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障害者差別解消法(3)対象となる「障害」の種別②
2024.12.05
3回目となる今回は、障害者差別解消法における「障害」のうち、身体障害についてご説明いたします。
「身体障害」の定義
障害者差別解消法は、他の障害と同様、身体障害についても定義を設けていないことから、他の法律における身体障害の定義等を検討する必要があります。
まず、身体障害者福祉法4条は、「『身体障害者』とは、別表に掲げる身体上の障害がある18歳以上の者であつて、都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けたものをいう」と定めています。同法別表には、視覚障害、聴覚・平衡機能障害、音声・言語・そしゃく機能障害、肢体不自由、心臓・腎臓・呼吸器などの内部障害が列挙されています。もっとも、身体障害者福祉法上、身体障害者手帳の所持が身体障害者の要件となっていますが、障害者差別解消法では身体障害者手帳の有無は問題となりません。
また、学校教育法72条は、特別支援教育の対象者となる身体障害者を、視覚障害者、聴覚障害者、肢体不自由者又は病弱者(身体虚弱者を含む)に区分しています。これを受けて更に学校教育法施行令22条の3は、それぞれの障害の程度について定めています。
身体障害者福祉法や学校教育法が定める身体障害は、障害者差別解消法上の身体障害に含まれると考えられますが、身体障害者福祉法別表や学校教育法施行令が定める障害の内容・程度を満たさない場合であっても、障害者差別解消法上の身体障害にあたる場合があることには注意が必要です。
本稿では、身体障害者福祉法と学校教育法の区分のうち、比較的わかりやすいと思われる学校教育法の区分、すなわち「視覚障害」、「聴覚障害」、「肢体不自由」、「病弱・虚弱」という区分に基づいて身体障害をご説明いたします。
視覚障害とは
視覚障害とは、視力や視野等の視機能に障害があり、見ることが不自由又は不可能になっている状態をいいます。視覚障害者は眼鏡やコンタクトレンズを使って矯正しても、十分な視力を得ることができません。視覚障害は、視覚による情報を全く得られない、又はほとんど得られない「盲」と、文字の拡大や視覚補助具等を使用し保有する視力を活用できる「弱視」の2つに大きく分けられます。このほか、色彩弁別能力に障害のある場合もあります。
聴覚障害とは
聴覚障害は、音が聞こえない、または聞こえにくい状態をいいます。聴覚障害の種類や程度はさまざまで、必要な支援もそれぞれ異なります。
聴覚障害の種類としては、音振動を伝える部分の障害で、音が小さく聞こえる「伝音性難聴」、音を聞き分ける部分の障害で、音の明瞭さが低下する「感音性難聴」、両方が原因となっている「混合性難聴」があります。聴覚障害の程度は、小さい音が聞き取れない「軽度難聴」から、耳元の大きな声も聞きづらく、日常音がほとんど聞こえない「重度難聴」まで4段階に分かれています。
また、聴力に問題がなく音は聞こえているのに言葉として理解できない場合や、周囲に雑音があると内容が把握できない場合もあります。これらは、聴覚情報処理障害(APD)と呼ばれ、中枢系の障害が関与していると言われています。
肢体不自由とは
肢体不自由とは、四肢や体幹に何らかの姿勢や運動の障害・欠損等があり、そのため日常生活に不自由の続いている状態をいいます。四肢とは上肢(手・腕)と下肢(足・脚)を指し、また体幹とは胴体を意味します。肢体不自由の例としては、手や足がない、自分の意思で手や足を動かすことができなかったり、力の調節ができなかったりする、自分の意思とは関係なく手や足が動く、などが挙げられます。
病弱・虚弱とは
病弱・虚弱とは、慢性的な呼吸器疾患、腎臓疾患、神経疾患、悪性新生物、その他政令で定める疾患及び身体虚弱の状態が長期間にわたる、または長期間にわたる見込みのもので、医療や生活規制が必要となるものです。病弱者・虚弱者は、障害の種類や程度の個人差が大きいほか、外見からは健常者と区別がつかない場合も多いため、合理的配慮の提供にあたり特に注意が必要と考えられます。
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