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才口弁護士に聞いてみよう(8)
2021.04.05
TMIの顧問弁護士であり、最高裁判事の重責も務められた才口弁護士に聞く、現代の「仕事」と「生き方」のヒント。
才口弁護士作「弁護士10年1人前説」数え歌、いよいよ10年目の登場です!
私は10年目の弁護士です。年次が上がるにつれ、だんだんと取り扱う業務の傾向に変化が生じてきて、法文や判例を調べることで「正解」にたどり着ける類のものから、AとBという2つの選択肢があるとき、いずれも法律上の問題はないが、いずれを選択すべきかの判断を迫られる類の事件が増えてきました。先生はそのような判断が求められる場面で、どのような判断軸で選択をしてこられましたか。活躍されてこられた先生の判断軸のようなものがあれば、知りたいと思っています。
10年目は『到頭一人前』
10年目の弁護士さん、私の「弁護士十年一人前説」の数え歌の十番『到頭一人前』に至るまで辛抱されて頑張ってこられましたね。まずもって敬意と慰労の意を表します。
私が法曹として辿った時代や社会情勢、事務所の形態も異なりますから、参考になるか、いささか疑問ですが、所信を披歴しますので将来の便(よすが)にしてください。
法曹としての『筋』と『軸』
結論は、法曹としての『筋』と『軸』を何処に置くかの問題で、ひとかどの法曹になるには通過しければならない関門です。
『筋』は素地・素質がいいなどと一般的には言われますが、考え方などの全体を貫いている一本の線のことです。事案の条理や道理を見通す能力で、持って生まれた個人的資質もありますが、経験から学び取りリファインされる能力でもあります。
具体的には、案件の事実から法令のフィルターを通して結論を早期かつ的確に結論を導ける資質です。
『軸』は物事の要(かなめ)で、軸足を何処に置くかで導き出す結論が異なり、結論に格差が生じます。縦軸、横軸、現在・未来軸などいろいろありますが、法曹として活動する要ですから資質と経験によって磨かれた人間性も如実に反映されます。
この『筋』と『軸』が定まれば、事案から法曹として導かれる結論は自ずと定まります。
また『筋』と『軸』はぶれないことが肝腎で、欲心があると心がくもり、対象物が歪んで見え決断が鈍りますからお気をつけください。
ご下問のAとBの選択肢の判断軸はクライアントのニーズとあなたの熱意の程度によるでしょう。瞬間的な利益を欲するクライアントか、将来的展望をするクライアントかの見極めと事案に対するパッションが選択判断の大きな要素となります。
10年目の弁護士さん、あなたもそろそろ事務所のパートナーの適格者ですね。
あなたは弁護士として才能のある「人材」であることに間違いありません。
これからは才能を鍛え練り上げて、ひとかどの「人物」に成長してください。
お互いに“謦咳(けいがい)-せきばらい-に触れたい”と期待される法曹になりたいですね!
完
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