開催の経緯等

TMI総合法律事務所は、2023年8月3日に、国立大学法人東京大学大学院工学系研究科、国立研究開発法人産業技術総合研究所、国立研究開発法人理化学研究所と共催で、「日本の半導体戦略シンポジウム～産学の経済安全保障の視点を含めて～」と題したシンポジウムを開催し、この度、議論の内容を広く皆様にお役立ていただくため、当日の内容の動画配信を開始いたしました。
（後援：内閣府政策統括官（経済安全保障担当）、外務省、防衛装備庁、一般社団法人 電子情報技術産業協会（JEITA）、一般社団法人日本半導体製造装置協会（SEAJ）、SEMIジャパン、一般財団法人 安全保障貿易情報センター（CISTEC））

半導体は、電子機器や自動車などの製造業はもちろん、通信、ＡＩ、宇宙、防衛など、広くあらゆる分野において不可欠となっています。そのような半導体の開発・生産能力が自国の不可欠性を大きく左右することとなることや、近年の半導体の供給不足が経済活動に深刻な影響を与えた事実、すなわち、半導体をめぐる経済安全保障上のリスクを踏まえ、世界各国の政府や企業が、半導体に関する政策・研究を、巨額の予算を投じて積極的に進めています。

このような世界情勢を踏まえ、日本の半導体をめぐる政策、研究、規制はどうあるべきか、日本の企業は、世界各国による半導体をめぐる政策に対してどのように対応していくべきか、国会議員の先生方・関係省庁のご担当者様・アカデミアの先生方・関係企業のご担当者様・法曹実務家にて、講演・パネルディスカッション形式で、議論いたしました。

当日の概要と実際の動画は、以下よりご覧ください。

概要

１．開会のご挨拶

境田 正樹 氏  TMI総合法律事務所 弁護士／TMI防衛・経済安全保障PG共同代表

２．祝辞

岸田 文雄 氏  内閣総理大臣（ビデオメッセージによる祝辞）

 ３．祝辞

石村 和彦 氏  国立研究開発法人産業技術総合研究所 理事長

４．特別講演

甘利   明 氏  衆議院議員／自由民主党半導体戦略推進議員連盟 会長
岩倉 正和 氏  TMI総合法律事務所 弁護士/一橋大学大学院法学研究科（ビジネスロー専攻）教授（モデレーター）

５．パネルディスカッション

第１部　世界の半導体戦略動向と日本の戦略

デジタル化や新型コロナからの緩やかな経済回復の下で、半導体需要が急速に拡大したことにより、世界では半導体供給不足が生じました。このような半導体不足が産業における半導体の重要性を再認識させたこと、そしてデカップリングが進む世界情勢が影響して、各国は自国の半導体産業の強化ならびにグローバル半導体企業の誘致を本格化させています。

例えば、米国においては先端半導体の対中輸出管理規制が強化されると共に、CHIPS ACTの制定により、米国内の半導体産業の支援に加え、半導体確保に向けた安定的なサプライチェーンの構築を図ろうとしています。欧州や韓国、台湾、中国などの各国においても、先端半導体のR&Dやレガシー半導体の生産増強などに対する支援策が展開されています。

本セッションでは、これらの世界情勢を踏まえた半導体を巡るグローバルサプライチェーンの再構築の状況を展望した上で、日本の今後の半導体戦略の道筋について議論しました。具体的には、サプライチェーンのあり方（生産拠点の分散、在庫確保、人材育成等の課題にどう対処するか。）、国際協調・連携のあり方、ゲームチェンジャーとなるような技術の開発、新しい付加価値を生み出すようなユースケースの見込みや創出方法、これらの目標に向けていかなる支援策を採るべきか等について触れつつ、日本のあるべき半導体支援策について議論しました。

【パネリスト】
西村 康稔 氏  経済産業大臣
細川 昌彦 氏  明星大学教授／元経済産業省中部経済産業局長
小池 淳義 氏   Rapidus株式会社 代表取締役社長

【モデレーター】
境田 正樹 氏  TMI総合法律事務所 弁護士／TMI防衛・経済安全保障PG共同代表

第２部　次世代半導体の研究開発戦略

次世代半導体は、製品の省電力化や小型化に貢献するだけでなく、量子・AIなど大きなイノベーションをもたらす中核技術としても期待され、厳しい国際開発競争が行われています。

本セッションにおいては、次世代半導体開発の現状を整理したうえで、今後日本の次世代半導体の開発・製造がスピーディー、かつ、より確実に実現され、これが日本に根付くために必要なポイントについて議論しました。

日本の研究開発における強みとその生かし方、産官学や国際的な連携を生かしたエコシステムの重要性と注意点、物理的・人的な開発環境の整備状況と課題、国際競争に勝てる人材の育て方等についても触れつつ、研究開発における「成功のイメージ」を可能な限り具体的に描くことを目標とします。

【パネリスト】
金指   壽 氏  経済産業省商務情報政策局情報産業課長
轟     渉 氏  文部科学省研究開発局環境エネルギー課長
五神   真 氏  国立研究開発法人理化学研究所 理事長
黒田 忠広 氏  東京大学大学院工学系研究科 教授
東   哲郎 氏  技術研究組合最先端半導体技術センター（LSTC）理事長

【モデレーター】
上野 一英 氏  TMI総合法律事務所 弁護士／学習院大学法学部非常勤講師

第３部　半導体を含む先端技術・重要技術をめぐる経済安全保障関連リスクとその対応

日本企業が有する事業戦略上重要な技術や製品は半導体に限ったものではありません。日本政府は、そのような重要技術の適切な管理を考慮しつつ、半導体をはじめとする重要物資のサプライチェーンの強靱化及びキーとなる先端技術の開発を推進するべく、安定供給の確保とイノベーションに関する政策を推進しています。つまり、「経済安全保障」は、規制関連措置ばかりが注目されがちですが、支援措置も両輪の一つとして重要であり、企業においてはこれを積極的に活用することも検討すべきです。

本セッションにおいては、(1)半導体ユーザーの重要性とその育成のための支援策、及び(2)経済安全保障関連リスクへの対応との観点から、半導体に限らずより広く、(a)企業が有する事業戦略上重要な技術の適切な管理体制の構築方法、 (b)企業における重要な物資についてのサプライチェーンの強靭化の必要性とその対応策について検討しました。

【パネリスト】
飯田 陽一 氏  内閣府政策統括官（経済安全保障担当）
西川 和見 氏  経済産業省大臣官房参事官（経済安全保障担当）／経済安全保障室長
川野 真稔 氏  総務省国際戦略局技術政策課長
松本 恭典 氏  防衛装備庁技術戦略部長
髙橋 泰三 氏  富士通株式会社 執行役員　（SEVP CRMO（兼）グローバル政策推進経済安全保障担当）
伊藤   隆 氏  三菱電機株式会社 経済安全保障統括室長

【モデレーター】
白石 和泰 氏  TMI総合法律事務所 弁護士／TMI防衛・経済安全保障PG共同代表／慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任教授

６．閉会のご挨拶

共催者代表　東京大学大学院工学系研究科長・工学部長　加藤泰浩氏

【TMI半導体戦略シンポジウム開催チーム】
弁護士：岩倉正和、境田正樹、白石和泰、村井賢郎、久保賢太郎、上野一英、久保田修平、榊原颯子、山田怜央、張壮壮、芹澤杏子、牧昂平、伏見純子、中山翔太、橋本大智
法務：松本ティモスィー俊樹