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[インドネシア法務ニュース] 新規則施行 – 電子システムにおける児童保護に関する特則
2025.06.10
インドネシア政府は、「児童保護に関する電子システムの運用に関する政府規則2025年第17号」(以下「2025年政府規則第17号」)を正式に公布し、2025年4月1日より施行しました。本規則は、「電子情報及び取引に関する法律(2008年法律第11号、改正済)」(通称EIT法)及び「個人データ保護法(2022年法律第27号)」(PDP法)を実施するための下位法の一つとして位置づけられています。2025年政府規則第17号は、電子システム提供者(Penyelenggara Sistem Elektronik、以下「PSE」)に対して、児童保護に関する具体的な義務を定めています。
適用対象
2025年政府規則第17号は、児童を主な対象とする、又は児童がアクセス可能な製品・サービス・機能を提供するすべての公的及び民間のPSEに(国内外を問わず)適用されます。「PSE」とは、自らの目的又は他者のために電子システムを提供、運営、管理する個人、政府機関、法人又は団体を指します。そのため、インドネシアに登録された外国のPSE(PSE asing)も本規則の対象となります。
年齢要件
2025年政府規則第17号において「児童」とは、18歳未満の者と定義されます。また、PSEには、製品・サービス・機能の利用に際し、「年齢区分」の提示が義務付けられており、製品やサービスの内容が児童の年齢に適したものであることを確保する必要があります。年齢区分は以下の通りです。
- 3~5歳
- 6~9歳
- 10~12歳
- 13~15歳
- 16~18歳未満
PSEは、利用者が上記年齢区分に適合しているかを確認する年齢検証措置を講じ、当該児童が3歳以上であることを確認する必要があります。
さらに、プラットフォームを利用するためにアカウント登録が必要な場合、以下の条件を満たすものである必要があります。
- 13歳未満:保護者の同意を得た上で、低リスクかつ児童向けに設計された製品・サービス・機能に関連するアカウントを作成することが可能
- 13~16歳未満:保護者の同意を得た上で、低リスクの製品・製品・機能に関連するアカウントを作成することが可能
- 16~18歳未満:保護者の同意を得た上で、全ての製品・サービス・機能に関連するアカウントを作成することが可能
2025年政府規則第17号は、保護者の同意を得る必要性を強調し、PSEに対し、児童へのアクセスを許可する前に、児童の親及び/又は法定後見人の同意を取得するための適切なメカニズムを構築するよう求めています。また、PSEは、親の同意を得るために「合理的な」時間枠を設けなければならないと定めています。具体的には、17歳以上の児童について、本人が最初の同意をすることができるものの、その後、PSEは親/後見人に通知する必要があり、当該通知後6時間以内に異議がない場合に限り、本人の同意が有効とみなされます。
親/後見人の同意が得られない又は親/後見人の同意を得ずに児童のみが同意した場合には、PSEは児童に対してサービスを提供してはならず、また、収集したデータを削除する必要があります。
リスク評価の実施義務
PSEは、自社の製品・サービス・機能が児童に対して高リスクか低リスクかを自己評価する義務を負います。評価は以下の観点に基づいて行われる必要があります。
- 知らない他者との接触の可能性
- ポルノ・暴力・自殺・不適切な内容への露出
- 消費者としての児童の搾取
- 児童の個人データの安全性の脅威
- 中毒性のリスク
- 児童の精神的健康への悪影響
- 児童の生理的障害のリスク
評価の結果、上記いずれかの項目で高リスクと評価された場合は、「高リスク」カテゴリーとみなされます。
その他の義務
2025年政府規則第17号は、以下を含む義務をPSEに課しています。
- 保護者からの同意取得
- 個人データ保護影響評価の実施
- 児童が使用若しくはアクセスすることを特に想定した、又は児童が使用若しくはアクセスする可能性のある製品・サービス・機能の設定を、デフォルトで高いプライバシーレベルで設定すること
- 製品・サービスに関する正確かつ誤解を招かない情報の提供
- デジタルエコシステムの教育及びエンパワーメントの実施
- 製品・サービス・機能に関連する児童の行動・位置追跡の通知機能の提供
- 児童の年齢に応じた機能の提供
- インターネット接続可能なおもちゃ等における個人データ処理責任者の明確化
- 児童保護に適合した第三者との連携体制の構築
- 個人データ保護を担う責任者の任命
制裁措置
違反に対しては、インドネシア通信・情報省(COMDIGI)により以下の行政制裁が課される可能性があります。
- 書面による警告
- 行政過料
- 一時的な業務停止
- アクセス停止
なお、COMDIGIは、すべてのPSEの活動を監督する等、2025年政府規則第17号の実施に関する監督権限を有しています。
経過措置期間
2025年政府規則第17号に適合するための2年間の経過措置期間が付与されており、PSEは、この間にシステム、ポリシー、業務運用体制の見直しを行うことが求められます。なお、詳細な運用に関しては、COMDIGIより省令が定められる見込みです。
日本企業への影響
PSEに該当する日系企業(インドネシア国内外)は、経過措置期間の満了する2027年4月1日までに、インドネシアにおける事業において児童がアクセス可能な製品・サービス・機能を提供していないかどうか検証し、そのような事業がある場合にはリスク評価の実施、保護者の同意を得る適正なプロセスの策定、利用規約やプライバシーポリシーの見直し等を行い、2025年政府規則第17号に準拠するよう適切な対応を講じる必要があります。
TMIインドネシアプラクティスグループ