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【IPOブログ】IPO準備への弁護士の関わり方
2024.11.15
IPOプラクティスグループ立ち上げ
近時の株式市場は、日経平均がバブル崩壊後の最高値を更新するなど活況の様相を呈しております。IPO社数はコロナ禍以降も2022年に91社、2023年に96社と堅調に推移している一方で、近年、上場直後の業績下方修正や不正の発覚が相次いだことから、上場審査の厳格化が進んでいます。
当事務所では、IPOに関する最新の動向をキャッチアップし、他のIPO支援の専門家とも連携しながら、クライアントのIPOの実現のために適切なアドバイスを行えるよう、「IPOプラクティスグループ」を組成しましたので、どうぞよろしくお願いいたします。
IPOとは何か、IPO審査とは何か
IPO、株式公開とは、その会社の株式が証券取引所に上場し、誰でも株式を株式市場において自由に売買できるようになることをいいます。
誰でも株式を売買できるということの大前提として、その会社は、投資家が安心して投資できるような会社でなくてはなりません。
IPOを実現するためには、そのような投資家が安心して投資できる会社かどうか、上場会社として相応しい会社かどうかの審査として、主幹事証券会社による引受審査を経て、証券取引所による上場審査をクリアする必要があります。
IPOの流れと弁護士の関わり方
IPOスケジュールについては、すでに会計事務所やコンサルティング会社等により数多くの詳細な解説がなされているため、ここでは一般的な説明は省略し、弁護士の関わり方についてご説明します。
IPO準備においては、審査項目に法務が関連する事項が多々あるため、様々な場面で弁護士が関与します。
最も多い関与としては、直前期(N-1)に実施される主幹事証券会社による引受審査において、法務に関連する質問、指摘がなされ、これに対するアドバイス、法律意見書の作成、指摘事項に対する改善策の策定等です。引受審査においてはタイトな回答期限を設定され、これに対応できるかどうかは上場後の適時開示への対応力にも関わるところですので、スピーディーに対応する必要があります。
近時では、直前々期(N-2)の期首以前になされる監査法人によるショートレビューの結果を踏まえて、引受審査に先立ち主幹事証券会社から、外部弁護士を起用してセルフ法務DDを実施することを求められるケースも増えてきています。
また、特定の顧問の法律事務所がいないような場合には、IPOに関する法務に詳しい法律事務所をアサインすることを勧められることもあります。紛争案件を抱えている場合、これを解決することが事実上の上場の条件とされてしまうケースもあります。日常的に顧問弁護士に相談ができる体制があれば、紛争の早期段階で上場スケジュールに支障が出ないように早期解決できる可能性があったものの、相談できる顧問弁護士不在のために紛争がこじれてしまい、結果的に上場スケジュールに支障が出るケースも見受けられます。
その他、社外取締役又は社外監査役として、弁護士を選任することを提案されることもあります。当該社外役員は、上場後は東証の求める独立役員の1人となることが期待されていることもあり、顧問弁護士ではなく、それまで取引実績のない弁護士が就任することが通常です。
なお、引受審査を無事にパスして上場申請後に実施される証券取引所による審査の中でも、近時では引受審査で問題にならなかった事項につき指摘を受けたり、上場申請後に元従業員等から不祥事に関する投書がなされることで審査がストップすることもあります。このような急遽の対応が求められる中で、弁護士が調査や改善策の策定に関与することもあります。
次回以降、証券取引所の審査基準を踏まえた具体的な審査内容、個別論点を紹介していきたいと思います。