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【シンガポール】シンガポールの家族ビザ(DP)保有者の就労規制の改正
2021.05.19
はじめに
2021年3月3日、シンガポール人材開発省(MOM)は、2021年5月1日以降、家族ビザ(Dependent Pass、以下「DP」といいます。)保有者がシンガポールで就労するためには、原則として各自就労ビザ(Employment Pass、S pass、Working Permit)を取得することが必要であると公表しました。
factsheet-work-arrangements-dp-holders.pdf (mom.gov.sg)
※Employment Pass:主にマネジメントレベルや専門性のある人材向けの就労ビザ(以下「EP」といいます。)。
※S Pass:主にマネジメント層までには至らないポジションの人材向けの就労ビザ。
※Working Permit:一般的に外国人半熟練労働者向けの就労ビザ。
改正の内容
変更前(2021年4月30日以前)
これまで、家族がシンガポールの就労ビザを取得したことに伴いDPを取得した者(典型的には日本人のシンガポール駐在員とともにシンガポールに移住したその配偶者及び子)は、自身が就労ビザを取得していなくても、Letter of Consent(LOC)を取得すればシンガポールで就労することができました。
日本人DP保有者がLOCを取得するには、①EP、EntrePass(起業家ビザ)又はPersonalised Employment Pass (個人雇用許可証:PEP)保有者の被扶養者であること、②3か月以上有効なDPを保有していること、③シンガポール雇用者からジョブオファーを得ていることのみが要件とされており、比較的容易でした。
変更後(2021年5月1日以降)
今回の就労規制の変更により、日本人のDP保有者は、今後自らEP又はS passを取得しなければならなくなりました(Working Permitは一般に港湾・建設などの単純労働者や家事雑用に従事するメイド労働者に発給され、日本人は対象者とされていないため、通常日本人には発給されません。)。
そのため、日本人駐在員の配偶者がシンガポールで就労することのハードルが高くなったと言えます。
もっとも、既にLOCを取得して就労しているDP保有者は、そのLOCの有効期間(2022年4月30日までの延長が一度限り認められます。)が満了するまで就労を継続することができます。
また、後掲のとおりDP保有者が一定の事業主である場合には例外が認められています。
例外(DP保有者が一定の事業主である場合)
シンガポール人材開発省(MOM)は、DP保有者が一定の事業主である場合、上記要件の例外を認めています。
すなわち、そのDP保有者が以下の2つの要件をいずれも満たす者である限り、シンガポール現地での雇用を創出していることに鑑み、従前どおり、LOC取得のみをもって就労を継続することができます。
① DP保有者が、当該事業の株式を30%以上保有する単独事業主、パートナー又は会社の取締役であること
② 当該事業で1人以上のシンガポール人又は永住権保有者を雇用しており、その雇用条件が一般的な適格給与(現在1,400シンガポールドル)以上で、中央積立基金(CPF)拠出金を3ヶ月以上積み立てていること
さいごに
近時シンガポールでは年々ビザの厳格化が進められており、今回の改正もその一貫と考えられます。シンガポールの日本人駐在員の方やそのご家族にとっては、DP保有者である家族がシンガポールで就労するハードルが高くなることを意味するため、留意が必要です。