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障害者差別解消法の概要
2024.06.25
【障害福祉】障害者差別解消法(1)
「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(以下「障害者差別解消法」といいます。)の改正法が、2024年4月1日に施行されました。改正法では、これまで民間事業者には努力義務とされていた障害者への合理的配慮の提供が法的義務とされたため、民間事業者には大きな影響があります。
そこで、障害者差別解消法等の障害福祉関連の法律について、シリーズで本ブログに連載します。
初回は、障害者差別解消法の概要をご説明します。
障害者差別解消法とは
- 目的
障害のある人もない人も、互いに、その人らしさを認め合いながら共に生きる社会を作ることを目指すべく、障害者差別解消法が、2016年4月1日に施行されました。
障害者差別解消法は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本的な事項、行政機関等及び民間事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置等を定めることにより、障害を理由とする差別の解消を推進し、もって全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的としています(1条)。
- 概要
障害者差別解消法は、前記1の目的を実現するため、行政機関等及び民間事業者に対し、主に以下の3つの義務を課しています。
①環境の整備(5条)
②不当な差別的取扱いの禁止(7条1項、8条1項)
③合理的配慮の提供(7条2項、8条2項)
環境の整備とは
障害者差別解消法5条は、行政機関等及び民間事業者に対し、個々の障害者に対して必要かつ合理的な配慮を的確に行うため、自ら設置する施設の構造の改善等、必要な環境の整備を行う努力義務を課しています。環境の整備は、不特定の障害者を対象として行われる事前的改善措置です(これに対し、後述する合理的配慮は、個別の場面で個別の障害者に対して行われるものです。)。
不当な差別的取扱いの禁止とは
- 概要
障害者差別解消法は、7条1項において行政機関等による不当な差別的取扱いの禁止を、8条1項において民間事業者による不当な差別的取扱いの禁止をそれぞれ規定しています。
- 差別の内容
障害者差別解消法7条1項及び8条1項の「差別」については、定義等は特に設けられていません。
もっとも、内閣が作成した「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」(以下「基本方針」といいます。)においては、同法7条1項及び8条1項が定める「不当な差別的取扱い」として、正当な理由なく、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否する又は提供するに当たり、場所・時間帯等を制限したり、障害者でない者に対しては付けない条件を付けたりすること等により、障害者の権利利益を侵害することを禁止するとされています。
したがって、障害があることだけを理由に入店を拒否したり、交通機関の利用を拒否したりすることは、不当な差別的取扱いとして禁止されることになります。
※基本方針:
https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai/kihonhoushin/r05/pdf/honbun.pdf
合理的配慮の提供とは
- 概要
障害者差別解消法は、7条2項において行政機関等による合理的配慮の提供を、8条2項において民間事業者による合理的配慮の提供をそれぞれ規定しています。
改正法の施行日(2024年4月1日)以降は、努力義務にすぎなかった民間事業者による合理的配慮の提供義務が、法的義務となりました。
- 合理的配慮の内容
障害者差別解消法7条2項及び8条2項の合理的配慮についても、定義等は特に設けられていません。これは、合理的配慮が、障害の内容・状態・特性等や、社会的障壁の除去が求められる具体的な場面・状況に応じて異なるとともに、技術の進展、社会情勢の変化等によって変わり得る個別性が高いものであるためです。
内閣が策定した基本方針においては、合理的配慮の具体例として、車椅子利用者のために高い所に陳列された商品を取って渡すなどの物理的環境に係る対応を行うこと、障害の特性に応じた休憩時間の調整や必要なデジタル機器の使用の許可等のルール・慣行の柔軟な変更を行うこと等の例が挙げられています。
罰則等
民間事業者が、障害者差別解消法に基づく不当な差別的取扱いの禁止や合理的配慮の提供義務に違反した場合、直ちに罰則等が課されるわけではありませんが、特に必要があると認めるときは、主務大臣(当該事業者の事業を所管する大臣又は国家公安委員会)が当該事業者に対し、報告を求めたり、助言、指導、勧告をしたりすることができます(12条)。
その上で、当該事業者が、主務大臣が求める報告を行わず、又は虚偽の報告をしたときは、20万円以下の過料に処せられることになります(26条)。
次回は、障害者差別解消法の対象となる「障害」の種別について、具体例を交えながらご説明する予定です。