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【中国】【意匠】中国国家知識産権局2023年1月4日に新たな「ハーグ協定加入後の関連業務処理に関する暫定弁法」を発表
2023.01.11
中国国家知識産権局(CNIPA)は、2023年1月4日付けで、新たな「ハーグ協定加入後の関連業務処理に関する暫定弁法」(以下「新暫定弁法」といいます。)を発表しました。新暫定弁法の施行日は、2023年1月11日です。
CNIPAは2022年5月5日のハーグ協定加入に先立ち、2022年4月22日に今回の弁法と同じ名称の「ハーグ協定加入後の関連業務処理に関する暫定弁法」を公表し、過渡期の出願の扱いについて定めていました(先の弁法に関する解説はこちらをご覧ください)。新暫定弁法は、この2022年4月の弁法を差し替えるものです。
CNIPAによる専利実施細則の改正作業が難航する中、ハーグ国際出願の扱いについて詳細を定める必要に応じて、新たな弁法を策定したものと考えられます。
CNIPAは、同日付けで、部分意匠出願の審査開始に関する弁法も公表しており、これら2つの弁法は、ハーグ国際出願を含め、大量に積滞している部分意匠及び意匠の国内優先権主張出願について、実施細則の改正を待たずに審査を開始することを宣言するものと考えられます。部分意匠出願の審査開始に関する弁法の公表については、こちらをご覧ください。
新暫定弁法による変更点は主に以下の点です。
1)ハーグ協定による中国を指定した国際意匠出願の審査が、専利法実施細則の改正を待たずに開始されると思われる点
2)国際意匠出願については、優先権主張料の納付が不要とされた点(新暫定弁法6条)
3)中国国内に住所を有しない出願人の国際意匠出願に対し拒絶通報が発行された場合、中国の現地代理人が必要であることが明記された点(新暫定弁法7条、専利法18条)
4)拒絶理由に対する意見書は中国語、補正書は英語で提出すべきことが明記された点(新暫定弁法5条)
上記の変更により、出願時に適切に優先権主張手続きが行われ、拒絶通報なしに登録に至る国際意匠出願については、現地代理人なしに登録までの手続きが行えることが期待されます。
以下に、新暫定弁法の和訳(仮訳)を掲載します。
(仮訳)
国家知識産権局「ハーグ協定」加入後の関連業務処理に関する暫定弁法
(第511号)
「意匠の国際登録に関するハーグ協定」(1999年版、以下「ハーグ協定」とする)の我国における順調な実施と、国内外のイノベーション主体の切迫した審査の需要に応えるため、国家知識産権局は『「ハーグ協定」加入後の関連業務処理に関する暫定弁法』を改正し、ここに公布し、2023年1月11日より施行する。
国家知識産権局
2023年1月4日
「ハーグ協定」加入後の関連業務処理に関する暫定弁法
第1条 2022年5月5日より、中国の事業体又は個人は、専利法第19条第2項の規定に従い、「意匠の国際登録に関するハーグ協定」(1999年版、以下「ハーグ協定」とする)に基づき、意匠の国際登録出願を行うことができる。
出願人は、世界知的所有権機関国際事務局(以下、「国際事務局」とする)に対し、意匠の国際登録出願を直接提出することができ、また、国家知識産権局を通した転送により、英語を使用して行った意匠の国際登録出願を提出することができる。
国家知識産権局を通した転送により意匠の国際登録出願を行う場合、「ハーグ協定」及び国家知識産権局の規定に合致した紙形式又は電子形式にて、関連資料を提出しなければならない。
「ハーグ協定」に規定の関連費用は、出願人が直接、国際事務局に納付する。
第2条 「ハーグ協定」に従って国際登録日を確定し、且つ中国を指定する意匠の国際登録出願(以下、「国際意匠出願」とする)は、国家知識産権局に提出された意匠出願とみなされ、国際登録日を専利法第28条に規定の出願日とみなす。
第3条 国際意匠出願は、国家知識産権局が、専利法、専利法実施細則、専利審査指南及び本弁法に従って処理する。
本弁法の施行日より、国家知識産権局は、国際意匠出願に国家の出願番号を付与し、審査を行い、審査結果を国際事務局に通知する。
国際意匠出願に審査を経て拒絶理由を発見しない場合、国家知識産権局は保護の決定を行い、国際事務局に通知する。
国際意匠出願に、審査により専利法及びその実施細則の関連規定に合致しないことが発見された場合、国家知識産権局は国際事務局に拒絶通報を発する。
第4条 国際事務局が公表する国際意匠出願が意匠の設計要点の説明を含む場合、規定に従って意匠の簡単な説明を提出したものとみなす。
第5条 国際意匠出願について、出願人が答弁する場合は、中国語で意見書を提出しなければならず、出願書類を補正する場合には、英語を使用しなければならない。
第6条 国際意匠出願について、国家知識産権局は優先権主張料を徴収しない。
出願人が優先権を主張する場合であって、国際意匠出願時に優先権基礎出願の書類の謄本を提出していない場合、出願の国際公表の日から3か月以内に国家知識産権局に優先権基礎出願の書類の謄本を提出しなければならない。
優先権基礎出願の書類の謄本に記載された出願人が、後の出願の出願人と一致しない場合、出願人は出願の国際公表の日から3か月以内に国家知識産権局に関連の証明書類を提出しなければならない。
出願人が、期限内に優先権基礎出願の書類の謄本を提出しない、又は関連の証明書類を提出しない場合、優先権主張をしていないものとみなす。国際意匠出願が優先権を主張していないものとみなされる場合、専利法実施細則第6条の規定は適用しない。
第7条 国際意匠出願の出願人が拒絶通報に応答する場合、又は不服審判請求或いは他の専利事務手続きを行う場合、専利法実施細則に別途規定された場合を除き、専利法第18条第1項*の規定を満たさなければならない。
第8条 国際意匠出願の出願人は、出願の国際公表の日から2か月以内に、国家知識産権局に分割出願をすることができる。
出願人が審査意見に応じて分割出願を行う場合、最も遅い場合でも、元の出願の国内公告の日から2か月以内に提出しなければならない。上記の期限満了後、又は元の出願が既に拒絶され、又は元の出願が既に取り下げたものとみなされ且つ権利回復されていない場合、一般に分割出願を行うことはできない。
第9条 出願人は、国際意匠出願に係る意匠が、専利法第24条第2項又は第3項に列記された事情を有すると認識する場合、国際意匠出願時にその旨を声明し、且つ、出願の国際公表の日から2か月以内に国家知識産権局に関連の証明書類を提出し、説明しなければならない。声明を行わない、又は証明書類を提出しない場合、その出願には専利法第24条の規定を適用しない。
第10条 出願人は、国際意匠出願の関連費用を納付する場合、国際事務局及び国家知識産権局の規定に従い、国家の出願番号又は国際登録番号を以て、満額を納付しなければならない。国際意匠出願の個別指定手数料の納付基準は、「国家知識産権局の意匠の年金、個別指定料に関する事項の公告」に基づいて実施する。
第11条 国際意匠出願の出願人又は意匠権者が権利の変更を申請する場合、国際事務局に対して関連手続きを行う他に、国家知識産権局にも証明書類を提出しなければならない。証明書類が外国語である場合、中国語の書誌事項の訳文を付さなければならない。証明書類を提出しない、又は証明書類が不合格である場合、国家知識産権局は国際事務局に対し、当該権利の変更は中国では効果を生じない旨を通知する。
第12条 国際意匠出願の登録公告後、国際意匠出願の出願人は、国家知識産権局に国際意匠出願の登記簿謄本の発行を請求し、中国における保護の証明とすることができる。
第13条 国際意匠出願の無効審判過程において、中国国内に住所を有しない意匠権者に対しては、郵送、FAX、電子メール、公告等の方式を採用して書類を送達することができる。公告による送達を採用する場合、公告日から満1か月で送達されたものとみなす。
第14条 出願人は、国家知識産権局が本弁法に従って行った決定に不服である場合、法に従って行政復議の申し出、不服審判請求、又は行政訴訟を提起することができる。
第15条 国際意匠出願の出願人は、本弁法に規定された以外のその他の法律手続及び事務を行う場合、「ハーグ協定」、専利法及びその実施細則、専利審査指南の規定に従って申請すべきである。
第16条 本弁法は2023年1月11日から施行される。2022年5月5日施行に係る「「ハーグ協定」加入後の関連業務処理に関する暫定弁法」(国家知識産権局第481号通知)は同時に廃止する。
注)*専利法第18条第1項:中国に常駐の住所又は営業所を持たない外国人、外国企業又は外国のその他の組織が中国で専利を出願する場合及びその他の専利実務手続を行う場合、法律によって設立された専利代理機構に手続きを委託しなければならない。