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【TMI拠点紹介ブログ Vol.8】 一般法務から先端分野まで、東南アジア展開を支える拠点 ―クアラルンプール拠点―
2026.02.13
TMI総合法律事務所は、2024年4月より、マレーシアの現地法律事務所であるSY Teo & Co.との提携を通じて、「SY Teo & Co. in Association with TMI Associates」としてクアラルンプールに拠点を開設しました。本記事では、開設に至った背景、現地のビジネス環境・法制度の特徴、進出時の留意点、提供している法務サービス、デジタル分野への取り組み、そして今後の展望等についてご紹介します。
拠点開設の背景
クアラルンプール拠点の代表を務める梅田宏康弁護士は、2019年より当事務所のシンガポールオフィスに所属し、同市を拠点にマレーシア案件を担当してきました。シンガポールからクアラルンプールは飛行機で約1時間とアクセスは良好で、当初は出張ベースで十分対応可能でしたが、案件数の増加とマレーシアプラクティスの成長を見据え、現地に日本人弁護士が常駐する必要性が高まっていました。
こうした状況を踏まえ、2024年にクアラルンプール拠点を開設するに至りました。

マレーシアのビジネス環境
マレーシアには1,600社超の日本企業が進出しており、クアラルンプール首都圏のほか、ペナン、ジョホール、ラブアン、東マレーシア(サバ州・サラワク州)など全国に広がっています。
日本企業による投資は従前より製造業の比重が大きい一方、近年は医療、化粧品、食品、外食、アニメ・コンテンツ産業といった多様な分野への投資も増加しています。英語を基盤とする法制度や比較的安定した治安環境に加え、マレーシアは ASEANの中でも高所得国に位置づけられることから、消費マーケットとしての魅力も大きく、日本企業にとって進出しやすい国として注目されています。英語と中国語の双方を使用できる人材が豊富であること、さらに シンガポールと比較した際の人件費・オフィス賃料の優位性から、ASEANの統括拠点としてマレーシアを選択する企業も増加傾向にあります。
法制度の特徴と実務環境
マレーシアの法制度はイギリス法の影響を強く受けるコモン・ローを基盤としており、シンガポール、オーストラリア、香港などのコモン・ロー諸国と共通性の高い制度設計となっています。
法制度の透明性は比較的高く、裁判所や行政機関とのやり取りにおいて、外資企業であることを理由に不利に扱われたり、汚職リスクを感じたりする場面は、実務上全くありません。
マレー語が公用語ではあるものの、契約書を含む法律実務は主として英語で行われ、裁判手続においても英語とマレー語が併用されることが一般的です。
進出にあたっての留意点
一方で、外資規制やマレーシア特有の優遇政策であるブミプトラ政策については、十分な理解と慎重な対応が不可欠です。
製造業分野における外資規制は過去に撤廃されており、総じて外資規制は緩やかな国といえますが、倉庫、運送、不動産、流通など、日本企業の関心が高い分野には一定の外資規制が残っています。
例えば、外資が小売・卸売等の流通業を営む場合、駐在員の就労ビザ取得にあたり、資本金RM1,000,000以上(約3,500万円)が必要とされるなど、中小企業にとって進出時のハードルとなるケースもあります。
また、マレー系住民(ブミプトラ)を保護する政策により、ブミプトラ株主・取締役の関与が求められる業種や、ブミプトラのみが保有可能な土地が存在します。日本企業の中には株式の名義貸し(ノミニー)を利用している会社もありますが、マレーシアの判例上、ブミプトラの保護規制を潜脱する目的のノミニー契約は無効と判断される可能性が高いので注意が必要です。
また、多民族・多宗教国家であるマレーシアでは、宗教や国際情勢に関するスタンスが日本とは異なるため、文化的背景への理解も重要です。
国教はイスラム教ですが、憲法上、他宗教の信仰の自由も保障されています。イスラム教が日本企業のビジネスに影響を与える領域は限定的であるものの、ハラル規制や広告(宗教感情への配慮)には注意が必要であり、宗教的配慮を欠いた広告が社会的問題となる事例も見受けられます。
また、外交上マレーシアはイスラエルと国交を有しておらず、親パレスチナの政策を採っています。そのため、グループ企業にイスラエル企業や役員が関与している場合、マレーシアの金融機関サービスの利用に制限が生じるケースもあり、日本企業にとっては留意すべき点の一つです。
現地体制と主な対応分野
マレーシアに関連する業務は、提携先である現地法律事務所に所属するマレーシア人弁護士とTMIに所属する日本人弁護士が共同して対応する体制を取っています。
現在、クアラルンプール拠点には日本人弁護士2名、マレーシア人弁護士4名のメンバーが在籍しています。マレーシア案件は順調に増加しており、今後も積極的に人員体制の拡充を図る予定です。
取扱分野は、M&Aを中心に、外資規制・許認可の調査、解雇その他の労務トラブル、横領・セクハラ等の不正調査、債権回収、合弁企業間の紛争対応、個人情報保護法などのコンプライアンス対応など多岐にわたります。
東南アジアのエンタメ・デジタル市場を支える
クアラルンプール拠点所属の落合一樹弁護士は、東京オフィスで4年間にわたりゲーム関連案件およびM&A案件に携わり、さらにシンガポールで日系企業のクロスボーダー案件の実務経験を積んだ後、現在はマレーシアを拠点に活動しています。ブロックチェーンやAIに関する規制も含め、ゲーム・デジタル分野の幅広い案件をカバーしています。
マレーシアには日本のゲーム・アニメ文化の熱心なファンが多く、アプリゲーム市場は年々拡大しており、さらに、安定した電力供給とコスト面の優位性から、オフショア開発拠点としても注目が高まっています。
落合弁護士は、
- アプリゲームにおけるガチャ(loot box)やeスポーツ大会の賞金・賞品提供に関する賭博規制の有無の調査
- 現地の法律・宗教的観点による表現・広告規制の調査
など、日本とは異なる規制への対応を日系企業とともに検討し、現地で事業を進める上での基盤づくりに貢献しています。
当事務所はM&Aやコーポレートなどの主要分野に加え、デジタル分野といった先端領域も幅広くカバーしています。東京および各国オフィスと綿密に連携し、ASEAN地域における規制対応をワンストップで提供できることが大きな強みです。
今後の展望
マレーシアは、次なるASEAN諸国への玄関口として、日本企業の海外展開を支える拠点としての重要性を一層増しています。TMIクアラルンプールオフィスとしても、従来のM&Aや一般企業法務に加え、日本が誇るコンテンツ産業の中核の一つであるゲーム・エンターテインメントといったデジタル分野などの成長領域にも積極的に取り組み、東京オフィスや各国の提携事務所と連携しながら、“日本と東南アジアをつなぐ最良のパートナー”としての役割を強化していきたいと考えています。

