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【Immigration Blog①】PGの紹介&知らなかったではすまない! 不法就労助長罪
2021.07.12
【Immigrationプラクティスグループ】及び【Immigration Blog】のご紹介
昨年来、新型コロナウイルス感染症のまん延とその対応としての入国制限により、人々の出入国や外国人の雇入れが一時的に減少しました。しかし、今後日本人の人口は下降の一途をたどることが予想されているため、外国人人材の起用や、外国への進出(とそれに伴う社員の派遣)の検討は、日本社会にとって、引き続き喫緊の課題であると思われます。そこで、TMI総合法律事務所では、これまでに外国籍・日本国籍の方々の出入国や、外国籍従業員の雇入れに関する多岐にわたるご相談対応で培った多くの知識・ノウハウを活かして企業の皆様に最適なアドバイスを提供させていただくべく、【Immigrationプラクティスグループ】を創設するとともに、【Immigration Blog】をスタートさせます。
Immigrationプラクティスグループは、入管法等に関する案件を取り扱う弁護士及び専門パラリーガル(行政書士を含む)で構成されており、弁護士と専門パラリーガルのコンビネーションにより、効率よく正確なサービスを提供させていただいております。なお、当グループにて日頃取り扱っているケースは例えば以下のとおりです。
- 在留資格認定証明書交付、在留期間取得・更新・変更、永住許可、帰化、資格外活動許可等の各種申請
- オーバーステイ対応
- 二重国籍に関するご相談
- 米国その他各国のビザ・在留資格取得サポート
- 外国人技能実習制度に関するご相談対応(監理団体・受入企業)
・送出機関と締結する協定書の作成等
・当局対応(外国人技能実習機構)
・外国人技能実習生と締結する契約書の作成等
・外国人技能実習生支援サービス提供企業と締結する契約書の作成等
・その他外国人技能実習法に関するご相談対応 - 新在留資格「特定技能」に関するご相談対応(登録支援機関・受入機関)
・登録支援機関の登録申請
・登録支援機関・受入機関間で締結する契約書の作成等
・特定技能人材支援サービス提供企業と締結する契約書の作成等
・その他「特定技能」に関するご相談対応 - 外国人雇用デューディリジェンスの実施
・入管法その他関連法令の違反の有無の確認 - 入管法等に関する刑事事件対応(不法就労助長罪等)
- 外国人雇用にかかるご相談一般
そして、この【Immigration Blog】では、会社が外国籍の人材を入国させ、又は雇用する、あるいは日本国籍者が海外で勤務・移住する際に生じる法的問題点を中心に、入管法等に関する多くのテーマを取扱い、皆様にわかりやすくご説明させていただければと思います。
第1回である本稿では、昨今案件数が激増している不法就労助長罪に関して、ご説明いたします。
知らなかったではすまない!激増する不法就労助長罪
皆様は、「不法就労助長罪」という言葉を耳にしたことがありますか。
昨今、外国人を不法就労させたとして会社役員等が不法就労助長罪で逮捕・起訴されたといったニュースが頻繁に報道されておりますが、この不法就労助長罪は、犯罪の一つであり、有罪と判断されれば刑事罰(3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又はこの併科(会社は罰金のみ))が科されることになります。現に、先日、不法滞在中の外国人複数名をUber Eatsの配達業務に従事させ、不法就労を助長させたとして、運営元のUber Japanに加えて、同社の当時の日本の代表者とコンプライアンス部門統括者が不法就労助長罪の容疑で書類送検されたとの報道がなされており、違反が発覚した際に会社及び役員等が受ける制裁は甚大なものといえます。また、外国人本人は退去強制になって将来の日本入国も難しくなる可能性が高く、その不利益も甚大です。
そして、不法就労助長罪のリスクは、外国人を雇用している会社等に漏れなく潜んでいるリスクであり、「まだ気がついていないだけ」という可能性も十分にあります。
そこで、不法就労助長罪(出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」といいます。)73条の2)について簡単に解説します。
主として問題になることが多い、入管法73条の2第1項第1号の不法就労助長罪の構成要件は、以下の2つです。
①事業活動に関し
②外国人に不法就労活動をさせた者
上記②につき、外国人が不法入国者や不法残留者等である場合のほか、外国人の業務内容が当該外国人の在留資格で認められている範囲を超えている場合には、「不法就労活動」に該当します。
次に、不法就労活動を「させた」とは、外国人との間で何らかの対人関係上優位に立っており、外国人が自己の指示どおり不法就労活動に従事する状態にあることを利用して積極的に働きかけ、そのことにより外国人が不法就労活動に従事するに至ったことを意味するため、典型的な例としては、雇用主又はその従業者で監督的立場にある者が外国人を使役して不法就労活動に従事させることが挙げられますが、雇用関係のない派遣先企業や委託元企業であっても、実際に外国人を指揮命令した程度によっては、これに該当する可能性があります。
また、「知らなかったではすまない!」点は、不法就労助長罪の大きな特徴の一つです。すなわち、法律上も、当該外国人の活動が不法就労活動等に該当することを知らないことを理由として処罰を免れることができないと規定されており(入管法73条の2第2項本文)、真に知らなかった場合であっても免責されません。もっとも、「過失のない」場合のみ、処罰を免れることができますが(同項但書)、「過失」とは、確認に当たって尽くすべき手段をすべて尽くさなかったことを意味するため、不法就労活動でないことを確認するための手段(在留カードの記載内容の確認等)を何ら講じていなかった場合には、無過失とはいえず、免責されないことになります。
不法就労助長罪頻発事例
不法就労助長罪が頻発しているケースとしては、例えば以下の3つが挙げられます。
特に①及び②のケースは、近年弊所でも刑事手続の対応実績がありますし、適法性確認のご相談を受ける頻度も少なくありません。
①「技術・人文知識・国際業務」の濫用
②外国人技能実習制度の悪用
③資格外活動許可の範囲を超えた就労
まず、①について、就労が認められる在留資格のうち、「技術・人文知識・国際業務」は、通称「ギジンコク」と呼ばれ、広く活用されている在留資格ですが、実態としては、不法就労活動の温床になっていることが多く、近年摘発事例が増加傾向にあります。「ギジンコク」はいわゆるホワイトカラーを想定した在留資格であるため、小売業、飲食業、宿泊業等で主に接客業務に従事させる場合は、a.それが企業における研修の一環であってその業務に従事するのは採用当初の時期にとどまる場合や、b.外国人顧客が多く、主として通訳・翻訳業務を行っていると評価される場合等でない限り、基本的には「ギジンコク」に認められた活動の範囲を逸脱しているものと考えられます。
次に、②について、近年、技能実習生の劣悪な就労環境・条件が社会的に問題になっていますが、その一類型として、技能の実習として許容される作業範囲を超えて業務に従事させて低賃金の労働力としているケースが頻発しています。この場合に不法就労助長罪に問われる可能性があることはもちろんですが、技能実習生を受け入れている会社に違法行為があり、悪質性が高いと判断された場合には、技能実習計画の認定が取り消され、これに伴って技能実習生や「特定技能」の在留資格を有する外国人の受入れが5年間できなくなります。
最後に、③について、原則として就労が認められていない在留資格(例えば、「留学」や「家族滞在」)においても、資格外活動許可を得ることにより、週28時間(「留学」の場合、教育機関の長期休業期間中は1日8時間以内)までの就労活動を行うことが可能ですが、この制限時間を超えてしまっている事例も多く見受けられ、摘発件数が増えています。
以上のとおり、近年、摘発件数が激増している不法就労助長罪は、外国人を雇用している会社等であれば漏れなくリスクを負っていますので、皆様の会社におかれましても、外国人を雇用されている場合には、就労活動内容が在留資格の範囲内であるかについて早急にご確認頂くことをお勧めいたします。
【Immigration Blog】の第1回は以上となりますが、今後も入管法等に関するテーマにて定期的に発信していきたいと考えておりますので、第2回以降もぜひご一読いただけますと幸いです。