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2026年の蓄電池事業・太陽光発電事業の展望について
2026.02.18
本ブログでは、特に蓄電池事業と太陽光発電事業について、2025年の振り返りと、2026年の展望について整理いたします。
2025年の系統用蓄電池事業
2025年は、系統用蓄電池の事業開発の件数が急増した年であったといえます。この意味も込めまして、以下の通り2025年中に見られた、系統用蓄電池に関する重要な動きについて以下整理したいと思います。
(1) 接続申込急増と系統増強不足
資源エネルギー庁資料によれば、系統用蓄電池の受付状況として、2025年6月末時点での接続検討は約14,300万kW、契約申込みは約1,800万kWに達しており、2024年6月末と比較して短期間で大幅に増加しています。
(系統⽤蓄電池の迅速な系統連系に向けてP3)
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/smart_power_grid_wg/pdf/004_04_00.pdf
こうした申込急増には、補助金等の支援策、各種市場(卸市場・容量市場・需給調整市場)での収益機会への期待、長期脱炭素電源オークション等を含む政策的誘因が複合的に作用していると考えられます。
他方で、局所的には運用容量を超える接続需要が生じ、従来の増強を前提に順番に接続する枠組みだけでは、脱炭素の要請と運用が整合しにくい局面に入りました。系統増強は設計・用地・工事・調整に時間を要するため、短期に系統不足を解消することは容易ではありませんでした。
(系統用蓄電池の迅速な系統連系に向けて)
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/smart_power_grid_wg/pdf/004_04_00.pdf
(2) 早期連系追加対策(時間帯を限定した充電制限による系統接続の促進)
このような状況を踏まえて、2025年4月に導入されたのが「早期連系追加対策」です。本対策は、一般送配電事業者が系統特性や設備容量等を踏まえ、混雑回避のための充電制限時間帯をあらかじめ設定し、蓄電池設置事業者がこれを遵守することを前提に、系統増強を行うことなく接続を認めるという枠組みです。従来の設備増強(又は設備側対策)によって運用容量を引き上げる発想に対し、本対策は運用上の時間制約を受け入れることにより、当面の増強を迂回する点に特徴があります。
もっとも、「早期連系追加対策」を利用する場合、事業者は接続までの時間を短縮し得る一方で、運用自由度や収益機会を制度的に制約し得る点には留意が必要です。
また、実装方法として、オンラインで日々の制御指令を配信する方式はシステム構築に時間を要するため、当面は、事業者側でオフライン環境下でも確実に充電を停止できる「システム的セーフティ」を具備する前提が示されています。これは迅速化の趣旨に整合する一方で、事業を進めるにあたっての費用負担や技術的な難易度が増加すると指摘されています。
(系統用蓄電池の迅速な系統連系に向けて)
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/shin_energy/keito_wg/pdf/053_02_00.pdf?utm_source
(3) 2025年の周辺動向(許認可規律の明確化強化、接続ルールの実効性確保、市場設計の同時進行)
また、2025年は、許認可規律の明確化、系統接続ルールの実効性確保(空押さえ対策を含む)、市場設計の見直しが同時に動きました。すなわち、系統接続、許認可及び市場を横断したリスク評価の必要性が一段と明確となりました。
まず、2025年4月8日、国土交通省から「系統用蓄電池の開発許可制度上の取扱いについて(技術的助言)」が公表されました。
市街化調整区域における「開発行為」は原則として都市計画法29条に基づく許可が必要となり、蓄電池設備が危険物の貯蔵に供する工作物として第一種特定工作物と評価される場合には審査が厳格化します。
他方で、公益性のある施設として許可不要類型に該当し得る余地もあり、事業スキーム(発電事業としての整理、小売及び特定卸事業(アグリゲーション)の関与の有無等)により評価が変更されうるのが実務上のポイントです。
技術的助言は、自治体に対し審査基準の策定等を含め地域実情に応じた運用を促しており、各自治体でも取扱いの明確化が進みつつあります。
したがって、案件初期段階から、土地利用及び安全面の整理と併せて、自治体との事前協議を前倒しで行うことが、スケジュール及びコストの両面で重要となります。
(国土交通省 技術的助言)
https://www.mlit.go.jp/toshi/city_plan/content/001883478.pdf
また、系統用蓄電池の迅速な系統連系を実現するため、以下のような対応策が制度設計の段階で示されています。
① まず、接続検討申込みの受付及び審査の運営において、事業確度の低い申込みによる障害を防止するため、以下のような仕組みが提案されています。
i. 接続検討申込時に、蓄電池の設置場所における登記簿謄本の確認結果、所有者名、対応状況等が記載された書類の提出を求める案。これにより、事実上事業の実施が不可能と思われる土地など事業確度の低い事業を排除及び縮減する(2026年1月以降に接続検討申込み及び契約申込みの受付を行う案件から適用開始)。
ii. 一事業者あたりの同時検討件数に上限を設ける案。大量の申込みを出して“場所を押さえる”事業者が審査の障害となることを防ぐことが狙いです。
② また、契約申込みプロセスにおいて、蓄電池の設置場所の使用権原を証する書面(土地の登記簿謄本、賃貸借契約の写し等)の提出を求める案が検討されています。より具体的には、連系承諾から原則として2カ月以内に当該書類の提出を求め、提出がない場合に連系予約を取り消すこととすることが検討されています。
これらの規律強化策は、受付処理の迅速化及び実現可能性の高い案件を優先的に系統連系接続させるという目的があります。
(総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会 再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会/電力・ガス事業分科会 次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会 次世代電力系統ワーキンググループ(系統WG)
2025年9月24日第4回 資料4)
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/smart_power_grid_wg/pdf/004_04_00.pdf
(2025年11月14日第5回 資料2)
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/smart_power_grid_wg/pdf/005_02_00.pdf
(2025年12月24日第6回 資料3)
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/smart_power_grid_wg/pdf/006_03_00.pdf
最後に、市場についても需給調整市場を中心として改革が行われ、2026年3月13日に新制度が開始します。この点については2026年の動きとして以下詳述致します。
2026年の展望(系統用蓄電池についての系統接続と収益前提・大型太陽光規制)
2026年の再エネ・蓄電池分野では、(i)上記で述べました系統接続の入口規律強化に加えて、(ii)需給調整市場(一次~三次①)の制度変更及び(iii)大規模太陽光(メガソーラー)に対する規制強化(環境・安全・地域共生)が同時並行で進みます。これは、開発初期の選別が進む一方で、運用フェーズの収益前提が変わり、さらに土地・環境・安全対応コストとスケジュールが増えるという形で、案件組成のリスク配分を再編します。
以下、主要論点を整理します。
(1) 蓄電池の需給調整市場改革:前日取引化と募集量・上限価格の見直し
需給調整市場の一次~三次①について、2026年3月13日より、従来の週間商品中心の仕組みから前日取引へ移行する方針が示されています。これにより、調達タイミングが需給見通しに近づき制度としての合理性は高まりますが、事業者側には短い時間軸での最適化が求められます。
また、第108回制度検討作業部会(2025年10月29日)、第110回制度検討作業部会(2026年1月23日)では、2026年度以降の対応方針として、一次~三次①の市場調達量を最大1σ相当とする方向が議論されています。 これにより(特に一次・二次①を中心に)市場での枠が相対的に縮小されることとなり、調整力市場依存の収益モデルは保守的な再点検が必要になります。
さらに、需給調整市場における上限価格について、一次・二次①・複合商品の上限価格を現在の19.51円/ΔkW・30分から15円/ΔkW・30分に引き下げる(ただし、市場における競争状況に改善が見られない場合、10円、7.21円/ΔkW・30分等と段階的に引き下げる)方向での見直しも議論されています。 上限価格の引下げが実現すれば、ピーク単価を前提とした投資回収モデルは再考しなければならないことになります。
(第110回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会 制度検討作業部会)
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/jisedai_kiban/system_review/110.html
(2) 蓄電池:接続ルール及び保証金・工事費負担金の実効性強化
上記の通り、次世代電力系統ワーキンググループ(第6回、2025年12月24日)では、接続申込の実効性を高め、空押さえを抑制する趣旨で、追加措置が議論されています。
まず、契約申込時の保証金の増額(5%→10%)が検討されております。 これは開発初期の資金負担を増やす一方、確度の低い案件を抑制し、真に実現可能な案件に系統容量と事務処理資源を振り向けることを目的とします。
第二に、工事費負担金の分割払の厳格化(初回最低50%)が検討されております。支払時期の先送りを抑え、長期滞留を防ぐ意図が読み取れます。
結果として2026年1月以降、申込み時点で土地関係書類等の提出が求められる方向であり、また空押さえ等の問題も指摘されていることから、従来の申込後に詳細を詰める進め方は相対的に取りづらくなり、申込前に一定程度の準備を行う運用を想定しなければならないと考えます。
(3) 大型太陽光に対する規制強化
関係閣僚会議決定(2025年12月23日)の「大規模太陽光発電事業に関する対策パッケージ」では、地域との共生を大前提に、不適切事案への法的規制強化等が整理されています。
第一に、環境影響評価(環境省・経産省)について、対象規模の見直しと審査の厳格化及び指導徹底等による実効性強化が掲げられています。この点は、通常国会中に検討結果を取りまとめ、施行令等の改正が予定されております。
第二に、電気事業法上の保安規制強化として、10kW以上の全ての太陽電池発電設備について、土木建築の専門性を有する第三者機関が工事前に構造に関する技術基準適合性を確認する仕組みが掲げられております。
第三に、森林法(林地開発許可制度)の規律強化として、罰則や公表等を含む規律強化が言及されており、2026年4月施行が予定されております。
(大規模太陽光発電事業(メガソーラー)に関する対策パッケージの決定)
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/megasolar/index.html
(4) ペロブスカイト太陽電池
一方で、太陽光発電分野においては、将来に向けた前向きな動きも見られます。その一つが、ペロブスカイト太陽電池の社会実装に向けた取組です。ペロブスカイト太陽電池は、軽量かつ柔軟であるという特性を有し、従来のシリコン系太陽電池では設置が困難であった建築物の壁面や屋根、耐荷重に制約のある場所への設置が期待されています。国内メーカー及び研究機関を中心に、耐久性や量産性の向上に向けた技術開発が進められており、政府としても次世代太陽電池としての位置づけを明確にしています。短期的に大規模電源の代替となるものではありませんが、中長期的には、都市部を含む需要地近接型の分散電源として、再生可能エネルギー導入を補完する重要な役割を果たす可能性があります。
2026年における実務について
以上を踏まえ、2026年は、蓄電池案件を早期に進行させることに加えて、(i)接続申込前の確度作り、(ii)市場制度変更に対応する収益モデル、(iii)規制強化を織り込んだスケジュール及びコスト管理を一体として組み上げることが、法務、投資及び開発の共通課題になります。
また、需給調整市場における上限価格設定を含む制度改正や運用の見直しは、今後も段階的に具体化していくことが想定されます。制度趣旨や運用の方向性を踏まえたリスク評価を行い、案件初期からそれを織り込んだスキームを構築できるか否かが、事業の成否を左右する局面が増えていくものと考えられます。
当職としても、制度改定の確定内容と運用のアップデートに応じて、実務上の要点を継続的に整理していくこととしたいと思います。
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