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コロナに感染した取締役の責任
2020.09.08
TMI総合法律事務所では、2020年初頭から、新型コロナウイルス感染症への対応を分野ごとにまとめたシリーズ【コロナウイルス対応Q&A】を公表して参りました。また、昨今においては、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大だけでなく、その予防策としての新しい生活様式が、社会の様々な部分に変化を及ぼしており、企業法務の分野においても同様です。
そこで、こうした変化にいち早く対応し、クライアントの皆様のために最良のリーガルサービスを提供すべく、各分野の専門家を中心に、企業法務の分野において主に問題となるテーマの一部をQ&A方式でまとめさせて頂きましたので、是非ご活用いただければ幸いです。
【Q】
COVID-19の感染が拡大している状況下において、当社の取締役であるXは、当社の重要な取引先であるA社の代表取締役を接待するため、会食の後、接待を伴う飲食店を訪問しました。Xが、当該飲食店においてCOVID-19に感染し、その結果として当社に損害を生じさせた場合、Xは取締役としての責任を負うことになるのでしょうか。
なお、当社は、COVID-19の感染拡大を受け、社内規則において、いかなる理由においても接待を伴う飲食店への入店を禁止しています。
【A】
取引先の接待は、会社の事業遂行上の必要性が認められる場合には、業務執行に該当する場合も多いと考えられるところ、一般論としては、業務執行に関する取締役の判断には一定の裁量が認められます。しかし、業務執行の一環として行われた行為であっても、それが会社の社内規則に違反するものである場合、取締役の裁量が認められる余地は小さいため、通常は取締役の任務懈怠に該当し、責任が認められる可能性が高いと考えられます。
但し、具体的な状況からX氏に過失がないと判断とされる場合には、責任が否定される余地もあるため、最終的な判断は、X氏が当該飲食店を訪問した際の具体的な状況を踏まえて行う必要があります。