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フランス移民ルールが変わる!新たな市民教育試験を徹底解説
2026.02.02
近年、世界的に移民政策の見直しが進む中、日本でも外国人材の受入れ拡大に伴い、一定の日本語能力を求める動きが注目されています。2024年には技能実習制度に代わる新制度において、日本語能力の向上を重視する方針が示されるなど、言語能力と社会統合の関係が改めて問われています。
こうした動きはフランスでも同様です。2024年1月26日に成立した移民法により、新たに「市民教育試験(examen civique)」制度が導入されることになりました。そして2026年1月1日以降、フランスでの長期滞在を希望する一部の外国人にとって、この試験への合格が必須要件となります。
本記事では、この新制度の詳細について、実務的な観点から解説します。
市民教育試験って何?
市民教育試験は、フランス共和国の基本原則や価値観、政治制度、そして社会生活における権利と義務について、受験者の理解度を測る試験です。
具体的な試験形式は以下のとおりです。
- 形式:マークシート方式(QCM)
- 問題数:全40問(一般知識問題28問、状況判断問題12問)
- 選択肢:各問題につき4つ(正解は1つのみ)
- 試験時間:最長45分
- 実施方法:デジタル端末を使用
合格基準は厳格で、40問中32問以上の正解が必要です。つまり、80%以上の正答率が求められます。
誰が受験する必要があるの?
2026年1月1日以降、以下のいずれかを初めて申請する場合、この試験への合格が必須となります。
- 複数年滞在許可証(Carte de Séjour Pluriannuelle, CSP)の初回申請
- 居住許可証(Carte de Résident, CR)の初回申請
- フランス国籍取得(帰化申請)
対象となるのは、EU加盟国以外の国籍を持つ外国人です。
ただし、以下の場合は試験が免除されます。
- 複数年滞在許可証または居住許可証の「更新」を申請する場合
- 国際的保護(難民認定等)の受益者
- 法律で別途定められたその他の免除対象者(フランスの高等教育の修了者など)
ここで特に重要なのが、市民教育試験と「共和国統合契約(contrat d’intégration républicaine/CIR)」との関係です。「共和国統合契約」とは、フランス共和国とフランスでの持続的な滞在を希望するEU国籍以外の外国人との間で結ばれる契約で、フランス社会への統合やフランス語・フランス社会への理解を深めることを目的として2016年に導入されました。CIRの枠組みでは、フランス語研修や市民教育研修などが義務付けられます。CIRは、一定の種類の滞在許可証を申請する外国人に締結が課せられています。
フランス内務省の公式発表によれば、市民教育試験は「CIRの枠組み内で実施される」市民教育研修の修了試験と位置づけられています。つまり、CIRの一部として存在する制度なのです。
したがって、外国人の入国及び滞在並びに庇護権に関 する法典第L.413-5条に基づき、CIRの締結が免除されている滞在許可証の申請者は、制度の趣旨を踏まえれば市民教育試験の対象外となります。
CIRが免除される主な滞在許可証は以下のとおりです。
- 一時滞在許可証:一時労働者、学生、ビジター、研修生など
- 複数年滞在許可証のうち、タレント(旧パスポート・タレント)、各種ICT(salarié détaché ICT, salarié détaché mobile ICT, stagiaire ICT等)
- その他:健康上の理由による滞在許可証、フランス生まれで一定の条件を満たす者など
なお、これらのCIRが免除される滞在許可証から別のカテゴリーの滞在許可証に変更する場合、変更後の滞在許可証がCIR対象であれば、そのタイミングで市民教育試験が必要になる可能性があります。
試験はいつ?どのように受験するの?
市民教育試験は、滞在許可証または帰化の申請を行う「前」に受験し、合格しておく必要があります。これが従来との大きな違いです。
CIR対象の複数年滞在許可証を申請する場合、以下のプロセスを踏む必要があります。
(1) 市民教育研修(Formation civique)を受講
期間:4日間、合計24時間/実施機関:OFII(フランス移民統合局)
(2) 研修修了後、市民教育試験を受験
(3) 試験に合格
(4) 複数年滞在許可証を申請
従来は滞在許可証取得後にCIRの一環として研修を受講していましたが、2026年1月以降は申請前の受講・合格が必須となります。この流れの変更により、準備期間を十分に確保することが重要になります。
なお、帰化申請の場合は、研修受講の義務はなく、試験のみ受験します。
また、試験の合格証明書には有効期限がありません。一度合格すれば、その証明書を将来の申請にも使用できます。この点は受験者にとって大きなメリットといえるでしょう。
試験の内容と準備方法
試験では、市民教育研修で学習する以下の5つのテーマから出題されます。
(1) 共和国の原則と価値観
- フランス共和国の標語と象徴
- 政教分離の原則
(2) 制度と政治システム
- フランス共和国の組織構造
- 欧州連合とその機関
(3) 基本的権利、義務、責任
- フランスに居住する人々の権利と義務
(4) 歴史、地理、文化
- フランスの歴史、地理、文化に関する基礎知識
(5) フランス社会での生活
- 親権と教育制度
- フランスでの就労
フランス内務省は、受験者のために専用ウェブサイトを開設しています。
https://formation-civique.interieur.gouv.fr/
このサイトでは、222のテーマ別学習資料、試験内容と実施方法の詳細情報、全国の認定試験会場一覧などが無料で提供されています。
実務上の注意点
この新制度により、CIR対象者の滞在許可証申請プロセスが大きく変わります。
従来のプロセス(2025年まで):
滞在許可証申請 → 取得 → CIR署名 → 市民教育研修受講
新プロセス(2026年以降):
CIR対象であることを確認 → 市民教育研修受講(4日間) → 市民教育試験受験・合格 → 滞在許可証申請
この流れの変更により、申請までのスケジュールに十分な余裕を持つことが不可欠になります。研修だけで4日間を要し、さらに試験の準備期間も考慮すると、滞在許可証が必要になる時期から逆算して、少なくとも数ヶ月前から準備を始めることをお勧めします。
また、試験は認定された試験会場でのみ実施されます。居住地の近くに試験会場があるか、受験可能な日程はいつかなど、事前に確認しておくことが重要です。
なお、前述のとおり、グループ企業内の派遣に適用されるICT関連の滞在許可証やタレント滞在許可証など、CIR対象外の滞在許可証をお持ちの方は、これらの手続きは不要です。ご自身の滞在許可証が実際にどのカテゴリーに該当するか、念のため確認されることをお勧めします。
まとめ
2026年1月1日から施行される市民教育試験制度は、フランスでの長期滞在を希望する外国人のうち、CIR対象者にとって、避けて通れない新たな関門となります。
特に、複数年滞在許可証を初めて申請する方でCIR対象となる場合は、24時間の研修受講と試験合格という2つのステップを申請前に完了させる必要があるため、早期の準備開始が不可欠です。
他方、試験の合格証明書に有効期限がないことは、一度の合格で将来的な複数の申請に対応できるという意味で、受験者にとってのメリットといえます。
フランスでの長期滞在や帰化をご検討中の方は、この新制度について正確に理解し、ご自身の状況に応じて計画的に準備を進めることを強くお勧めします。


