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【マレーシアブログ(速報)】外国フランチャイザーによる年次報告書提出義務の実務運用の変更
2021.09.08
はじめに
今般、マレーシアにおいてフランチャイザー登録を行っている外国企業(以下「外国フランチャイザー」といいます。)に対する年次報告書の提出義務に関する実務運用が変更され、外国フランチャイザーも年次報告書の提出が求められることになりました。
2020年度の年次報告書は2021年9月10日までに提出する必要があり、多くの外国フランチャイザーに影響を与える実務運用の変更となりますので、マレーシアブログ速報版としてご案内致します。
マレーシアにおける外国フランチャイザー登録
外国企業が、マレーシアにおいて、フランチャイザーとしてフランチャイズ事業を行う場合には、事業開始又はフランチャイズの募集開始(フランチャイズ契約の締結)前に、国内取引・消費者省(注1)に外国フランチャイザーとしての登録を行う必要があります(フランチャイズ法(注2)6条1項、54条1項)。
この点、外国企業のフランチャイザー登録が完了するまでには、申請から半年以上を要することが一般的であり(注3)、マレーシアでフランチャイズ事業を行おうとしている外国企業にとって大きな制約となっています。
そのため、マレーシアにおいてフランチャイズ事業を行うことを検討している外国企業は、可能な限り早い段階で外国フランチャイザーの登録申請を行う必要があります。
フランチャイザーによる年次報告書の提出義務に関する過去の実務運用
フランチャイザー登録を行った場合には、フランチャイズ法上、フランチャイズ事業に係る事業年度の終了から6か月以内に、年次報告書を、国内取引・消費者省のフランチャイズ登録局(注4)に提出しなければならないこととなっています(フランチャイズ法16条1項)。
もっとも、この年次報告書の提出義務は、フランチャイズ法制定以来、フランチャイザー登録を行っている国内企業(以下「国内フランチャイザー」といいます。)にのみ課されており、実務上は外国フランチャイザーには年次報告書の提出を求めない運用がなされていました。
実務運用の変更に基づく外国フランチャイザーの年次報告書提出義務
ところが、2021年8月に、フランチャイズ登録局より、フランチャイザーの登録申請を行っている代理人(法律事務所等)宛に、外国フランチャイザーにも年次報告書の提出義務があり、2020年度の年次報告書を2021年9月10日までに提出することを求める旨の連絡が突然入りました。
この連絡により、上記の過去の実務運用が変更され、今後は、フランチャイズ法の規定に従って、外国フランチャイザーも年次報告書を提出する必要があることになります。
突然の実務運用の変更であり、かつ、政府からの公式発表等はないことから、今後の運用には不確定な面もありますが、提出期限が2021年9月10日であり、提出義務を履行しない場合には、フランチャイズ登録の抹消や罰金等の罰則が課されるおそれがありますので(フランチャイズ法13条2項(a)、39条)、マレーシアにおいてフランチャイザー登録を行っている外国フランチャイザーは注意が必要です。
なお、フランチャイズ法には、年次報告書の提出期限の延長に関する規定はありませんが、突然の実務運用の変更ということもあり、延長申請や、最低限の報告のみを行った上で、詳細な情報は追完する等の方法が認められる可能性もありますので、提出期限までにフランチャイズ登録局に何らかのコンタクトを取ることをお勧めいたします。
マレーシア・プラクティスグループ
(注1)Ministry of Domestic Trade and Consumer Affairs(MDTCA)
(注2)Franchise Act 1998 (Act 590)
(注3)現在のコロナ禍においては更に時間を要している点にご留意ください
(注4)Registrar of Franchise