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【シンガポール】シンガポールにおける法人の実質的所有者の情報登録
2021.03.29
実質的所有者の情報登録の開始
シンガポールの会計企業規制庁(ACRA)は、2021年2月1日、法令により求められる法人等の「実質的所有者(Registrable Controller)」の情報登録について、オンライン登記情報管理システムであるBizFile+のウェブサイトを通じて、同日から行うことができようになったと公表しました。
実質的所有者とは
「実質的所有者(Registrable Controller)」とは、法人や有限責任事業組合にとって「重要な利害関係」又は「重要な支配権」を有する個人又は法人をいいます。
たとえば株式会社の場合、(i)法人の株式の25%超を有する場合や、(ii)法人の議決権の25%超を有する場合には、「重要な利害関係」を有するとされています。
また、(i)取締役会において、議決権の過半数を有する取締役を選任又は解任する権利を直接的又は間接的に有する場合、(ii)株主総会の決議事項について25%超の議決権を直接的又は間接的に有する場合、又は(iii)法人に対して重要な影響又は支配権を行使する権利を有する場合もしくは実際に行使する場合には、「重要な支配権」を有するとされています。
実質的所有者の名簿保管義務
シンガポールでは、BizFile+の登記情報として、法人の名称や登録住所、取締役の氏名等に加えて、株主の情報(氏名・名称)も記録され、だれでも申請すればこれらの情報を取得することができます。
もっとも、取締役や株主は名目的なものであることも多く、法人の実態が明らかではないため、かねてから、そのような法人がマネーロンダリング等の非合法的な目的に利用される可能性が指摘されていました。
そこで、法人の透明性を高め、シンガポールの金融ハブとしての地位・信頼性の向上を図るため、2017年3月31日以降、シンガポールの法人、外国会社、有限責任事業組合(LLP)は、登記上の住所又は会計事務所に実質的所有者の情報を記載した名簿(Register of Registrable Controllers: RORC)を保管することが義務付けられました。
なお、RORCに記載すべき事項は、以下のとおりです。
ACRAへの登録義務
前述の名簿保管義務に加えて、2020年7月30日以降、同じ情報をウェブサイトを通じてACRAに登録することが義務付けられました。これにより、ACRAは各法人の実質的所有者に関する情報を一元的に管理することができ、より透明性を確保できるようになりました。
このACRAへの登録期限は当初、2020年9月29日とされていましたが、新型コロナウィルス感染症の影響やシステムの大規模な更新等もあり、2021年6月30日までに延長されています。
免除規定
RORCの名簿保管義務及びACRAへの登録義務は、原則として、すべてのシンガポール法人、外国法人及び有限責任事業組合(LLP)が負いますが、以下のいずれかに該当する場合には、これらの義務が免除されます。
登録情報へのアクセス
実質的所有者が誰であるかは、企業にとって秘匿性の高い情報であり、ACRAへの登録情報がどのように利用・公開されるかは関心の高いところです。
この点についてACRAは一定の配慮を行っており、マネーロンダリングの調査など、法の執行・強制を目的とする法執行機関のみが情報にアクセスすることができ、一般公衆によるアクセスは認めないことを明確にしています。
今後について
以上のとおり、すべてのシンガポール法人、外国法人及び有限責任事業組合(LLP)は、前述の免除される場合に該当しない限り、2021年6月30日までに、実質的所有者についての情報をACRANに登録しなければいけません。
仮に、この登録期限を徒過すると5,000シンガポールドルの罰金が課される可能性がありますので、ご注意ください。
また、実質的所有者の登録情報に変更があった場合には、2営業日以内に更新する必要があり、更新懈怠にも罰金が課される可能性がありますので、今後も留意が必要です。
以上
※本稿は一般的な法令情報を提供するものであり、シンガポール法に関するアドバイスや法的意見を提供するものではありません。