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【労働法ブログ】第1回 日本版DBS(こども性暴力防止法)の解説 ― 元厚生労働省の弁護士による制度内容・実務対応の解説 ―
2025.03.06
令和6年6月19日に「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」(こども性暴力防止法)が成立した(施行日は令和8年12月25日までの間で政令で定める日)。
こども性暴力防止法は、「学校設置者等」や認定を受けた「民間教育保育等事業者」に対し、「教員等」や「教育保育等従事者」の性犯罪前科の確認や、「教員等」や「教育保育等従事者」による児童対象性暴力等の防止等の措置を講じることなどを求めている。
そのため、これら事業者においては、こども性暴力防止法施行までの間に、防止措置を念頭においた事前準備や犯歴確認・情報管理の体制整備を行っておく必要がある。同法施行は令和8年12月頃になる見込みであるが、同法においては、施行日又は認定日で現職である者(施行時現職者/認定時現職者)についても性犯罪前科の確認を行い、児童対象性暴力等が行われるおそれ有りと認められる場合は防止措置を行わなければならないため、主に労働関係法令の規制との関係で、施行前の採用活動の段階から、同法対応を見据えた準備をしなければならない。
本連載(第1回~第6回を予定)では、日本版DBS(こども性暴力防止法)について、制度の内容を解説するとともに、現段階で対応しておくべき実務対応を解説することとする。
本稿(第1回)では、日本版DBSの概要について解説する。
[日本版DBSの概要]
DBSとは
イギリスでは、基本的に職種に関わらず使用者が被用者の犯歴照会を求めることができることとされており、特に子どもに関わる職業又は活動を行う使用者においては、子どもに対する性的虐待等の犯罪歴がある者を使用することは犯罪とされているため、被用者の犯歴照会を行う必要がある。
DBSとは、イギリスの「Disclosure and Barring Service」(前歴開示・前歴者就業制限機構)の略称であり、被用者の犯歴開示等を行う組織である。
DBSの概要については、「イギリス・ドイツ・フランスにおける犯罪歴照会制度に関する資料」(令和5年6月27日こども関連業務従事者の性犯罪歴等確認の仕組みに関する有識者会議第1回会議配布資料8)にまとめられている。
日本版DBSとは
日本版DBSとは、「学校設置者等」や認定を受けた「民間教育保育等事業者」に対し、「教員等」や「教育保育等従事者」の性犯罪前科の確認や、「教員等」や「教育保育等従事者」による児童対象性暴力等の防止等の措置を求める制度である。
令和6年6月19日に成立した「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」(こども性暴力防止法)に基づく制度であり、イギリスのDBSを参考に導入された制度であるため、日本版DBSと言われている。
日本版DBSの制定経緯
日付 |
概要 |
令和2年12月25日 |
第5次男女共同参画基本計画(閣議決定) 「教育・保育施設等や子供が活動する場(放課後児童クラブ、学習塾、スポーツクラブ等)において、子供に対するわいせつ行為が行われないよう、法令等に基づく現行の枠組との関係を整理し、海外の法的枠組も参考にしつつ、そこで働く際に性犯罪歴がないことの証明書を求めることを検討するなど、防止のために必要な環境整備を図る。」 |
令和3年5月28日 |
教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律(わいせつ教員対策法)の成立 (児童生徒性暴力等を理由として教員免許状が失効した者のデータベースの整備等) |
令和3年12月21日 |
こども政策の新たな推進体制に関する基本方針(閣議決定) 「こどもの性的搾取を防止するための政府の取組を中心的に担う とともに、教育・保育施設等やこどもが活動する場(放課後児童クラブ、学習塾、スポーツクラブ、部活動など)等において働く際に性犯罪歴等についての証明を求める仕組み(日本版DBS)の導入に向けた検討を進める。」 |
令和4年6月8日 |
児童福祉法等の一部を改正する法律の成立 (児童生徒性暴力等を行った保育士について、登録取消しや再登録の制限などの資格管理の厳格化に関する規定を整備) |
令和5年4月1日 |
こども家庭庁の設置 |
令和5年6月27日 |
「こども関連業務従事者の性犯罪歴等確認の仕組みに関する有識者会議」の議論開始(全5回) |
令和5年9月12日 |
|
令和6年3月19日 |
こども性暴力防止法案の国会提出 |
令和6年6月19日 |
こども性暴力防止法の成立 |
日本版DBSの全体像
※こども家庭庁HP「概要・参考資料」をもとに弊所作成
以上
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