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【労働法ブログ】令和7年年金制度改正法の成立について
2025.06.20
はじめに
厚生労働省は2025年5月16日に、「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」を国会に提出しました。
この法律案は、与野党による協議を経て、衆議院で修正がなされ、同年6月13日に成立し、同月20日に令和7年法律第74号として公布されました。
本稿では、この令和7年年金制度改正法について、公的年金・私的年金それぞれの主な改正事項を紹介します。なお、用語については、法令・厚生労働省の法律案説明資料に準拠しています。
また、この法律案の検討の材料となった2024年財政検証結果を踏まえた、「次期公的年金制度改革の検討事項と企業の人事労務との関係」(2024年6月21日)【https://www.tmi.gr.jp/eyes/blog/2024/15866.html】では、公的年金制度の改正の背景等についても説明しておりますので、あわせてご覧ください。
公的年金制度改正
(1)社会保険(厚生年金・健康保険)の加入対象の拡大
中小企業の短時間労働者などが、厚生年金や健康保険に加入し、厚生年金を受け取ることなどができるように、社会保険の加入対象が拡大されます。
まず、短時間労働者の加入要件が見直されました。
これまでは、(1)週労働時間20時間以上、(2)月額賃金8.8万円以上(年収換算で約106万円以上)(所定労働時間や所定内賃金で判断し、残業時間(代)等を含まない)、(3)勤務期間1年以上の見込み、(4)学生は適用除外、(5)従業員51人以上の企業等(加入拡大前の基準で適用対象となる労働者の数で算定)の要件がありましたが、(2)の要件と(5)の要件が見直されます。
(2)については、いわゆる「106万円の壁」と呼ばれるものでしたが、全国の最低賃金の引上げの状況を見極めて、改正法の公布の日から3年以内に撤廃することとされました。既に、地域別最低賃金(最低時間賃金額)は、全国的に950円を超えており、(1)の要件を満たす場合には、月額賃金が8万2,000円程度となってきていますが、時給が1,016円まで上昇すると月額賃金が8万8,000円を超えるため、制度の改正がない場合でもいわゆる「106万円の壁」を超えることになります。このような状況を踏まえ、今般いわゆる「106万円の壁」となる要件を法律から削除することになります。
なお、この賃金要件の撤廃については、当分の間の例外として、最低賃金法による最低賃金の減額の特例を受けている労働者については、賃金月額が8万8,000円に満たない場合には社会保険の加入者としない措置が設けられています。
(5)については、短時間労働者の加入要件が適用となる企業規模(※1)を、10年間かけて見直すこととなりました。
2024年10月以降、従業員51人以上の企業が対象となっていましたが、これを次表のように見直すこととなりました。
51人以上 |
36人以上 |
21人以上 |
11人以上 |
10人以下 |
現在の対象 |
2027年10月から |
2029年10月から |
2032年10月から |
2035年10月から |
このように、細かく段階を区切って、法律の公布から10年後に最後の改正が行われるということは珍しいですが、社会保険の事業主負担が発生することに対して、小規模の企業への配慮が行われているものと考えられます。
※1 短時間労働者の加入要件が適用となる企業規模を満たさない企業に勤めている場合には、社会保険の加入については、所定労働時間がフルタイム労働者の4分の3以上であるなどの要件を満たす必要があります。
また、短時間労働者に限らず、個人事業所で働く方が社会保険に加入するには、個人事業所が、
・常時5人以上の労働者を使用するものであること
・法律で定める17の業種に該当すること
という要件を満たす必要がありました。
今般の改正では、業種に関する要件を撤廃することで、これまで対象となっていなかった業種(※2)の常時5人以上の労働者を使用する個人事業所で働く方が、社会保険の加入対象となります。
ただし、経過措置により、施行日である2029年10月の時点で既に存在する事業所は、当面は加入の対象外となります。なお、この場合でも、労使の合意による任意加入は可能となっています。
※2 例えば、農業・林業・漁業、宿泊業、飲食サービス業、洗濯・理美容・浴場業などが該当します。
なお、企業規模要件の見直しなどにより新たに社会保険の加入対象となる短時間労働者に対して、3年間、事業主の追加負担により、社会保険料の負担を軽減できる特例的・時限的な措置が実施されることとなります。事業主が追加負担した保険料について、国などがその全額を支援することとされます。
(2)在職老齢年金の見直し
在職老齢年金制度とは、厚生年金の適用事業所で就労し、一定以上の賃金を得ている厚生年金受給者を対象に、原則として被保険者として保険料負担を求めるとともに、老齢厚生年金の支給を全部又は一部停止する仕組みです。
2025年度では、老齢厚生年金(基礎年金は含みません)と賃金の合計が51万円(支給停止基準額)を超えると、51万円を超過した額の半分の老齢厚生年金が支給停止されることとなっています。
今回の改正では、高齢者の活躍を後押しし、ライフスタイル等の多様化の反映、働きたい人がより働きやすい仕組みとする観点から、この支給停止基準額が引き上げられることになりました。
具体的には2026年4月からは、この支給停止基準額が62万円(2024年度の金額)となります。
これにより、これまでは老齢厚生年金が支給停止となっていた方も、働きながら、制度改正前より多くの老齢厚生年金を受給することが可能となります。
在職老齢年金の制度見直し(働く高齢者に対しこれまで以上に老齢厚生年金を支給すること)については、「次期公的年金制度改革の検討事項と企業の人事労務との関係」(2024年6月21日)でも触れたとおり、将来の年金給付の水準に小さいながらもマイナスの影響を与える面がありますが、厚生労働省は、そのような観点から「現行制度を維持すべきという意見があることは承知しています」としつつも、「在職老齢年金制度の見直しを含め、制度改正全体で見れば、将来の給付水準が上昇します」と説明しています。
なお、上記のとおり、改正後の支給停止額は、改正後の厚生年金保険法では62万円となっておりますが、実際には施行日である2026年4月の前年の2025年の賃金変動率によって改定されることとなりますので、施行時点における支給停止基準額は、概ね、その年の1月下旬における2026年度の年金額の公表と同時に発表されると見込まれます。
(3)保険料や年金額の計算に使う賃金の上限の引上げ
厚生年金保険では、保険料や将来の年金給付額の計算に関しては、いわゆる「標準報酬制」を用いています。
現在、厚生年金保険では、一番低い等級が8万8,000円(報酬月額9万3,000円以下)で、一番高い等級は65万円(報酬月額63万5,000円以上)となっています。
このため、現在の標準報酬月額の上限を超える給与などを受け取っている方は、実際の給与などに対する保険料の割合が低く、将来、収入に応じた年金を受け取ることができない状態となっています。
今般の改正で、保険料や年金額の計算に使う賃金の上限の引上げを行い、一定以上の月収のある方が、賃金に応じた保険料を負担するようになる、現役時代の賃金に見合った年金を受け取りやすくなるとされています。
具体的には、標準報酬月額の上限が、2027年9月から68万円(報酬月額66万5,000円以上)、2028年9月から71万円(報酬月額69万5,000円以上)、2029年9月から75万円(報酬月額73万円以上)に段階的に引き上げられます。
なお、各年の9月から引き上げられることとなっているのは、標準報酬月額は、原則として、4月から6月までの報酬をもとに算定され、9月から適用されることになっているためです。例えば、2027年の4月から6月までの3か月間の報酬の平均額が66万5,000円以上の場合は、2027年9月からの標準報酬月額は68万円と算定されます。
この改正により、従前の最高等級であった65万円の標準報酬月額の等級に属していた方の標準報酬額が増加することとなり、本人と事業主が折半して支払うこととなる保険料が増加することになり、その分、本人が受給する年金額が増加することになります。
なお、この改正により増加することとなる保険料額に対応する年金給付の額は、基本的には増加した保険料を負担した層が老齢厚生年金を受け取るときになった初めて増加することになるため、その間、増加した保険料収入に対する運用益が発生することとなるため、年金財政全体に対してもプラスの影響があると厚生労働省において試算されています。
(4)遺族年金の見直し
現在の遺族厚生年金制度では、配偶者である夫を亡くした妻は、配偶者の死亡時点で30歳未満の場合は5年間の有期の遺族厚生年金が、30歳以上の場合は無期の遺族厚生年金が支給されることになっている一方で、配偶者である妻を亡くした夫は、配偶者の死亡時点で55歳未満の場合は遺族厚生年金を受給することができず、55歳以上の場合は60歳から無期の遺族厚生年金を受給することができることとなっており、支給要件について男女差があります。
この男女差の解消のため、2028年4月以降は、遺族厚生年金制度が次のように改正されます。
・男女ともに、配偶者の死亡時に60歳未満の場合は、5年間の有期の厚生年金が支給される。
・支給される有期の遺族厚生年金は、新たに「有期給付加算」が上乗せされ、現在の遺族厚生年金の額の約1.3倍の額となる。
・これまでは遺族厚生年金の支給が停止されていた年収850万円以上の方に対しても、遺族厚生年金が支給される(年収要件の撤廃)。
・配慮が必要な方(障害状態にある方(障害年金受給権者)や、収入が十分でない方)については、「有期給付加算」が上乗せされた遺族厚生年金を6年目以降も継続して受給できる。
この改正により、支給要件での男女差は解消されますが、これまでは無期の遺族厚生年金を受給できることとなっていた層(30歳以上の女性)については、遺族厚生年金を受給できる期間に相当の変化が生ずるため、2028年度に40歳以上となる妻については、新たな制度を適用せず、従前の要件で受給できる経過措置(配慮措置)が設けられています。
また、配偶者の死亡時に60歳以上である夫又は妻も、これまでどおり、無期の遺族年金を受給することができます。
また、ここまでの記述は、「子のいない、配偶者を亡くした夫又は妻」を対象としたものであり、18歳未満の子がいる夫・妻は、現在も改正後も、変わらず遺族厚生年金を受給することができ、今般の改正により、子が18歳となってから5年間は「有期給付加算」が上乗せされた遺族厚生年金を受給でき、さらに、配慮が必要な場合は継続給付の対象となります。
さらに、報酬の高い配偶者が亡くなった場合には、配偶者の厚生年金の記録(標準報酬)を分割することで、残された方(遺族)の老齢厚生年金の額が増額されることになります。これは、遺族厚生年金自体は原則有期の給付になる中で、遺族である配偶者の高齢期における所得の確保に資するものです。
今回の遺族厚生年金の見直しでは、新たに子の加算が新設されます。子の加算に関する見直しは遺族年金制度だけではなく老齢年金、障害年金全般に対して行われますが、全体として、子の加算の対象となる範囲が広げられるとともに、加算額が増額されます。特に、これまでの遺族基礎年金等にあった子の加算では、第3子以降は加算額が大幅に減少することになっていましたが、見直し後は、第3子以降も第1子・第2子と同額の加算がなされることになります。
このほか、遺族基礎年金について、子を養育している人の状況にかかわらず、子が遺族基礎年金を受給できるようになる見直しも行われます。
今回の遺族年金制度の見直しの中で、一番大きなインパクトがあるのは、遺族厚生年金の男女差の解消に関するもので、特に、妻(女性)にとっては大きな変化があるものです。
この見直しは、2028年度に39歳以下の妻から対象となり、この世代が60歳になるまでの20年間かけて、「支給の有期化」が行われていきます。
男女の賃金差など、労働市場における男女を取り巻く環境は、依然、平等なものとなっているとはいえない面があります。
そのような中で、この遺族厚生年金の見直しは、「支給の有期化」を図ることで、(子がいる場合は子が18歳になるまで引き続き遺族厚生年金を受給できるものの)配偶者の死亡から5年以内には、自ら働いて生活を維持していく、ということが求められる、という要素があります。
政府の社会保障審議会年金部会における遺族年金の見直しの議論において、委員からは次のような発言がありました。
- この遺族年金の無期給付であるというのは、議論した昭和の時代に30代、40代の女性がきちんとした仕事に就いて家族を支えることは無理だという判断があったという話がありました。そのような時代から数十年でこれだけ変わってしまうわけでございますので、今回のような遺族年金の制度改正は社会の変化に追いついていくためのいい対応だろうと思います。
- 男女の差を解消するということがテーマの一つに大きくなっていると思いますけれども、それ自体はすごく大事なことだと思います。一方で、実際にはまだまだ若い世代であったとしても、子育て世代であったとしても、家庭内における男女の役割分担というのは存在しているのが実態かと思います。これはどのようなことで起こるかというと、主に男性の中の当たり前の違いみたいなところでしょうか。あるいは女性よりも男性の方がやはり賃金が高いとか、昇進が見込めるので、そちら側に頑張ってもらったほうが家庭全体としてはメリットがあるとか、いろいろな考え方があると思いますけれども、そんなことで実際には男女差はあるのが実態かと思います。ですので、この男女差の解消ということを前提としながらも、そのことが結果的に女性に不利益にならないようにということで、社会全体を変えていくということがとても大事になるのではないかなと思いました。
このように、今回の遺族年金の見直しは、順序として望ましいことであるか否かの議論はあるものと思われますが、労働市場や家庭における「男女差」を見直していく、という問題を社会全体に投げかけているものでもあるといえます。
配偶者の死亡を契機に働き始める/仕事に復帰する、又は、配偶者の死亡前からずっと働き続ける、など、個人によっても状況は様々ですが、これらの方が活躍する場を労働市場としてどう提供するか、ということも問われる改正であると考えます。
(5)その他の改正事項
その他、遺族厚生年金の受給権が発生して以降も、遺族厚生年金の請求を行っていない場合には、老齢厚生年金の支給繰下げを可能とすることや、再入国の許可を受けて日本を出国した方は、当該許可を受けている間脱退一時金の請求ができないものとすること等の改正事項があります。
また、2025年5月30日に衆議院で可決された修正で、次の財政検証(通例では2029年頃が見込まれます。)において、基礎年金と厚生年金で必要なマクロ経済スライドによる調整期間に著しい差異があり、公的年金制度の所得再分配機能の低下により基礎年金の給付水準の低下が見込まれる場合には、調整を同時に終了させるために必要な法制上の措置を講ずることが、改正法の附則に定められました。
これは、政府による法案の提出前後、修正案の可決前後で様々な意見があった論点ですが、公的年金の給付水準の維持のため、制度全体をどう考えるか、引き続き社会全体で議論が必要になると見込まれます。
マクロ経済スライドによる基礎年金の調整を早期に終了し、(早期に終了しない場合と比べて)基礎年金の水準を維持する、ということは、基礎年金給付費の2分の1を国庫が負担していることとの関係上、この国庫負担の水準の維持に必要な財源をどう考えるかという議論も必要となるかもしれません。
いずれにしても、現状の人口構造等に照らして、将来に向けて公的年金の給付水準をどのように確保していくか、という点については、今回の改正後も、大きな検討事項として残ることになります。
私的年金制度改正
(1)iDeCoの加入可能年齢の上限引き上げ
iDeCoについては、私的年金制度が公的年金制度の「上乗せ」であるとの整理のもと、現行では、加入要件が、「国民年金被保険者であって、老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受給していない者であること」とされています。
この点に関し、2022年11月に政府の「新しい資本主義実現会議」で決定された、「資産所得倍増プラン」において、「働き方改革によって、高年齢者の就業確保措置が70歳まで伸びていること等を踏まえ、iDeCoの加入可能年齢の上限を70歳未満に引き上げるために必要な措置を講ずることと」とされたことを踏まえ、現在の要件である国民年金被保険者に加え、公的年金への保険料を納めつつ、上乗せとしての私的年金に加入してきた者が、引き続き老後の資産形成を継続できるようにする観点から、現行の加入要件に該当しない60歳から70歳までの方であって、
・申出の日の前日において個人型年金加入者であった方又は個人型年金運用指図者であった方
・個人別管理資産の移換の申出をした方
・脱退一時金相当額の移換の申出をしようとする方
・残余財産の移換の申出をしようとする方
・積立金の移換の申出をしようとする方
で、老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受給していない方にiDeCoの加入・継続拠出を認めるよう、確定拠出年金法の改正が行われました(改正法の公布の日から3年以内に施行)。
(2)企業型DCの拠出限度額の拡充
企業型DCの加入者が、事業主の拠出に上乗せして拠出できる加入者掛金(マッチング拠出)に関し、上乗せ拠出する加入者掛金の額が事業主掛金の額を超えられないという制限について、拠出限度額の枠を十分に活用できるようにするため、この制限を撤廃するよう、確定拠出年金法の改正が行われました(改正法の公布の日から3年以内に施行)。
(3)企業年金の運用の見える化
企業年金の運営状況の情報を厚生労働省がとりまとめて公表することで、他社との比較や分析を行えるようにし、加入者等の最善の利益のために運営を改善できるよう、確定給付企業年金法及び確定拠出年金法の改正が行われました(改正法の公布の日から5年以内に施行)。
なお、この運営状況の公表は、2024年12月にとりまとめられた「社会保障審議会企業年金・個人年金部会における議論の整理」において
・確定給付企業年金(DB)は毎事業年度の事業報書・決算に関する報告書の報告項目
・企業型確定拠出年金(企業型DC)は毎事業年度の事業主報告書・確定拠出年金運営管理機関業務報告書の報告項目
をベースとするとされています。
当該「議論の整理」では、これにあわせ、DBにおける運用状況(運用の基本方針等)や専門人材の活用に係る取組状況など、新たに報告が必要な事項はDB・企業型DCともに報告書の項目に追加することとされており、今後、厚生労働省令において新たな報告書の項目が定められるものと見込まれます。
(4)企業型DC・iDeCoの拠出限度額の引上げ
法改正事項ではありませんが、2025年税制改正大綱において、確定拠出年金法等の改正を前提に、企業型確定拠出年金(企業型DC)・個人型確定拠出年金(iDeCo)等拠出限度額の引上げを行うこととされました。拠出限度額の引き上げの主な内容については次のとおりです。
・第2号被保険者の企業型DCの拠出限度額を月額6.2万円に引き上げる(現行:月額5.5万円)。
・第2号被保険者のiDeCoの拠出限度額を月額6.2万円に引き上げる(現行:月額2.0万円又は2.3万円)。
・第1号被保険者の拠出限度額(iDeCoと国民年金基金で共通)を月額7.5万円に引き上げる(現行:月額6.8万円)。
(5)その他の改正事項
その他、簡易企業型年金を廃止するなどの改正事項があります。
なお、2013年の厚生年金基金制度に関する法改正で、2024年3月までに、「存続厚生年金基金が解散し又は他の企業年金制度等に移行し、及び存続連合会が解散するよう検討し、速やかに必要な法制上の措置を講ずるものとする」との検討規定が定められていましたが、政府における検討の結果、「厚生年金基金を存続するとしても経過的な存続に留めるべきである」としつつ、「諸課題に対する検討をさらに深めていくこととする」とされ、存続厚生年金基金の解散等に関する法制上の措置は、今般の改正では講じられないこととされています。
終わりに
いわゆる「106万円の壁」、在職老齢年金制度、遺族厚生年金制度の見直しなど、年金制度の在り方は、どのように働くか、いつまで働くか、働く環境は整っているか、など、個人のライフスタイルや労働市場にも密接にかかわっています。
基本的には社会経済状況の変化に合わせ年金制度がアップデートされていく、という関係であると考えますが、年金制度の改正と相まって社会経済状況の変容を促していく、ということもありうる話です。
単に「年金財政の問題」=「十分な給付ができないから働くしかない」という議論にならないためにも、「年金制度が(例え被保険者・受給者から見て有利と思われる制度であっても)労働市場を含む社会経済の変容の阻害要因になっていないか」という観点ももちつつ、年金制度や個人のライフスタイル、労働市場等に関する総合的な議論が今後も必要であると考えます。
以上
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