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特許関連統計情報(令和4年11月)
2022.11.29
はじめに
特許紛争に関与することとなった場合や、無効審判、特許異議、判定等の制度の利用を検討する場合において、統計上、その手続にどの程度の時間を要するのか、どのような判断がなされることが多いのか等の傾向を掴んでおくことは有用である。本記事は、かかる判断に資すると思われる統計情報を容易に把握できるように、令和4年11月時点において公開されている特許に関連する統計情報の概要を整理したものである。
なお、統計情報としては、特許のみを対象としたものではなく、広く知的財産権についての情報のみが公開されているものもあるが、これらの情報も一応参考になると思われるため併せて掲載している(例えば、下記の「知的財産権関係民事事件の新受・既済件数及び平均審理期間(全国地裁第一審)」は、あくまで特許訴訟に限定されていない「知的財産権関係民事事件」についての統計情報である。)。
特許権侵害訴訟
(1)地方裁判所
ア 件数及び平均審理期間
地方裁判所における特許権訴訟の新受件数
「実効的な権利保護に向けた知財紛争処理システムの在り方に関する調査研究報告書」(令和2年3月)
※2018年以降の情報については、法曹時報71巻10号73頁、同72巻10号79頁、同73巻10号81頁、同74巻10号37頁に基づく。
※上記の数は民事通常訴訟の特許権訴訟の件数である。
知的財産権関係民事事件の新受・既済件数及び平均審理期間(全国地裁第一審)
「知的財産権関係民事事件の新受・既済件数及び平均審理期間(全国地裁第一審)」
イ 判決・和解の内容等
地方裁判所における特許権の侵害に関する訴訟の終結状況
※裁判所HPの裁判例検索を用いて弊所で調べたものである。
※請求認容は一部認容を含む。
※各欄の件数は債務不存在確認訴訟を含んでおり、括弧内の数字はそのうちの債務不存在確認訴訟の件数を示している。
地方裁判所における知的財産権関係民事事件の終結状況
「実効的な権利保護に向けた知財紛争処理システムの在り方に関する調査研究報告書」(令和2年3月)
※2020年以降の情報については、法曹時報72巻10号80頁、同73巻10号82頁、同74巻10号38頁に基づく。また、2019年以前の情報については、基本的に上記報告書に依拠しつつも適宜法曹時報の記載に従ったアップデートを行っている。
地方裁判所における特許権侵害訴訟の和解の内容
「特許権の侵害に関する訴訟における統計(東京地裁・大阪地裁、平成26年~令和3年)」
判決で認容された金額
「特許権の侵害に関する訴訟における統計(東京地裁・大阪地裁、平成26年~令和3年)」
※附帯請求及び訴訟費用に関する金額は含まない。
和解において支払うことが約された金額
「特許権の侵害に関する訴訟における統計(東京地裁・大阪地裁、平成26年~令和3年)」
※訴訟費用及び和解費用に関する金額は含まない。
無効の抗弁の有無・無効の抗弁に対する判断
「特許権の侵害に関する訴訟における統計(東京地裁・大阪地裁、平成26年~令和3年)」
※判決により終局した事件について、各事件において主張された特許権の数を計上している。例えば、1件の特許権侵害訴訟事件で2つの特許権が主張された場合は2件と数えた上で、各特許権について無効の抗弁の有無と無効の抗弁に対する判断(特許有効判断又は特許無効判断)を計上している。
※「審判の最新状況」(令和3年10月22日)によれば、侵害訴訟と無効審判が同時期に提起された場合において、無効審判と侵害訴訟において有効・無効の判断に至った場合において、無効審判と地裁判決(無効の抗弁)の判断の一致率は、75%(有効53%、無効22%)である。また、判断が一致しなかった25%の内訳は、(1)特許庁が有効、地裁が無効と判断したケースが21%、(2)特許庁が無効、地裁が有効と判断したケースが4%である。
(2)高等裁判所
ア 件数及び平均審理期間
高等裁判所における特許権訴訟の新受件数
「実効的な権利保護に向けた知財紛争処理システムの在り方に関する調査研究報告書」(令和2年3月)
※平成30年以降の情報については、法曹時報71巻10号77頁、同72巻10号83頁、同73巻10号85頁、同74巻10号41頁に基づく。
知的財産権関係民事事件の新受・既済件数及び平均審理期間(知財高裁控訴審)
「知的財産権関係民事事件の新受・既済件数及び平均審理期間(知財高裁控訴審)」
イ 判決・和解の内容等
知的財産高等裁判所における特許権の侵害に関する訴訟の終結状況
※知的財産高等裁判所HPの裁判例検索を用いて弊所で調査を行った結果を整理したものである。
※原判決変更は一部変更を含む。
※各欄の件数は債務不存在確認訴訟を含んでおり、括弧内の数字はそのうちの債務不存在確認訴訟の件数を示している。
高等裁判所における知的財産権関係民事事件の終結状況
「実効的な権利保護に向けた知財紛争処理システムの在り方に関する調査研究報告書」(令和2年3月)
※2020年以降の情報については、法曹時報72巻10号84頁、同73巻10号86頁、同74巻10号42頁に基づく。また、2019年以前の情報については、基本的に上記報告書に依拠しつつも適宜法曹時報の記載に従ったアップデートを行っている。
(3)最高裁判所
※知財高裁HPの裁判例検索において、事件種別:「侵害訴訟等控訴事件」、権利種別:「特許権」、上告提起等の有無:「上告提起」or「上告受理申立て」or「上告・上告受理申立て」を指定して検索した結果を整理したものである。「裁判年」は上告又は上告受理申立てがなされた事件の知財高裁での判決日を意味する。
※上記の検索結果において上告又は上告受理申立てに関する情報が記載されていない件数は、「その他」に分類した。
特許無効審判、特許異議、判定
本項以降(「3 無効審判、特許異議、判定」、「4 特許拒絶査定不服審判、訂正審判等」及び「5 審決取消訴訟」)の各表は、特に言及がない限り「特許行政年次報告書2022年版」に記載された情報を整理したものである。
また、本項以降の各表記載の審理期間は、審判請求日(※1)から、審決の発送日(※2)、取下・放棄の確定日、又は発送日までの期間の暦年平均である。
※1:異議申立については異議申立日。特許拒絶査定不服審判において前置審査に係る事件については審理可能となった日(部門移管日)。
※2:特許異議申立において取消理由通知(決定の予告)を行うものはその発送日、特許無効審判において審決の予告を行うものはその発送日。
(1)特許無効審判
ア 平均審理期間
イ 件数及び処分の内容等
※「取下・放棄」の欄の数字は、無効審判においては無効審判請求の取下げの件数を示すものと思われる。
※審判の動向(令和2年度 特許庁審判部)によれば、2019年に無効審判(特許・実用新案)において有効と判断されたもの(98件)のうち、訂正なしが63件、訂正ありが35件であった。
(2)特許異議
ア 平均審理期間
イ 件数及び処分の内容等
※2015年の件数については、2015年4月1日以降に申立てられた件数である。また、( )外の数字は権利単位、( )内の数字は申立単位の件数である。
※「取下・放棄」の欄の数字は、特許異議申立においては申立の取下げの件数を示すものと思われる。
※審判の動向(令和2年度 特許庁審判部)によれば、2015年4月~2019年12月の申立て事件のうち、特許異議において維持とされたもの(3862件)のうち、訂正なしが1607件、訂正ありが2255件であった。
(3)判定
ア 平均審理期間
イ 件数及び処分の内容等
※J-PlatPatにおいて「当事者系審判」「判定請求」「特許」を選択し、審決日/判決日を各年1月1日から12月31日までの期間に指定して検索した結果を整理したものである。
※なお、特許庁においては平成30年4月より標準必須性の判断のための判定の運用が開始されたが、J-PlatPatにおいて「当事者系審判」「判定請求」「特許」を選択した上で、全文検索において「必須性」「標準必須」「標準規格」等のキーワードを入力した上で検索したがヒットは0件であった。
特許拒絶査定不服審判、訂正審判等
(1)特許拒絶査定不服審判
ア 平均審理期間
イ 件数及び処分の内容等
(2)訂正審判
ア 平均審理期間
イ 件数及び処分の内容等
※「取下・放棄」の欄の数字は、訂正審判においては請求の取下げの件数を示すものと思われる。
審決取消訴訟
(1)知的財産高等裁判所
ア 件数及び平均審理期間
「審決取消訴訟の新受・既済件数及び平均審理期間」
イ 特許に係る審決取消訴訟の事件種類及び判決結果の内訳
※知的財産高等裁判所HPの裁判例検索を用いて弊所で調べたものである。
※審決取消(決定取消)は一部取消を含む。
(2)最高裁判所
ア 件数
※1:特許・実用新案・意匠・商標合計で、拒絶査定不服審判、補正却下不服審判
※2:特許・実用新案・意匠・商標合計で、無効審判、取消審判、訂正審判
※3:特許・実用新案・商標合計
イ 判決の内容等
(ア)査定系の審判
(イ)当事者系の審判
※最高裁令和元年8月27日判決(平成30(行ヒ)69)審決取消請求事件
(ウ)異議
最終改定日:2023年3月28日