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【TMI拠点紹介ブログ Vol.2】EU法務の最前線でEU規制・競争法を軸に、多様な法務ニーズへ対応 ―ブリュッセルオフィス―
2025.10.14
2024年10月1日、当事務所はEUの行政・立法の中心都市・ブリュッセルに新たに拠点「TMI Associates Europe S.R.L.」を開設し、同年12月1日より業務を開始いたしました。規制や競争法をはじめとする多様なEU法務に現地から対応し、日本企業の事業展開を支えるブリュッセルオフィス。その役割と展望をご紹介します。
EU法務の最前線に拠点を構える意義
ブレグジット以降のEU法のニーズが高まっています。これまで英国法だけで十分だった分野でも、今やEU法への対応が不可欠となっており、特にEU規制対応や競争法案件において、現地での直接的な対応が求められるケースが増加しています。さらに今後は、英国法とEU法の内容が一層乖離していくことが見込まれます。
そのため、英国法だけでなく EU法に関するリーガルサポートの需要はますます増大すると考えられます。
こうした背景を踏まえ、当事務所はロンドンオフィス及びパリオフィスに加えてブリュッセルに拠点を設立し、日系企業の欧州法務ニーズに直接応える体制を整えました。
ブリュッセルオフィスはEU本部やNATO本部に近接しており、国際機関や欧州規制当局とのやり取りを要する案件に迅速に対応できる点が大きな特色です。EU及びブリュッセルに拠点を有する法律事務所と密にコミュニケーションをとって情報のアップデートに努めております。
ブリュッセルという都市の特色
ブリュッセルは、ベルギー王国の首都であるのみならず、欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)など国際機関の本部が集結する「欧州の首都」としての役割を担う都市です。国際政治及び経済の中心として、外交官、国際機関職員、企業関係者らが多く集まり、多文化・多言語が共存するグローバルなコミュニティを形成しています。
公用語はフランス語及びオランダ語であり、街中では両言語表記が見られ、中心部では英語も広く通じます。世界遺産に登録されている「グラン=プラス」をはじめとする歴史的建造物が街の象徴である一方、美食の街としても知られ、ワッフル、チョコレート、ビールなど多彩な文化を楽しむことができます。
ブリュッセルオフィスは、ブリュッセル市内のルイーズ通りの143番に位置し、観光の中心からはそれほど遠くない位置ながらも落ち着いたオフィス街にあります。
欧州の多様な産業を支え、拠点間連携でクロスボーダー案件に対応
EU法を広く扱っており、競争法を得意な法令分野としつつ、他にも製造物・環境規制・AI法規制などを扱っております。再生可能エネルギー・蓄電池の分野については、EU規制法に関連する事項のみではなく、日本へのインバウンドの投資も得意としております。
クライアントは製造業をはじめ、蓄電池を含めたエネルギー関連企業、金融業・投資ファンドなど幅広く取り扱っております。
ブリュッセルはEUの行政・立法の中心であり、EU法制の策定・運用の最前線に位置しています。そのため、域内で活動する企業は、各加盟国の国内法だけでなく、EUレベルで制定される規則・指令に常時対応する必要があります。
特に競争法、製造物関連法、データ関連規制は日系企業に直接的かつ重大な影響を及ぼすため、当事務所としても重点的に注力しています。
競争法の分野では、欧州委員会によるカルテル規制や企業結合審査の厳格化が進んでおり、M&Aやジョイントベンチャーを含む日系企業の欧州展開においては、事前の戦略的検討が不可欠です。当事務所はこうした規制の最新動向を継続的にフォローし、実務に即したアドバイスを提供しています。
さらに、現地法律事務所との協働を通じ、欧州競争法など専門性の高い分野の案件に対応しています。また、Belgium-Japan Association and Chamber of Commerce(ベルギー日本協会兼商工会議所)などの業界団体を通じて、現地の政策・ビジネス動向に関する情報交換や意見交換を行っており、現地社会との関係の構築にも努めています。
また、工藤明弘弁護士がロンドンオフィスを兼務していることから、ブリュッセルとロンドンの両拠点は緊密に連携しています。さらに、当事務所はパリにも拠点を有しており、欧州三極の協働体制を通じ、域内のクロスボーダー案件にも一貫性と整合性を持って対応できる仕組みを整えています。
こうした体制と知見を活かし、ブリュッセル拠点を通じて、以下のような価値を提供してまいります。
(a) 日系企業への橋渡し
欧州における法規制は複雑かつ頻繁に改正が行われるため、日系企業にとっては理解及び対応が容易ではありません。ブリュッセルオフィスは、これらの規制環境を現地法律事務所と協同して分析し、分かりやすく整理したうえで提供することにより、クライアントが円滑かつ確実に現地での事業活動を推進できるよう支援します。
(b) 国際法務のハブ機能
当事務所は、ブリュッセルに加え、ロンドン及びパリにも拠点を有しており、これら欧州主要都市間で緊密に連携しています。その結果、欧州域内におけるクロスボーダー案件についても、一貫性と整合性を備えたリーガルサービスを提供することが可能です。これにより、クライアントは複数法域にまたがる事業展開においても安心してご相談いただけます。
(c) 規制対応の先導役
特に競争法規制といった日系企業にとって重要度の高い分野において、最新の立法・執行動向を適時に把握し、実務に即した的確なアドバイスを迅速に提示します。単なる法的リスクの指摘にとどまらず、企業活動の実情に即した実務的かつ戦略的なソリューションを提示する点を重視しています。
(d) 現地社会への貢献
当事務所は、地域社会との関係構築を不可欠と考えており、現地での文化交流や各種イベントへの参画を通じて、法務サービスの提供にとどまらない信頼関係を形成することに努めています。こうした取組みにより、日系企業と現地社会の双方に対して持続的な価値を提供することを目指しています。
今後の展望
(a) 欧州域内における日系企業の法務サポートの「第一窓口」に
ブリュッセルオフィスは、EU機関や各国規制当局に最も近接した地の利を活かし、日系企業にとって欧州における法務相談の最初の窓口となることを目指します。現地で発生する課題に対して迅速かつ的確に対応するとともに、必要に応じて域内外の拠点や提携先と連携することで、クライアントにとって最適なソリューションを一元的に提供できる体制を整備します。
(b) EU規制、特に競争法への対応力を強化し、企業の持続可能な成長を後押し
競争法、さらにデータ関連規制(AI法等)は、今後の日系企業の事業運営において不可避の課題となっています。ブリュッセルオフィスは、最新の規制動向を継続的に把握・分析し、単なるコンプライアンス対応にとどまらず、事業戦略に資する実践的なリーガルアドバイスを提供することで、企業の持続的成長と競争優位の確立を支援します。
(c) 他拠点との連携を深化させ、国際案件におけるクロスボーダー対応をさらに円滑化
ロンドン、パリをはじめとする他の欧州拠点、さらには東京オフィスを含むグローバルネットワークとの協働を一層強化することで、複数法域にまたがる案件に対しても整合性のあるアドバイスを提供します。これにより、国際取引、M&A、紛争解決、規制対応など、多様な分野におけるクロスボーダー案件の処理を円滑化し、クライアントに対してより充実したサービスを提供します。
今後は、欧州競争法(独占禁止法・企業結合規制)をはじめ、AI法を含むデータ関連法、再生可能エネルギー関連事業、知的財産法などの分野にも注力してまいります。
対象業種としては、製造業や自動車・電池関連産業(EV・水素)をはじめ、再生可能エネルギー・蓄電池・インフラ事業、デジタル産業(AI、プラットフォーム規制、データ保護)などを中心に、エンターテインメント・コンテンツ産業やスポーツ産業といった分野にも幅広く取り組んでいく予定です。
また、ブリュッセル発の情報発信を一層強化し、現地の規制動向を日本企業へタイムリーに提供してまいります。今後は、ブリュッセルオフィスから定期的にニューズレターを発行するとともに、欧州域内外の法律事務所や研究機関と連携し、共同出版やセミナー開催などの活動にも積極的に取り組んでまいります。
ブリュッセルオフィスメンバー コメント
ブリュッセルはEUの行政・立法の中枢であり、国際的な規制動向が日々形成される場所です。ここに拠点を構えることで、当局や現地の法律専門家との対話を重ね、文献やウェブ情報だけでは得られない実務運用のニュアンスを直接把握できる点に大きな意義があります。
EU法は複雑で改正も頻繁に行われるため、日系企業にとっては容易に対応できるものではありません。当オフィスでは、単に法的リスクを指摘するのではなく、実務に即した戦略的なアドバイスを重視し、クライアントの事業活動を円滑に推進できるよう伴走していきます。
また、クライアントと同じ土地に身を置くことで、課題や悩みを直接共有いただき、時差や距離に左右されず即応できることも拠点勤務の大きな強みです。日本と欧州をつなぐ橋渡し役として、現地社会との信頼関係を築きながら、日本企業のプレゼンスをさらに高めていきたいと考えています。