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【中国】外商投資参入特別管理措置(ネガティブリスト)(2024年版)
2024.09.13
はじめに
2024年9月8日、国家発展改革委員会と商務部は「外商投資参入特別管理措置(ネガティブリスト)(2024年版)」(以下「2024年版」といいます。)を公布し、2024年11月1日より施行することとなりました。これに伴い、「外商投資参入特別管理措置(ネガティブリスト)(2021年版)」(以下「2021年版」といいます。)は廃止されることになります。
製造業分野の外資参入制限措置を全面的に撤廃
2024年版における制限措置は2021年版における31項目から29項目に減少しました。
具体的には2021年版におけるNo.6「出版物の印刷は中国側が持分支配」、およびNo.7「漢方煎じ薬の調製技術の応用並びに漢方製剤の秘伝処方製品製造への投資禁止」の2つの項目が削除され、これに伴い、製造業分野の外資参入制限措置は全面的に撤廃されました。
2023年10月18日、習近平国家主席は第三回「一帯一路」国際協力サミットフォーラムの開幕式で、製造業分野の外資参入制限措置を全面的に撤廃することを宣言しており、2024年版はこの約束を実行したものといえます。また、2022年1月1日より自由貿易試験区で施行されている自由貿易試験区外商投資参入特別管理措置(ネガティブリスト)(2021年版)(以下「自貿区2021年版」といいます。)では、2024年版に先行して製造業分野における制限措置を全面的に撤廃していましたが、今般自由貿易試験区以外の全国において製造業分野への外資参入が撤廃されたことになります。
ネガティブリストに掲載されているものの、今後開放が見込まれる項目
近年、中国は外国投資の参入を緩和し続けており、2017年から2021年までの5年間、全国および自由貿易試験区の外資参入ネガティブリストを毎年改定し、両リストの制限措置はそれぞれ93項目から31項目、122項目から27項目に減少し、その中で、製造業、採掘業、農業、金融業などの分野で大幅な開放措置が実施されました。
他方、注目すべきは、全国の外資参入ネガティブリストが自由貿易試験区の外資参入ネガティブリストに近づいている一方で、今回発表された2024年版は、自貿区2021年版と比べ、依然と2項目多いことです。
この差分となっている2項目は2024年版におけるNo.4「中国管轄海域及び内陸水域での漁獲への投資禁止」とNo.16「社会調査への投資禁止」です。
そのうち、社会調査はサービス業の範疇に属しますが、近時の関係部門における活動からすると、サービス業の段階的な開放の兆しが見られています。例えば、2024年7月11日に、国務院は批復[1]を公表し、広州市で外商投資企業による社会調査を許可し、部分的に開放しました。すなわち、ネガティブリストの定めにかかわらず、中国側の持株比率が67%以上であり、法定代表者は中国国籍であることを前提として、外商投資企業による社会調査を許容したことになります。広州は今回の調整により、本稿の執筆時点においては、社会調査分野への外資参入が開放された唯一の都市となっています。
また、2024年版が公布された当日、商務部、国家衛生健康委員会、国家薬監局の三部門が共同で通知[2]を公表し、医療分野での拡大開放試験作業を行うことを示しました。通知の要求によれば、北京、上海及び広東の三つの自由貿易試験区および海南自由貿易港で、外商投資企業が製品の登録・市場投入および生産に使用するために、人体幹細胞、遺伝子診断および治療技術の開発と技術応用に従事することを認めました。また、北京、天津、上海、南京、蘇州、福州、広州、深センおよび海南全島に外国独資病院(中医類を除き、また公立病院の買収も除く。)の設立を認める予定であることが示唆されています。
商務部の関係者においては、新たな開放措置の宣伝、アピールを強化し、今後も外商投資企業と内資企業の待遇を一致させるという原則に従い、高い水準の対外開放を通じて高水準での発展を推進し、多くの外資企業に中国への投資機会を共有し、外資企業が安心して中国で長期的に事業を展開できるように努める考えを示しています。
足元では経済の停滞が続いている中国ですが、外資の呼び込みのために更なる開放が進められていくことが予測されます。今回は全国での外商投資ネガティブリストが更新されたのみですが、今後自由貿易試験区におけるネガティブリストも更新されることも考えられますので、今後の動向も引き続き注視する必要があるといえます。
<2024年版ネガティブリスト>[3]
No. |
特別管理措置 |
一、 農業、林業、牧畜業、漁業 |
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1. |
小麦の新品種の選択育成と種子の生産は中国側が34%を下回らないこと。トウモロコシの新品種の選択育成と種子の生産は中国側が持分支配。 |
2. |
中国に稀有・特有の貴重な優良品種の研究開発、養殖、栽培及び関連する繁殖材料の生産(栽培業、牧畜業水産業の優良遺伝子を含む)への投資は禁止。 |
3. |
農作物、種畜・種家禽、水産種苗の遺伝子組換品種の選択育成及びその遺伝子組換種子(苗)の生産への投資は禁止。 |
4. |
中国管轄海域及び内陸水域での漁獲への投資禁止。 |
二、 採鉱業 |
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5. |
レアアース、放射性鉱物、タングステンの探査、採掘及び選鉱への投資禁止。 |
三.製造業 |
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6 |
出版物の印刷は中国側が持分支配。 |
7 |
漢方煎じ薬の調製技術の応用並びに漢方製剤の秘伝処方製品製造への投資禁止。 |
三、 電力、熱エネルギー、ガス及び水の供給業 |
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6. |
原子力発電所の建設、経営は中国側が持分支配。 |
四、 卸売・小売業 |
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7. |
タバコの葉、紙巻タバコ、再乾燥したタバコの葉その他のタバコ製品の卸売、小売への投資禁止。 |
五、 交通運輸・倉庫・郵政業 |
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8. |
国内水上運輸は中国側が持分支配。 |
9. |
公共航空会社は中国側が持分支配、かつ 1 社の外資及びその関連会社の出資比率は 25%を超えず、法定代表者は中国籍とする。ゼネラル・アビエーションの法定代表者は中国籍とし、農林漁業用のゼネラル・アビエーションは合弁に限 り、その他のゼネラル・アビエーションは中国側が持分支配。 |
10. |
民間用空港の建設、経営は中国側が相対的持分支配。外資側は、管制塔の建 設、運営には関与してはならない。 |
11. |
郵便会社、信書の国内宅配業務への投資禁止。 |
六、 情報通信、ソフトウェア・技術サービス業 |
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12. |
電信会社について、中国の WTO 加盟時に開放を約した電信業務に限る。付加価値電信業務の外資出資比率は 50%を超えない(電子商務、国内多当事者間通信、データ保存・転送、コールセンターを除く)。基礎電信業務は中国側が持分支配。 |
13. |
インターネットニュース情報サービス、インターネット出版サービス、インターネット視聴番組サービス、インターネット文化経営(音楽を除く)、インターネット公衆情報配信サービス(中国のWTO 加盟時に開放を約した内容を除く)への投資禁止。 |
七、 リース・ビジネスサービス業 |
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14. |
中国法律事務(中国の法環境の影響に関する情報提供を除く)への投資禁止。国内の法律事務所のパートナーになることができない。 |
15. |
市場調査は合弁に限る。その内、ラジオ・テレビの視聴調査については中国側が持分支配。 |
16. |
社会調査への投資禁止。 |
八、 科学研究・技術サービス業 |
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17. |
ヒト幹細胞、遺伝子診断・治療技術の開発と応用への投資禁止。 |
18. |
人文社会科学機関への投資禁止。 |
19. |
地上測量、海洋測量製図、測量製図用航空撮影、地面移動測量、行政区域境界線測量製図、地形図、世界行政区画地図、全国行政区画地図、省レベル以下の行政区画地図、全国版地図教材、地方版地図教材、三次元地図及びナビゲーション電子地図の編製、地域性の地質図、鉱物地質、地球物理、地球化学、水文地質、環境地質、地質災害、地質遠隔探査等の調査への投資禁止(鉱業権者が鉱業権の範 囲内で実施する業務については、特別管理措置の制限を受けない)。 |
九、 教育 |
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20. |
就学前教育、普通高校及び高等教育機関は中外合作に限り、かつ中国側が持分支配。(校長又は主要な管理責任者は中国国籍を有するものとし、理事会・董事会・連合管理委員会の中国側構成員は 2 分の 1 を下回らないこと)。 |
21. |
義務教育機関、宗教教育機関への投資禁止。 |
一〇、 衛生・社会事業 |
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22. |
医療機関は合弁に限る。 |
一一、 文化・体育・娯楽業 |
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23. |
報道機関(通信社を含むがそれに限らない)への投資禁止。 |
24. |
書籍、新聞、定期刊行物、AV 製品及び電子出版物の編集、出版、制作業務への投資禁止。 |
25. |
各レベルのラジオ局、テレビ局、ラジオ・テレビチャンネル、ラジオ・テレビ放送ネットワーク(送信局、中継局、ラジオ・テレビ衛星、衛星送信ステーショ ン、衛星受信中継ステーション、マイクロ波ステーション、監視局、有線ラジオ・テレビ放送ネットワーク)への投資禁止。ラジオ・テレビ・ビデオオンデマンド業務及び衛星放送地上受信設備の設置サービスへの従事禁止。 |
26. |
ラジオ・テレビ番組の制作・運営(輸入業務を含む)を行う会社への投資禁止。 |
27. |
映画の制作会社、配給会社、上映会社及び映画輸入業務への投資禁止。 |
28. |
文化財のオークション会社、文化財商店及び国有文化財博物館への投資禁止。 |
29. |
文芸公演団体への投資禁止。 |
Authors:
包城 偉豊
呉 燕
[1] 国务院关于同意在沈阳等6个城市暂时调整实施有关行政法规和经国务院批准的部门规章规定的批复
[2] 商务部、国家卫生健康委、国家药监局关于在医疗领域开展扩大开放试点工作的通知
[3] 赤字箇所は2021年版からの変更箇所
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