改正法の施行までに策定される指針により具体化される予定である(改正法11条4項)。当該指針の内容は、現在消費者庁に設置された検討会において検討されており、本年春頃には結論が出される予定である。
また、詳細については、検討会の結果を待つこととなるが、必要とされる措置の内容としては、以下のものが予定されている(注1)。
- 公益通報の対応体制
- 公益通報対応を機能させる体制
- 公益通報対応業務従事者
- 秘密漏えいを防止する体制
そこで、内部通報制度を有していない事業者においては、本改正の趣旨に沿った内部通報制度を構築する必要があることはもちろんであるが、既に内部通報制度を有している事業者も、自社の内部通報制度が改正法、今後制定される指針及びガイドラインの内容に沿った制度となっているかを確認するとともに、公益通報業務従事者を指定するなど必要な対応を今後行っていく必要がある(注2)。
(注1)改正法Q&A・Q2-1
(注2)公益通報対応業務従事者の指定の方法としては、個別に担当者を指定することの他、内部規程において一定のポストに従事する者を定める方法が挙げられている(改正法Q&A・Q2-1)。また、公益通報対応業務従事者として定めるべき者として、法令違反行為が発生しやすい現場をもつ部門とは一線を画すコンプライアンス部門に属する者、外部窓口の担当者(弁護士等)が想定される(中野真ほか「公益通報者保護法の一部を改正する法律の概要」NBL1177号11頁(2020年))。
公益通報業務従事者の秘密保持義務について
改正法の下では、公益通報業務従事者に指定された者は、秘密保持義務を負っており、「正当な理由がなく、その公益通報対応業務に関して知り得た事項であって公益通報者を特定させるものを漏らしてはならない」(改正法12条)こととなる。
そして、ここでいう「公益通報者を特定させるもの」とは、当該事項を知った者(その者を通じて知った者を含む。) において、公益通報をした人物が誰であるかを認識することのできる事項を意味する(注3)。そのため、事業者が、公益通報を受け付けると、他の担当者、所属部署等の関係者に当該公益通報の情報共有をするという運用をしている場合、かかる情報共有は、「正当な理由」が認められない限り、第三者に「その公益通報対応業務に関して知り得た事項であって公益通報者を特定させるもの」を「漏らす」ことに該当する恐れが生じ得るため、社内での情報共有の仕方につき運用を再検討する必要がある。
また、実際に公益通報対応業務を行う際には、具体的にどのような情報が「公益通報者を特定させるもの」に該当するか、どのような場合に「正当な理由」が認められるかといった判断が困難な事案が生じることも想定される。必要に応じて改正法に精通する弁護士に対応を相談するほか、今後、逐条解説や消費者庁のHPにおけるQ&Aにおいて解釈の明確化がなされる(注4)のを待つこととなる。
さらに、事業者としては、これらの情報に基づき公益通報業務従事者への研修・教育を行い、秘密保持義務違反が生じないよう体制を整備・構築しておくことも重要となる。
(注3)中野ほか・前掲(注2)「公益通報者保護法の一部を改正する法律の概要」12頁
(注4)2020年5月19日付衆議院・消費者問題に関する特別委員会における坂田進消費者庁審議官の答弁
まとめ
以上のとおり、各事業者は、今後、改正法の趣旨に沿って、体制を整備するとともに、公益通報業務従事者の教育・研修を行っていくことが必要となる。
第3回以降では、消費者庁における検討会での議論の状況や消費者庁が公表する指針・ガイドラインに基づいて最新の情報をアップデートしていく予定である。
最新の情報に基づいた社内勉強会の開催や改正法に基づいた社内規程の改定など、改正法への対応にあたってのご要望があれば、執筆者までメールにてご連絡頂ければ幸いである。
以上