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【宇宙ブログ】日本の宇宙活動法、制定後初めての、そして五年に一度の大改正が始まります(委員を拝命しました)!
2024.09.20
「ブログ、楽しみに読んでいます」とお声がけくださっていた皆さま、そして忙しい中でも原稿を送ってくれていたチームのみんな、1年近くもブログが更新できずに大変申し訳ございませんでした!この1年半というのは、TMI宇宙チームを立ち上げてから加速度的に業務量が増えた激動の時期だったと思っております。それは実務面でもですし、政府委員として経験したこともです。これからは頻繁にUPDATEするぞという決意を込めて、昨年度を振り返りつつ、これからの宇宙ビジネスと法律について整理したいと思います。
実務面
TMIの宇宙チームはアメーバ的に所内の様々な専門性を持つ弁護士・弁理士を日々取り込み拡大しております。その理由になった特徴が2つ、①大型投資案件と②海外取引(紛争を含む)です。①は最終的に投資に至らないものもありますし、現在進行中のものもあるので詳細は控えますが、海外投資も含め日本連合が大型投資を多く検討する傾向が続いていると感じております。公表されているものも含め海外投資に関与する機会も複数頂きましたが、ビジネス面での取り組みでも日本側は黙っておりません。②として、海外の大手企業とのやり取りの中でも、不当な契約実務ではしっかりと闘う姿勢を見せてまいります。宇宙ビジネスは、日本が外交交渉においても重要な役割を担う産業に育っていくものと考えております。実務面の具体例は守秘義務との関係で総括しか話せませんが、以下では弊所が関与している政策やその他の活動についてお話しします。
宇宙政策委員 安全保障部会委員として
最初にお話ししたいのは、2022年1月(ウクライナ問題前)に宇宙政策委員安全保障部会委員に就任してずっと検討を続けていたことが、昨年世の中に出されたことです。それは日本国として初めて発表した「宇宙安全保障構想」です。2023年6月日本が明確に「宇宙安全保障上の目標」として「我が国が、宇宙空間を通じて国の平和と繁栄、国民の安全と安心を増進しつつ、同盟国・同志国等とともに、宇宙空間の安定的利用と宇宙空間への自由なアクセスを維持すること」を謳いました。そして三本柱の一つが、「安全保障と宇宙産業の発展の好循環の実現」なのです。民間の力を宇宙安全保障に生かしていくことは、米国も同様の方向に大きく舵を切っておりますが、日本もこれを明確にしました。弊所は、産業界のプラクティスを拝見している観点等からこの第三の柱について意見を述べることが出来ました。いよいよ我が国の宇宙利用の将来的な姿として発表されたアーキテクチャが実装されていく段階にありますので、民間のサポートを頑張りたいと思っています。
https://www8.cao.go.jp/space/anpo/kaitei_fy05/anpo_fy05.pdf
宇宙政策委員会 基本政策部会輸送小委員会委員として
昨年「宇宙戦略基金の創設」や、令和5年度補正予算において3000億円もの基金が宇宙分野に確保されたこと等を報道で目にされた方も多かったのではないかと思います。これは、令和5年6月の「宇宙基本計画」に関する閣議決定と、同年11月の「デフレ完全脱却のための総合経済政策」の閣議決定の中で、市場拡大が期待される宇宙分野について、宇宙基本計画に基づき新たに宇宙技術戦略を策定するなど、宇宙政策を戦略的に強化するとともに、JAXAに10年間の「宇宙戦略基金」を設置し総額1兆円規模の支援を行うことを目指すとされたことに基づきます。
技術分野の柱は①輸送(ロケットのことです)②衛星等③探査等の三つで、私は上記の小委員会で、①ロケット政策について「宇宙技術戦略」を検討する機会を頂きました。宇宙戦略基金は、この技術戦略を実装するために使われることになりますので、日本の戦略的な宇宙政策の為に大変重要な議論となります。現在第一弾である3000億円の使い道についてテーマが発表されておりますが、今後も第二弾、第三弾が続くことになります。一兆円もの基金が投じられたとき、この産業に何が残るのか、議論に加わった身としてしっかりと見届けたいと思っています。
宇宙政策委員会 宇宙活動法見直しに関する小委員会について
宇宙活動に関する我が国の許認可法である「人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律」、通称「宇宙活動法」は平成30年11月15日に施行されてから丸5年が経過し、同法附則第5条に基づき、同法の施行状況について検討を加え、改正の必要がないか見直す時期となりました。この見直しについては、弊所で「主要国における宇宙活動法に関する調査」を受託し、私も政府関係者や民間事業者、そしてアカデミアの先生方と多くの議論を重ねて参りました。今般、正式に小委員会が立ち上がることが先週決定され、私も委員を拝命する運びになりました。5年に一度の大改正が行われる可能性がございます。アカデミアの先生方に混ざり、民間実務家としてしっかりと産業界の声を伝えて参りたいと思っております。
https://www8.cao.go.jp/space/comittee/dai114/gijisidai.html
最後に
この一年も色々なイベント等に登壇させて頂きました。英国宇宙庁主催のイベントもありましたし、宇宙に閉じていないスタートアップやディープテックのイベント、半導体のイベントでも話をする機会を頂きました。
異色なところでは、今年6月、知的財産高等裁判所主催の勉強会で「宇宙ビジネスにおける知財戦略」のお話を、多くの裁判官向けにお話させて頂きました。まだ裁判所に持ち込まれない宇宙ビジネスの話を、ビジネスコートの裁判官の皆様が大変熱心に聞いてくださいました。この知財×宇宙についてはいくつか直近でも弊所で論文を執筆しておりますので、是非ご覧いただきたいと思います。
https://www.ip.courts.go.jp/documents/thesis/vcmsFolder_1734/vcmsFolder_1874/vcms_1874.html
また、昨年クリスマス発売のForbes JAPAN(2024年2月号)では、表紙及びカバートークに出して頂きました。知識層の皆様に、「宇宙は特別な場所ではない」「宇宙は人間の次の活動領域として、ビジネスの場になるのだ」ということを、少しでも伝えて行けたらと考えています。
今年は、改正のお話もありますし、こまめにブログ記事を上げたいと思いますので、引き続きどうぞ宜しくお願い致します。以上
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