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【スマートシティ連載企画】第16回 スマート農業と法規制・法的リスク (2) 農業用ドローン
2022.11.02
農業用ドローンの現在地
ドローンは、「スマート農業」のイメージ画像として使用されることも多く見られ、スマート農業の典型例という印象を持たれている方も多いのではないでしょうか。
実際に、ドローンによる田畑や家畜の空撮や農薬・肥料の散布などは、デジタル田園都市国家構想推進交付金が採択された事業にも含まれています。
最近では、農作物の盗難防止のための監視用や、農作物の収穫・運搬にドローンを利用する取り組みも始まっているなど、農業への活用はさらに加速しています。
近年、農業用ドローンの活用が特に拡大しているのは、農薬散布の分野です。
農林水産省の調査によれば、2020年度において販売された散布用ドローンは5,561台で、2019年度の約3倍に急増しています。
ドローンによる農薬の散布実績も、2020年度の散布面積は119,500haに及んでおり、2019年度の約2倍となっています(画像1)。
画像1(出典:「令和3年度 農業分野におけるドローンの活用状況」(2021年8月 農林水産省 農産局 技術普及課)p.4)
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/attach/pdf/drone-176.pdf
(※ページ番号は表紙を含むPDFファイルのページ数です)
しかし、ドローンは、農業の用途で誰でも自由に使えるわけではありません。日本国内でのドローンの飛行には航空法が適用され、農村部・農地での飛行であっても同様に規制が及んでいます。
空撮や農薬散布といったドローンの農業活用は、いずれも航空法の規制・手続を守った上で初めて適法に実施可能となるため(農薬散布の場合は、農薬取締法の規制も受けることになります)、ドローンに関係する規制・手続の概要をまず把握しておくことが必要です。
改正航空法と農業用ドローン
2020年(令和2年)改正航空法(https://www.mlit.go.jp/policy/content/001333195.pdf )によって、機体登録が必須(無登録ドローンの飛行は禁止)となるルールが導入され、同法は2022年6月20日に施行されています。また、同日に施行された航空法施行規則(第5条の2)の改正(https://www.mlit.go.jp/koku/content/001442726.pdf )によって、適用対象となるドローン機体の重量が従前の「200g以上」から「100g以上」に拡大されています。
続いて、2021年(令和3年)6月に成立した改正航空法においては、ドローンのレベル4(有人地帯・補助者なし・目視外)の飛行を可能とするためのルールの枠組が定められました。令和3年改正航空法の詳細に関しては、本ブログの「第7回 ドローンの活用のために(前編)」をご参照ください。
https://www.tmi.gr.jp/eyes/blog/2021/12833.html
2021年(令和3年)改正航空法の施行日は2022年12月5日とされましたが(https://www.mlit.go.jp/report/press/kouku10_hh_000220.html )、施行を見据えて、ドローンのレベル4飛行に向けた動きは加速しています。
2022年4月には、国交省の検討会によるレベル4飛行に関する「とりまとめ」が公表されており、レベル4飛行実現に向けたロードマップが詳細に解説されています。
https://www.mlit.go.jp/koku/content/001478581.pdf
農業用ドローンを運用しようとする場合の手続・留意点
2020年(令和2年)改正航空法が施行された2022年6月20日以降においては、農業用ドローン(確実に100g以上の機体となるでしょうから、航空法の適用を受けることは避けられません)を飛行させる場合の規制・手続は以下のようになっています。
・機体の登録(オンライン申請システムで可能)
・飛行計画の申請(飛行開始予定日の10開庁日前まで。オンライン申請システムで可能)
・飛行直前の緊急飛行禁止区域確認
・飛行計画に沿って、遵守事項を守りながら操作
農地におけるドローン飛行の場合、一定の条件を満たすことで、補助者なしでの夜間飛行・目視外飛行も可能となります。
一方、単なる飛行・撮影だけでなく、ドローンから農薬散布を行うことは、「無人航空機からの物体の投下(原則禁止)」に該当するため、この点も含めた飛行計画を提出し、許可を受ける必要があります。
また、農薬取締法の遵守(特に農薬のドリフト(飛散)の防止)もあわせて求められます。
ドローンや無人ヘリによる農薬散布については、国交省・農水省のガイドライン(2022年6月15日改訂)と、国交省の無人航空機飛行マニュアル(2022年6月20日版)もあわせて参照する必要があります。
空中散布ガイドライン:https://www.maff.go.jp/j/syouan/syokubo/boujyo/nikyokucho_tsuchi.pdf
無人航空機飛行マニュアル:http://www.mlit.go.jp/common/001301400.pdf
いずれにしても、ドローン関連のルールは場所や使用条件によって複雑に込み入っている上、頻繁に改正・改訂されています。
スマート農業のように先進的な取り組みをしようとする中で、航空法違反などのコンプライアンス違反に問われるのはビジネス推進にとって大きな痛手となりえますので、しっかりマニュアルやガイドラインを読み込んで適切な対応を取ることが重要です。
以上
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