ブログ
【デジタル円ブログ】ブログ開始のご挨拶
2024.07.16
私は、2021年6月から2024年6月まで日本銀行に出向し、日本におけるCBDC(中央銀行デジタル通貨:Central Bank Digital Currency)の発行の検討に携わっていました。
報道等では正式名称である「CBDC」の代わりに「デジタル円」という通称名を用いることが一般的ですので、本ブログでも、日本で検討されるCBDCを指して「デジタル円」と呼ぶこととします。
さて、わかりやすさの観点から「CBDC」を「デジタル円」と言い換えてみたところで、結局のところそれが何かを正確に理解している人は多くないと思われます。
財務省が委託した「通貨に関する実態調査(2022年度)」によると、「中央銀行デジタル通貨(CBDC)を知っているか」との質問に対して「⾒聞きしたことがあり、具体的な内容も知っている」と回答した方の割合は、わずか5%弱にとどまるとのことです(数年前の調査ですので現在は認知度が多少向上している可能性はありますが)。また、試しにインターネットの検索バーに「デジタル円」と入力すると、「デジタル円とは」という検索候補が一番上に表示されます。
私の日本銀行への出向中も、「デジタル円って、日銀がビットコインを発行するの?」、「電子マネーと何が違うの?」、「早くデジタル円を発行しなければ、デジタル人民元に乗っ取られる」といった率直なご質問やご意見を多く受けました。
このように、デジタル円に対する一般的な理解度は必ずしも高くありません。
その一方で、日本銀行や政府による検討は(実は)着々と進んでいます。
日本銀行は2020年10月(約4年も前です)に「中央銀行デジタル通貨に関する日本銀行の取り組み方針」を公表しており、2021年4月以降、概念実証・パイロット実験を通じて技術面における実証に取り組んでいます。
また、2023年4月、通貨制度を所管する財務省において「CBDCに関する有識者会議」が立ち上げられ、その後、2024年1月には、政府・日本銀行として制度設計の大枠を整理するため、「CBDCに関する関係府省庁・日本銀行連絡会議」が設置されました。
諸外国でもCBDCの検討が本格化しています。例えば、EUでは、2023年6月28日に欧州委員会がデジタルユーロ(日本の「デジタル円」は上記のとおり通称名ですが、EUではこれが正式名称です)に関するEU規則案を提案し、同年11月1日からは欧州中央銀行がデジタルユーロ発行の「準備フェーズ」を開始しています。
このような(内外での検討は着々と進んでいるが、一般的な理解は必ずしも進んでいないかもしれない)現状認識を踏まえて、このブログでは、デジタル円に関する理解度の向上と関連する法的論点の検討の深化に微力ながら貢献すべく、次回以降、公表資料と私見をもとに以下のテーマを順次採り上げていく予定です(内容や順番は変更する可能性があることはご了承ください)。ご期待ください。
1.デジタル円の基本的な利用イメージと「法貨」であることの意義
2.デジタル円の流通を担う「仲介機関」とは?担い得る業態と規制について
3.デジタル円におけるプライバシーとAML/CFTのバランス
4.デジタル円の「追加サービス」の内容と提供主体
5.デジタル円の「上限」や「付利」
6.デジタル円の私法的性質(債権か、物権か、それ以外か)
7.「デジタル円偽造罪」は必要か?
Member
PROFILE