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【宇宙ブログ】宇宙天気予報
2022.08.03
はじめに
日本列島、猛暑日が続いていますね。週間天気予報は晴れマーク、気温も30度以上が並んでいます。3年後、もしかすると、テレビでも宇宙天気予報を目にすることになるかもしれません。
先日、総務省は、「宇宙天気予報の高度化に関する検討会報告書 『文明進化型の災害』に対応した安全・安心な社会経済の実現に向けて」という報告書を公表しました。
(https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01tsushin05_02000047.html)
今回の宇宙ブログでは、太陽活動が与える影響と宇宙天気予報について書きたいと思います。
太陽活動と地球への影響
太陽の表面では、フレアと呼ばれる爆発が発生します。太陽活動が活発化すると、このフレアによって強い電磁波や放射線が放出され、太陽風の活動によって、高エネルギーの粒子が地球に到達することがあります。
私たちが生きる地球は、巨大な磁場(地球磁気圏)によって包まれており、宇宙からの粒子の侵入を防止しているので、普段はあまり太陽活動による影響を身近に感じないかもしれませんが、地球の極域で見ることができるオーロラは、強く吹いた太陽風によって、普段は地球磁気圏により地表に届かないプラズマ粒子が極域から地球の大気圏に侵入し、地球の大気と反応して発光してできたもので、まさに太陽活動によるものです。
このような美しい自然現象を見せてくれる太陽活動ですが、時には、私たちの社会経済活動に多大な影響を与える可能性があるとされています。
現に、2003年、磁気嵐により、日本の観測衛星を含む多数の衛星障害が発生し、2010年には、米国の衛星が帯電の影響で9か月間停止したりしたそうです。
このような太陽活動は約11年周期で活発化するとされており、次に太陽活動が活発化するのが2025年ごろと推測されています。
そこで急がれているのが宇宙天気予報の高度化です。
宇宙天気予報とは
宇宙天気予報とは、簡単にいうと、地球に影響を与える可能性のある太陽活動についての予報をいい、既に、国立研究開発法人情報通信研究機構(「NICT」)では、太陽活動や電離圏、磁気圏を観測・分析し、宇宙天気予報をインターネットで公開しています。
私たちの社会経済活動を安定的に維持していくためには、宇宙天気を予報し、事前にリスクに備える必要があるとのことから、宇宙天気予報の高度化が求められているのです。
2025年の最悪のシナリオと提言
さて、次に太陽活動が活発化するのが2025年ごろと推測されています。
前回、太陽活動が活発だった2012年には、太陽では大規模なコロナ質量放出が発生したものの、地球とは反対側で発生したため地球は特段の影響を受けませんでしたが、次の周期に備えるべく、2022年6月21日、総務省は、「宇宙天気予報の高度化に関する検討会報告書 『文明進化型の災害』に対応した安全・安心な社会経済の実現に向けて」という報告書を公表しました。
(https://www.soumu.go.jp/main_content/000821116.pdf)
報告書では、「極端な宇宙天気現象がもたらす最悪のシナリオ」を策定し、最悪の場合、次の事象が生じるとされ、以下のような提言(骨子)が示されました。
「宇宙天気予報の高度化の在り方に関する検討会」報告書概要
(https://www.soumu.go.jp/main_content/000820488.pdf)
2025年といえば、わが国では、小型衛星を多数配置させ、コンステレーションを構築して、大規模災害等があった際に、夜でも、雨や雪が降っていても、宇宙から被災状況を迅速に把握できるようにしようという宇宙計画を策定しており、小型衛星がいよいよ我々のインフラとなる時代の到来です。
既に、Space Xが小型衛星を多数配置してコンステレーション計画を実施し、今年2月にウクライナに衛星通信網を提供したのは有名な話で、他にも続々とコンステレーションが構築されつつあります。
そんな中、もし、太陽活動が活発化し、人工衛星に影響を与えてしまって障害が発生したり、また、人工衛星が喪失したりしたらどうなるでしょうか。コンステレーションそのものが起動しなければ、インフラとしての意味がありません。
太陽活動がいつ、どのような状況にあるのか、高い精度での宇宙天気予報を行い、太陽活動により通信衛星を使えない場合のバックアップ体制を構築することが重要になってくるというわけです。
おわりに
太陽は、私たち地球上の生物にエネルギーを与え、そしてオーロラのように美しい自然現象をも見せてくれますが(私はまだ実際には見たことはありませんが)、時には、私たちの社会経済活動に大きな影響を及ぼすような試練を与える存在です。私たちに試練を与えるのは、まさに「母なる太陽」だからでしょうか。
2025年といえば、あと3年しかありません。宇宙天気予報への知見を深めるとともに、私も太陽のように、母として、時には我が子に大きなチャレンジの機会を与えてみようと思いました。
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