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【宇宙ブログ】米国商業宇宙打上げ法及び連邦規則集第14編第3章の概要
2025.02.28
はじめに
宇宙開発において圧倒的な勢いを持つ米国において、打上げ、再突入等の宇宙活動を主に規律しているのが、米国商業宇宙打上げ法(以下「本法」といいます。)です。米国において、打上げ等の宇宙活動を行うにあたっては、本法や、本法に基づいて制定された連邦規則集第14編第3章(以下「本章」といいます。)の内容を十分に把握する必要があります。
そこで、本稿では、本法及び本章に関する概要をご説明いたします。
米国商業宇宙打上げ法の概要
米国商業宇宙打上げ法(U.S. Commercial Space Launch Act)は、1984年に制定された米国等における打上げ等の宇宙活動を規律する法律であり、2015年に大きな改正がありました。
(1)本法の目的
本法の目的の概要は、以下のとおりです(本法第50901条第(b)項)。
①経済成長と事業活動の促進
②一定の方法による米国の民間部門による打上げ機、再突入機及び関連サービスの奨励
③商業打上げ及び再突入活動の実施の監督、免許及び許可の発行等
④米国の宇宙輸送システムインフラの許可及び拡大の容易化
(2)本法の規定内容
本法の中核的な内容の1つは、上記③の目的に関連する、免許及び許可制度の確立です。本法は、一定の要件を満たすロケットやサブオービタル機等の打上げ若しくは再突入、又は一定の要件を満たす打上げ場若しくは再突入地点の運営には、免許又は許可が必要である旨規定しています(本法第50904条第(a)項)。
また、本法は、以下を含む様々な事項について規定しています。
・免許の申請及び要件(第50905条)
・免許人の活動に対する監視活動(第50907条)
・免許の有効期間並びに変更、停止及び取消し(第50908条)
・一定の要件を満たす打上げ等の制限(第50909条、第50911条)
・免許人等の責任保険の加入又は賠償資力の実証の要件(第50914条)
連邦規則集第14編第3章の概要
連邦規則集(Code of Federal Regulations)は、連邦政府の行政部門及び機関により公表されている規則です。このうち、米国商業宇宙打上げ法に基づいて制定された規則が、連邦規則集(Code of Federal Regulations)第14編第3章(本章)であり、本法の内容の一部を詳細化しています。
(1)本章の構成
本章は、以下のとおり、3つの節(subchapter)から構成されます。
第A節:総則(General) 第B節:手続き(Procedure) 第C節:免許付与(Licensing) |
この中でも特に重要であると考えられるのが、免許付与について定める第C節です。
(1)第C節の構成
第C節は、一定の要件を満たす打上げ機の打上げ、打上げ場若しくは再突入地点の運営、又は再突入機の再突入に係る免許及び許可制度等を定めています。具体的には、第C節は、以下の部(Part)から構成されています(タイトルが「保留(Reserved)」とされており、規定が存在しない部は除きます。)。
部数 |
部のタイトル |
第413部 |
免許申請手続 |
第414部 |
安全要素承認 |
第415部 |
打上げ免許 |
第417部 |
打上げ安全 |
第420部 |
打上げ場運営免許 |
第431部 |
再使用型打上げ機(RLV)の打上げ及び再突入 |
第433部 |
再突入場運営免許 |
第435部 |
再使用型打上げ機(RLV)以外の再突入機の再突入 |
第437部 |
実験的許可 |
第440部 |
財政的責任 |
第450部 |
打上げ及び再突入免許要件 |
第460部 |
有人宇宙飛行要件 |
例えば、米国におけるロケットやサブオービタル機の打上げや再突入には、第450部の機体運用者免許(vehicle operator licenses)又は第437部の実験的許可(experimental permits)が必要となる場合があります(なお、打上げ及び再突入については、これらの免許又は許可で取り扱われることとなったため、現在、第415部、第431部又は第435部の免許は申請できません。)。
また、米国において、打上げ場を運営するための免許として第420部の打上げ場運営免許が、再突入地点を運営するための免許として第433部の再突入地点運営免許が存在します。
米国において、ロケットやサブオービタル機の打上げや再突入等の宇宙活動を行う際には、米国商業宇宙打上げ法や連邦規則集第14編第3章の内容を踏まえた上で、そもそも免許又は許可が必要となるのか、及びどの免許又は許可を取得する必要があるか検討することが重要です。
おわりに
本稿では、米国の米国商業宇宙打上げ法及び連邦規則集第14編第3章の概要を簡単にご説明させていただきました。米国の宇宙ビジネスの発展に伴い、これらの法令の重要性も今以上に増していくのではないかと存じます。
これらの法令の分量は莫大であり、本稿で取り上げることのできなかった内容が多数記載されています(通読するだけでも、とても長い時間がかかります。)。これらの法令についてのより詳細な内容については、弊所の宇宙航空チームが作成した以下の資料をご参照いただけますと幸いです。
①打上げ及び再突入に係る制度
資料1-2 打上げ及び再突入に係る主要国の宇宙法制度
②サブオービタル飛行及び打上げに係る制度
資料1-2 サブオービタル飛行及び打上げに係る主要国等の宇宙法制度
③スペースデブリ等に係る制度
資料1-2 スペースデブリ等に係る主要国の宇宙法制度
④免許に関連する事項、事故報告制度
資料1-2 主要国のその他の宇宙法制度
⑤有人宇宙飛行制度
資料1-2 米国及び英国の有人宇宙輸送制度
なお、これらの資料は、宇宙政策委員会の下に設置された「宇宙活動法の見直しに関する小委員会」の資料として公開されているもので、同小委員会において私がこれらの資料を用いて委員の皆様にご説明を申し上げた次第です。
現在、米国において上記の免許制度、特に第450部の機体運用者免許に係る制度の見直しについて議論が行われており、米国の宇宙活動に係る法令を理解するためには、常に最新情報をキャッチアップする必要があります。
本稿に関し、ご不明点やさらに詳しい情報をご希望の方は、お気軽に弊所宇宙航空チームまでお問い合わせください。
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