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【RE100の技術要件の改定】15年ルール
2023.01.19
100%再生可能エネルギー電気の導入を目指すRE100について、2022年10月に技術要件(Technical Criteria)が改定されました。改定の重要なポイントの一つが、2024年1月1日以降に締結する調達契約に適用される、新たな再生可能エネルギー発電設備の増設を企図して設けられた15年ルールです。一定の類型の再生可能エネルギー電気の調達で、長期でない契約、発電プロジェクトが特定されていない契約、又は、需要家が当初のオフテイカーとして締結したものではない契約による場合、運転開始・リパワリングから15年以上経過した発電設備からの調達は、RE100での報告に用いることができません。但し、消費電力の15%までは、15年ルールの対象外となります。
再生可能エネルギー源
消費する電気を100%再生可能エネルギー電気とすることをコミットする企業の集まりであるRE100では、次に掲げるエネルギー源から生じた電気のみが、再生可能エネルギー電気として扱われます(技術要件Sec. 3)。
・風力
・太陽光
・地熱
・持続可能な供給源によるバイオマス
・持続可能な水力
水素や蓄電池は、エネルギー源ではないため、上記リストには含まれません。
また、RE100では、持続可能なバイオマスや水力のみが認められます。この持続可能性は、第三者機関による認証で証明することが推奨されています。
再生可能エネルギー電気の調達
日本においては、RE100で認められる電気の調達は、次の4つの類型のいずれかである必要があります(技術要件Sec. 4)。
・自家発電
・直接調達
・電力供給者との契約
・エネルギー属性証書(energy attribute certificates)の調達
(1) 自家発電(調達類型(procurement type)1)
需要家が、発電設備を保有し、その発電設備から生じる電気を消費するものです。需要家が、需要場所(オンサイト)又は需要場所以外の場所(オフサイト)に発電設備を設置し、オフサイトの場合、電力系統又は自営線を通じて電気を需要場所に供給します(技術要件Sec. 3の1)。
(2) 直接調達(調達類型2)
発電者と契約をし、発電者から電気を調達するものです。次の2つの形態があります。
・フィジカルPPA(Power Purchase Agreement、電力購入契約)(調達類型2.1)
・バーチャルPPA(フィナンシャルPPA)(調達類型2.2)
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(3) 電力供給業者との契約(調達類型3)
電気供給業者(electricity suppliers、日本では小売電気事業者)との契約により、電気と非化石価値が需要家に供給されるものをいいます。次の2つの形態があります。
・発電プロジェクトが特定された供給契約
・レディメードの供給契約
(a) 発電プロジェクトが特定された供給契約(調達類型3.1)
需要家のため、小売電気事業者が特定の発電プロジェクトから電気を調達するもので、レディメードの供給契約と異なり、需要家はどの発電プロジェクトからの電気であるかを認識しており、小売電気事業者は、需要家の承諾なくプロジェクトを入れ替えることはできません(技術要件 Appendix E 1)。
(b) レディメードの供給契約(調達類型3.2)
非化石証書を生み出す発電プロジェクトが特定されていません。
(4) エネルギー属性証書(energy attribute certificates)の調達(調達類型4)
詳しくは【RE100の技術要件の改定】バーチャルPPA(フィナンシャルPPA)と非化石証書の購入 | ブログ | Our Eyes | TMI総合法律事務所をご参照願います。
15年ルール
2022年10月に改定されたRE100の技術要件(Technical Criteria)は、需要家による電力の脱炭素化の中心となるのは、①自家発電と、②長期、直接、又は発電プロジェクトを特定しての契約に基づく、新たな発電プロジェクトからの調達であるとしています(技術要件Sec. 5の2.1)。このため、運転開始又はリパワリングから15年の期間制限を遵守するよう求めています(技術要件Sec. 5の2.2)。
技術要件の改定に先立ち、意見募集(public consultation)が行われました。「日本においては、再生可能エネルギー電気の供給は限られており、また、その多くは年数の経過した水力であること、そして、再生可能エネルギー電気のコストはヨーロッパや北米のように下がっておらず、15年ルールを適用しても、再生可能エネルギー電気の開発は進まない」とする意見に対して、RE100は、「日本は、2030年までに再生可能エネルギー電気36~38%をターゲットとしているのであり(現行の第6次エネルギー基本計画)、より多くの再生可能エネルギー発電設備の建設が必要である。既存の再生可能エネルギー発電設備の維持には、別の市場メカニズムを活用すべきである」と回答しています(Results of public consultation on proposed changes to the RE100 technical criteriaの17頁)。「別の市場メカニズム」とは、例えば、エネルギー供給構造高度化法上の義務履行や温対法上の報告等での活用をいうと解されます。
いつから「15年」?
2025年1月から12月までの期間の再生可能エネルギー電気の使用は、15年前の2010年の1月1日又はそれ以降に運転開始し又はリパワリングした発電プロジェクトからの電気調達によらなければなりません。
リパワリング
過去15年間において、次のいずれかの要件を満たす場合には、リパワリングがなされたとして、RE100のメンバーたる需要家は、当該発電プロジェクトからの再生可能エネルギー電気の調達を報告に用いることができます(技術要件Appendix C)。
(a) リパワリングがなされた結果、新たに据え付けられた発電設備が発電プロジェクトの公正な市場価格の80%に達する場合
(b) 出力が増加した適格の水力発電の改良で、以下のものを含みます。
・現状の発電機の巻替え(rewinding)
・新しい発電機の入替え
・既存の貯水池への新しい発電機の追加
「改良」には、貯水容量の増大や既存の貯水池の落差の増大、その他の水路の変更は含まれません。また、通常のメンテナンスによる出力の増加も含まれません。
発電量に、〔(増加した容量)/(増加後の容量)〕を乗じて得られる数値を、報告に用いることができます。
(c) 既存の稼働中の発電設備についての、分離可能な改良又は完全な改良で、増加分の発電量が、既存の発電とは別個にメーターで測定できる場合
15年ルールの例外その1 調達類型
次のものは、15年ルールの対象外となります(技術要件Sec. 5の2.2)。
(a) 自家発電(調達類型1)
(b) フィジカルPPAで、オンサイト、又はオフサイトで自営線で接続しており電力系統を経由しないもの(調達類型2.1の一部)
(c) 長期の、発電プロジェクトが特定されている契約で、需要家が当初のオフテイカーとして締結したもの、及びかかる契約が更新されたもの(契約期間(更新後のそれを含む)が15年を超えてもよい)で、以下のものを含みます。
(i) フィジカルPPAで、オフサイトで電力系統を経由するもの(調達類型2.1の一部)
(ii) バーチャルPPA(調達類型2.2)
(iii) 発電プロジェクトが特定された供給契約(調達類型3.1)
(iv) 発電プロジェクトが特定されたエネルギー属性証書の供給契約(調達類型4)
(d) 2024年1月1日以前に締結された契約
逆にいえば、15年ルールが適用されるのは、2024年1月1日又はそれ以降に締結された契約で、かつ、以下のいずれかのものとなります。
① (c)(i)から(iv)までのもので、長期でない契約、発電プロジェクトが特定されていない契約、又は、需要家が当初のオフテイカーとして締結したものではない契約
② レディメードの供給契約(調達類型3.2)
15年ルールの例外その2 15%ルール
RE100に加盟する需要家について、その電気の総消費量の15%までは、15年ルールの適用が免除されます(技術要件Sec. 5の2.2)。
このルールは、全世界における再生可能エネルギー電気調達に適用され、需要家は、どの市場において、15%ルールの適用を受ける調達を行うかを選択することができます。しかし、RE100としては、需要家に対して、15%ルールの利用をできるだけ早期に自主的に解消するよう求めています。
15年ルールはいつから適用?
2023年の開示サイクルから、RE100加盟社は、運転開始日又はリパワリング完了日を開示する必要があります(技術要件Sec. 5の2.2.1)。
そして、2024年1月1日及びそれ以降から始まる12か月間をカバーする最初の開示から15年ルールが適用されます。
再生可能エネルギー電気調達において、発電プロジェクトが特定されていても、複数のプロジェクトを含む場合には、できるだけ詳細に開示する必要があり、複数のプロジェクトを分解することができない場合は、当該供給については、そのうち最も年数の経過したプロジェクトの運転開始日又はリパワリング完了日が起点とされます(技術要件Sec. 5の2.2.2)。
また、運転開始日又はリパワリング完了日が不明又は報告されない場合は、当該調達は15%の上限の方に算入されます。
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