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【防衛ブログ】「防衛産業参入促進展」への参加体験記
2024.12.25
2024年12月3日、防衛関連ニュースを執筆している弁護士の白石と、パラリーガルの松本が、12月2日・3日の計2日間にわたって開催された「DIPEX防衛産業参入促進展2024 in TOKYO」に参加したので、体験記を書き起こすこととした。
同イベントは、防衛装備庁が主催となって、優れた技術・製品・価格競争力を持つベンチャー・スタートアップ企業をはじめとする中小企業などを発掘し、防衛関連企業や防衛省・自衛隊とのマッチング機会を提供することで防衛産業への新規参入を促進する取り組みであり、40もの企業が出展していた。
スルメの強烈なニオイを一瞬で消す技術や、強風の中でも安定的に飛行できるドローンの開発技術、製品の細かなキズや目に見えないコンクリートのヨゴレなどを丸裸にしてしまう画像鮮明化技術など、素人目に見ても防衛分野に応用可能なポテンシャルの高い技術を持つ企業がたくさん見受けられた(写真撮影が一切禁止だったため、中の様子がお伝え出来ない点はご了承いただきたい)。
今回我々がお話を伺った企業について簡単にご紹介したいと思う。
アイベックステクノロジー㈱
コーデックと呼ばれる映像伝送機器を開発・販売する企業である。
映像を無線やIPで伝送する場合、使用する機器の伝送帯域にもよるが、10Mbps(1秒間に10Mbitのデータが転送できるという意味)以下程度に圧縮する必要がある。
同社では、映像遅延が生じる原因の一つである、映像の圧縮・伸張に要する時間を10msec(=10ミリ秒、0.01秒)で実現する製品を開発したそうだ。
ブースには防犯カメラに伝送機器が接続されていてデモ体験ができるようになっており、担当者が操作レバーを倒すとすぐさまカメラが動き、それに連動した映像があたかもリアルタイムであるかのように、間髪入れずに映し出された。
同社は、建設現場における重機の遠隔操作やカメラ映像監視への導入実績をもつが、個人的意見としては防衛用ドローンなどにも応用できそうだと感じる。
詳細は同社のHP(https://www.ibextech.jp/)を確認されたい。
㈱セック
ソフトウェア開発全般を行っている企業。自動化や自律化システムの作成に同社のリアルタイム技術が生かされているとのことで、自律走行ロボットが部屋の中を走行する映像を見せていただいた。
映像では、事前に指定したライン上をロボットが走行するのはもちろんのこと、「禁止エリア」とユーザが指定した範囲を避けて走行したり、データになかった未知の領域に入っても実際に走行してデータを収集・学習した上で自律的に移動を行ったりするなど、とてもロボットとは思えないフロンティアスピリッツを持った雄姿を見ることができた。
同社のリアルタイム技術は小惑星探査機「はやぶさ」「はやぶさ2」にも利用されたとのことであり、今後の防衛分野での応用が期待される。
詳細は同社のHP(https://www.sec.co.jp/ja/company/profile.html)を確認されたい。
スカイゲートテクノロジズ㈱
IT・サイバー分野を強みとする白石が真っ先に向かったのは、「珊瑚の間」に設けられたセミナーエリア。そこでは、スカイゲート社が「日本独自の領域横断作戦プラットフォーム」というタイトルでセミナーを行っていた。タイトルからひしひしと感じるスケールの大きさに我々は心が躍った。
同社は防衛省や自衛隊出身者によって創業されたテクノロジー企業であり、宇宙防衛向けプロダクトやセキュリティプロダクトの開発・提供を行っているということで、代表の粟津氏自身も自衛隊で通信・サイバー領域を担当していたという。
そんな同社が提供する製品は、「SKYGATE JADC2」だ。同製品は宇宙・サイバー・電磁波領域の民間アセットとオープンデータを活用した領域横断作戦(陸海空のみならず宇宙・サイバー・電磁波といった領域も横断する作戦のこと)上の意思決定を支援するプラットフォームで、セキュリティ、クリアランス、アクセスコントロール、検討プロセスの全てを陸海空横断の共通ユーザインタフェースでサービスを提供することにより、領域横断作戦の指揮統制能力の付与を実現できるとのことだ。
詳細は同社のHP(https://www.skygate-tech.com/)を確認されたい。
双葉電子工業㈱
ドローン検定1級の資格を持つ白石が目を付けたのは、産業用ドローンの開発・製造・販売などを行う双葉電子工業社だ。
同社の強みは、安定飛行を行うドローンだ。人間であれば転倒する者も出始める風速15m/sの強風や大雨といった厳しい環境下においても安定飛行を行うことができるという。
展示されていたドローンは重量6kgということで、おもちゃのドローンしか見たことのない筆者松本はその軽さに驚いたのであった。同社のドローンも様々な防衛用途での運用が期待されるだろう。
詳細は同社のHP(https://www.futaba.co.jp/)を確認されたい。
安井㈱
医療機器の製造・販売を手掛ける安井社のブースに展示されていたのが、LED照明器付き医療用プラスチック鈎(読み:こう、骨と軟部組織の間に差しこみ、骨を起こす際に使用する手術器具のこと)の「コウプライト」である。
同製品は照明器と医療用先端鈎で構成されており、コードレスの照明器はフル充電で2時間使用可能で、3万ルクスのLED光を照射可能とのことだ。今後は、自衛隊病院のみならず、陸自の衛生科部隊の野外手術システムや海自の艦艇内における手術システムに利用されることを想定しているという。
防衛装備品というと、ミサイルや銃などといった「武器」にばかり目が行きがちだが、こういった製品も重要な存在であることを認識させられた。
詳細は同社のHP(https://www.yasui-kk.co.jp/)を確認されたい。
ユースエンジニアリング㈱
冒頭のスルメを展示していたのが、ユースエンジニアリング社が運営するブースである。といってもおつまみを提供していたわけではなく、あくまで次亜塩素酸水「シーエルアクア」のデモ実演のための道具として使用していたにすぎない(笑)
同製品は、原液を医療機器メーカーであるニプロ㈱が供給し、ヘルスサポートサンリ㈱が製品販売するイオンレスの高水準相当の抗菌スペクトルを有し、エアロゾル対策によるクラスター防止と同時に生活環境の消臭が可能で、2年間の長期保存も可能であるという(薬事認証申請中)。
直前までスルメが入っていたタッパーのニオイを嗅がせてもらい、その後同社のスタッフが同製品をその強烈なニオイを放つ容器に吹き付けてから再度ニオイを嗅ぐと…驚くべきことに、全くニオイがしなかった。
同製品は、被災地や南極・砂漠などの地上極限地域などへの利用を想定しているという。なお、ブースには「潜水艦」の文字が書かれたパネルがあったが、潜水艦のような閉鎖空間でニオイの籠りやすい場所には絶大な効果を発揮するのではなかろうか。「ニオイ」も、女性隊員も増えている自衛隊にとっては切実な問題であることを認識することができ、勉強になった。
詳細はヘルスサポートサンリ社のHP(http://www.hs-sanri.jp/)を確認されたい。
㈱ロジック・アンド・デザイン
ロジック社は画像鮮明化のアルゴリズムなどを開発している。デモ実演を見ると、イルミネーションの画像が、鮮明化処理を施されたことによってより鮮やかに写るのみならず、そのそばを歩いている人間の服の色まで判別できるレベルにまでなったり、コンクリート製の橋桁の模様が、まるで顕微鏡で覗いたかのようにくっきり見えるようになったりしていた。
他社が出展していた医療機器や消臭剤といった製品に比べると、防衛装備品としての想像がつきやすいものではあるが、例えば偵察機やドローンにはぴったりの技術かもしれない。
詳細は同社のHP(https://www.lad.co.jp/)を確認されたい。
【感想】
防衛・経済安全保障プラクティスグループを抱える法律事務所として、一般来場者の立場で参加してみたが、とても有意義な時間であった。一般人が容易に想像し得る武器やロボットなどはあまり見当たらず、どちらかというと縁の下の力持ち的な技術が多かったが、それらも国防を支える極めて重要な技術であるということを学ぶことができた。それぞれの企業が単一の技術を展示していたが、例えば飛行型・走行型ドローンに搭載したカメラで撮影した映像を鮮明化処理したり、その映像をリアルタイムで操縦者や司令部に伝送したりするなど、出展企業間の個々の技術を組み合わせることにより、防衛力の向上に繋げることができるのではないかと感じた。
我々TMI防衛・経済安全保障プラクティスグループは、今後も防衛ニュースを配信してまいりますので、ご興味がありましたら「#経済安全保障 の記事一覧」をご覧いただけますと幸いです。
TMI防衛・経済安全保障プラクティスグループ
防衛関連ニュース担当
弁護士/白石和泰・山田怜央・張壮壮・牧昂平・國井耕太郎
法務(パラリーガル)/松本ティモスィー俊樹
メールアドレス:defense_blog@tmi.gr.jp
以上
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