ブログ
宿泊会員権の前払式支払手段該当性(第1回)
2026.05.11
はじめに
宿泊会員権とは、通常、ホテルや別荘に滞在できる権利又は当該権利の付与を受けられる権利を意味します。宿泊会員権を有する者は、プランに応じて宿泊施設を利用できるほか、一般予約に優先して予約を確保できるなど、別荘感覚で柔軟な滞在が可能となる商品設計がされていることが多いようです。こうした宿泊会員権は従来から存在しているものの、近年はNFTとして発行する形態が新たに登場し、注目を集めています。
宿泊会員権の法的性質はサービス毎に異なりますが、本稿では、所有権の移転を伴わず、サーバー上で記録・管理される形態の宿泊会員権(サーバ型宿泊会員権)の前払式支払手段該当性を検討します。
前払式支払手段とは
前払式支払手段とは、あらかじめ利用者が対価を支払うことにより取得し、発行者等に対して商品やサービスの代金の支払いのために行使することができる証票・番号等をいいます。資金決済法3条1項各号に要件が定められており、交通系電子マネーなど利用可能な金額が表示されるもの(同条1項1号)と、ビール券など利用可能な回数や個数が表示されるもの(同条1項2号)の2種類があります。
前払式支払手段の発行者は、適用除外の類型に該当する場合等を除き、資金決済法に基づく届出義務又は登録義務を負い、当局による監督指導の対象となります。また、資金決済法上の様々な行為規制が適用されますが、その中でも特に重要なものが供託義務です。発行者は、発行済みの前払式支払手段の未使用残高(基準日未使用残高)の2分の1の額に相当する金銭等(発行保証金)を供託する義務を負います(資金決済法14条1項)。
かかる供託義務は、資金決済法の前身である前払式証票法、さらにその前身である商品券取締法の時代に設けられた規制であり、発行者への過度な負担を回避しつつも、消費者保護の充実を図ることを目的としています。もっとも、供託義務を負う金額が基準日未使用残高の2分の1の額にとどまるとはいえ、供託中はその資金を自由に引き出すことはできません。事業を営む発行者にとっては、資金繰りの観点から特に留意すべき規制であるといえます。
適用除外の類型及び前払式支払手段に該当しない類型
ゲーム内コインなどでは、コインの有効期間を6か月未満とする例が多くみられます。これは、コイン自体は前払式支払手段の要件を充足して前払式支払手段に該当するものの、有効期間が6か月未満であれば供託義務その他の資金決済法上の前払式支払手段に係る規制の適用が除外されること(資金決済法4条2号、資金決済法施行令4条2項)を踏まえた設計です。
他方、前払式支払手段の要件を充足しない証票・番号等を発行する場合、当該証票・番号等は前払式支払手段に該当しないため、有効期間(6か月未満)の制限を設けなくても、発行者に上述した供託義務をはじめとする前払式支払手段に係る規制は適用されません(※1)。
金融庁公表の事務ガイドライン(※2)には、前払式支払手段に該当しない証票・番号等の類型が列挙されています。このうち、宿泊会員権の前払式支払手段該当性において主に問題となる類型は、以下のとおりです。

(※2) 金融庁「事務ガイドライン第三分冊:金融会社関係「5前払式支払手段発行者関係」」I-1-1 前払式支払手段に該当しない証票等又は番号、記号その他の符号(1)②及び⑤の内容を基に筆者が一部加工(下線・太字・色等を付加)。
一見すると、会員権に関しては、まず②の該当性を検討すべきと思えますが、「証拠証券としての性格を有するもの」の該当性は事務ガイドラインの記載から必ずしも明らかではありません。また、⑤の該当性に関しては一定の基準が示されているものの、②との関係性が明確でない以上、⑤に該当する範囲も不明確であるように思われます。
次回は、当該②及び⑤の前払式支払手段に該当しない証票・番号等の類型が記載された経緯等を踏まえて、それぞれの対象範囲を検討します。
(※1)前払式支払手段に係る規制の適用はないものの、例えば換金可能な仕様とする場合には出資法上の預り金規制への抵触が問題となるため、注意が必要です。
Member
PROFILE
