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【ヘルスケア】薬局外からのオンライン服薬指導の解禁(パブコメ)【最新法令ニュース】
2022.08.10
概要
現在、薬局外からのオンライン服薬指導を解禁する薬機法施行規則改正案、及び施行通知改正案のパブコメ手続が行われています(※意見募集期間は8月12日まで)。
【施行規則改正案のパブコメ】
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495220095&Mode=0
【施行通知改正案のパブコメ】
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495220096&Mode=0
下記ブログでも解説したとおり、近時においてオンライン服薬指導に係る規制緩和が進められていますが、医師のオンライン診療を行う場所については医療機関外とすることも認められている一方で、現行薬機法下では、薬剤師がオンライン服薬指導を行う場所については原則として調剤薬局内とされています(薬機法9条の4第1項、同法施行規則15条の13第1項1号、第2項)。
今回の改正案は、当該規定を改正して一定の条件下で薬局外でのオンライン服薬指導を認めようとするものであり、調剤薬局のほか、とりわけオンライン服薬指導システム(ソフトウェア/アプリケーション)の提供事業者に影響がある改正(案)であろうと思います。
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改正(案)のポイント
(1) 施行通知(案)
特に注目されるべきは、いかなる条件下において薬局外からのオンライン服薬指導が認められるか否かですが、施行通知改正(案)に示された要点を①~⑥にまとめました。
【「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則の一部を改正する省令の施行について(オンライン服薬指導関係)」の一部を改正する案について(概要)】
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000238250
【施行通知改正(案)における薬局外でのオンライン服薬指導の条件】
① 対面による服薬指導と同程度に患者のプライバシーへの配慮がなされること ② オンライン服薬指導開後に、患者が対面服薬指導を求めた場合、オンライン服薬指導を行った薬剤師又は他の薬剤師によって当該求めに対応可能であること ③ 騒音により音声が聞き取れない等の事情によって、オンライン服薬指導を行う薬剤師による適切な判断が困難となるおそれがある場所でないこと ④ オンライン服薬指導を行う薬局に所属する者以外の第三者が容易に立ち入ることができない空間その他当該情報が当該第三者に認知されない措置が講じられている場所であること ⑤ オンライン服薬指導を行う薬剤師は、調剤が行われる薬局に所属し労務を提供している薬剤師とすること ⑥ 当該薬剤師が服薬指導を行うために必要な情報を得られるよう、対象患者の調剤録の内容の共有を可能とする措置その他必要な措置を講じること |
(2) 場所的条件
基本的にはオンライン診療指針が示す医師がオンライン診療を行う場所(同指針20頁~21頁)を踏襲した内容であるように思いますが、場所としては、第三者が入室できない室内(騒音がない場所)であり(①、③、④)、かつ、患者の調剤録にアクセスできるシステム及び通信環境が整っていれば(⑥)、問題はなさそうです。
基本的には薬剤師の自宅が想定されているように思いますが、オンライン服薬指導用の一室を設けることもあり得ると思います。この点、他への音声漏れ等の配慮を徹底すれば、いわゆるテレアポセンターのように複数の薬剤師が所在するオンライン服薬指導用の部屋を用意することもあり得なくはないかもしれませんが、オンライン服薬指導を行う薬剤師は調剤薬局に所属している薬剤師である必要があることから(下記⑶参照)、このような薬剤師の配置体制を構築することは現実的ではないかもしれません。
(3) 人的条件
また、⑤の要件との関係で、調剤薬局に所属して労務提供を行う薬剤師であることが必要であるため、オンライン服薬指導のみを外注(業務委託)するような薬剤師の配置体制はNGということになりそうです。
※なお、現行薬機法施行規則上も、服薬指導は「その薬局において薬剤の販売又は授与に従事する薬剤師に行わせなければならない」(施行規則15条の13第1項等)とされているため、オンライン服薬指導のみを行う薬剤師をアルバイト雇用する、ということは認められていません。
(4) 対面への切替え
また、患者からの求めがあった場合に対面服薬指導に切り替える体制が求められること(④)については、薬局内で行うオンライン服薬指導と同様です(現行施行通知3頁)。外部でオンライン服薬指導を行っている薬剤師では対応できない場合があることから、「他の薬剤師」による対応が可能であることが示されているものと思われます。
事業者におけるその他の法的留意点
(1) 調剤薬局における留意点
薬剤師は雇用が想定されていることから、労働法的な観点から、オンライン服薬指導を外部で行う薬剤師の勤務体制を整備するにあたって、労働時間管理をどうするかは検討が必要になろうかと思います。
また、情報セキュリティの観点から、薬局(事業所)外への患者情報等の発信等が必要になりますので(⑥)、利用するオンライン服薬指導システムにおける情報セキュリティのチェックはもちろんのこと、患者情報等の外部発信につき、既存の情報管理規程等の改訂/整備等が必要になる場合もあり得ると思います。
(2) オンライン服薬システム提供事業者における留意点
薬局外において薬剤師が端末を用いて患者の調剤録等の記録・閲覧が可能となるシステム体制が必要となるところ、上記の施行通知案では、(薬局内外にかかわらず)オンライン服薬指導における通信環境についての改正も盛り込まれているため、併せて留意が必要です。
具体的には、オンライン診療と同様に、オンライン診療指針のほか、レセコンや電子薬歴等の医療情報システムにオンライン服薬指導システムが接続等する場合には、三省二ガイドラインのうち厚労省ガイドライン(「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」)に沿った対策が求められます。
以上
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