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【ヘルスケア】最新法令ニュース(2024年12月第1週)─PICK UP:製薬会社に安定供給の責任者を義務付け他─
2024.12.04
2024年12月第1週のヘルスケア関連の最新法令ニュースをピックアップしてご紹介いたします。
最新法令ニュース
- 製薬会社に安定供給の責任者、厚労省が義務付け
- 「品位損なう」医師への行政処分、基準作りの議論打ち切り 医道審
- 一般社団法人の医療機関が報告対象に 厚労省方針、美容を念頭
- 薬剤師不在でも市販薬販売可へ コンビニや自販機、説明はオンライン(※)
- 「薬物相互作用試験」(M12)を通知 厚労省、ICH-GL
▷薬物相互作試験に関するガイドライン
▷医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン - 製薬協 医療データ二次利用で「個人情報保護法の特別法早期制定を」 日本版EHDS視野 規制改革WG
▷第3回 健康・医療・介護ワーキング・グループ 議事次第 - 市販薬の乱用対策「処方薬へ見直し検討を」規制改革WGで意見続出
▷第3回 健康・医療・介護ワーキング・グループ 議事次第 - 「健康サポート薬局」認定制度を導入へ…介護用品販売など要件、超高齢化社会への対応に重点
- マイナ保険証システム義務化は適法 医師の違法確認を棄却 東京地裁
- マイナ保険証利用の患者、電子カルテを病院間で共有へ…病歴や検査結果も把握可能に
PICK UP
1.製薬会社に安定供給の責任者、厚労省が義務付け
出典:「製薬会社に安定供給の責任者、厚労省が義務付け」日経新聞、2024年11月18日(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA284KR0Y4A121C2000000/、2024年12月3日最終閲覧。)
製薬企業に「安定供給体制管理責任者(仮称)」の設置が義務付けられる方針とのことで、総責、品責、安責の三役に新たに「安定責」(?)を加えた「四役」となる日が来る模様です。「安定供給責任者」ではなく、「安定供給体制管理責任者」としているのは、安定供給という言葉自体が明確な基準のあるものではなく、市場動向にも左右される中で、結果に対して責任を負うものではない、という意図の現れのようにも見えます。
厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会の資料には次のような記載があります。やはり、製造販売業者において、品質管理体制(GQP)、製造販売後安全管理体制(GVP)に加え、安定供給確保体制(マネジメントシステム)(G?P)の構築が求められるようです。
出典:令和6年度第9回厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会
「資料1 医療用医薬品の安定的な供給の確保」6頁(2024年11月28日)
(https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001340513.pdf)
これまで後発医薬品に関して実務上要請されていた「安定供給」につき、後発品・先発品を問わず、法令上の義務として体制整備・運用を求められる対象となると、実務上のインパクトはそれなりにあるのではないかと思われます。具体的にいかなる体制、手順が要求されるのかが重要ですが、次のとおり、日本製薬団体連合会作成の「ジェネリック医薬品供給ガイドライン」を参考に、先発品、後発品の差異も考慮した雛形作成が検討されているようです。
出典:令和6年度第9回厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会
「資料1 医療用医薬品の安定的な供給の確保」12頁(2024年11月28日)
(https://mainichi.jp/articles/20241127/k00/00m/040/107000c)
製薬企業各位におかれましては、本改正にかかる今後の動向を注視する必要がありそうです。今後も動向も折に触れてブログで触れたいと思います。
2.「品位損なう」医師への行政処分、基準作りの議論打ち切り 医道審
出典:松本光樹「『品位損なう』医師への行政処分、基準作りの議論打ち切り 医道審」毎日新聞、2024年11月27日(https://mainichi.jp/articles/20241127/k00/00m/040/123000c、2024年12月3日最終閲覧。)
医師法7条1項は、「医師としての品位を損するような行為」があったときに、厚生労働大臣は、次の処分を行うことができる旨規定しています。
- 戒告
- 3年以内の医業の停止
- 免許の取消し
このような「医師としての品位を損するような行為」については、例えば、不当に高額の診療報酬を請求すること、患者の貧富の差によって極端に診療内容を異にすること、診療義務違反を繰り返すことなどが挙げられています(注1)。
また、歯科医師法7条1項でも、同様に、「歯科医師としての品位を損するような行為」があったときには、厚生労働大臣が戒告、3年以内の歯科医業の停止又は免許の取消しを行うことができる旨規定されています。なお、厚生労働大臣は、医師又は歯科医師が「罰金以上の刑に処せられた者」その他「医事に関し犯罪又は不正の行為のあつた者」等に該当する場合にも、上記の処分を行うことができます(医師法4条、7条1項、歯科医師法4条、7条1項)。
これらの処分を行う場合、厚生労働省は医道審議会(具体的には医道審議会医道分科会)の意見を聞かなければならない旨規定されています(医師法7条3項、歯科医師法7条3項、医道審議会令5条1項)。医道審議会医道分科会は、「医師及び歯科医師に対する行政処分の考え方について」(以下「本考え方」といいます。)を公表しており、例えば、以下の場合に医師、歯科医師としての品位を損なうため行政処分を行う旨の見解を示しています(注2)。
- 贈収賄(収賄罪、贈賄罪等)
- 詐欺・窃盗(詐欺罪、詐欺幇助、同行使等)
- 文書偽造(虚偽診断書作成、同行使、虚偽有印公文書偽造等)
- 税法違反(所得税法違反、法人税法違反、相続税法違反等)
また、本考え方によれば、「指定医の指定取消又はこれに準ずる処分を受けることとなる行為については、当該社会的要請として求められる業務に対する国民の信頼を失墜させ、医師又は歯科医師としての品位に欠け、職業倫理に反する行為である場合があることから、そのような場合には、当該指定医制度に基づく行政処分とは別に医師法又は歯科医師法による行政処分を行うこととする。」とされています(注3)。
しかしながら、本考え方において、「品位を損するような行為」の解釈は明示されておらず、当該行為に該当する範囲が不明確です。この点、上記のニュースで記載されているとおり、2021年から厚生労働省の医道審議会において、「品位を損するような行為」の基準作りの議論が始まったものの、2024年2月に医道審議会は「引き続き厚労省で議論を」との報告書をまとめて実質的に議論を打ち切り、厚生労働省内で基準作りに向けた動きは止まっている状態とのことです(注4)。「品位を損するような行為」の解釈によって、医師免許・歯科医師免許の取消し等の重大な不利益な処分がなされるか否かが変わり得る以上、当該解釈が明確化されることが望ましいと考えられます。
3.一般社団法人の医療機関が報告対象に 厚労省方針、美容を念頭
出典:「一般社団法人の医療機関が報告対象に 厚労省方針、美容を念頭」日経新聞、2024年11月27日(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA279B80X21C24A1000000/、2024年12月3日最終閲覧。)
こちらのニュースも一部では大きなインパクトがありそうです。事業報告それ自体よりも、一般社団法人には求められてこなかった事業報告を通じて、非営利性の規制監督が強化されることが想定されますので、一般社団法人開設の美容クリニックやオンラインクリニックでは、並行して進められている美容医療に関する厚労省検討会の動向と併せ、経営体制・診療提供体制の見直しを求められることになるかもしれません。
おわりに
今後もTMIヘルスケアプラクティスグループでは、最新のヘルスケア関連法令ニュースを配信していきます。弊事務所のヘルスケアプラクティスグループに関する記事コンテンツは、こちらにまとめておりますので、もしよろしければ併せてご覧ください。
また、ヘルスケアに関するご相談は、弊事務所のお問い合わせフォームまでお気軽にご連絡いただけますと幸いです。
注1:大谷實『医師法講義』21頁(成文堂、2023年)
注2:医道審議会医道分科会「医師及び歯科医師に対する行政処分の考え方について」5-6頁(2015年9月30日改正)(https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10803000-Iseikyoku-Ijika/0000099469.pdf)
注3:同上、7頁
注4:松本光樹「『品位損なう』医師への行政処分、基準作りの議論打ち切り 医道審」毎日新聞、2024年11月27日(https://mainichi.jp/articles/20241127/k00/00m/040/107000c、2024年12月3日最終閲覧。)