ブログ
【韓国】【商標】近時の韓国商標法改正について
2026.01.19
はじめに
韓国において、2024年から2025年にかけて改正商標法が施行されています。実務上、大きな影響のあるコンセント(同意書)制度の導入のほか、ブランド保護の実効性を高める改正がされました。以下に主な改正点をご紹介いたします。
商標コンセント(同意書)制度の導入(2024年5月1日施行)
2024年の改正商標法施行により、「商標コンセント(同意書)制度」が導入されました(商標法第34条1項7号但書)。これは、先出願/先登録商標との類似を理由に出願が拒絶された場合、先出願/先登録の権利者から承諾(同意書)を得ることができれば出願商標に対する登録を認める制度です。本制度の導入前は、共存登録のためにはアサインバック(出願人の名義を一時的に先登録の権利者の名義に変更し登録査定を受けた後、元の出願人の名義に戻す方法)などの方法を利用することが多く、手間とコストがかかる不便性がありました。この問題を解消し、また国際的な制度調和を目的として、コンセント制度が導入されました。
日本においても2024年4月1日よりコンセント制度が導入されましたが、日本では引用登録商標権者の承諾があっても、なお両商標の間で混同を生ずるおそれがある場合には併存登録を認めない「留保型コンセント制度」が採用されています。一方で、韓国は「完全型コンセント制度」を採用しているため、韓国特許庁は同意書が提出されれば先出願/先登録商標との混同有無に関わらず商標登録を認めることになります。なお、同一商標/同一指定商品に対してはコンセント制度が適用されない点は注意が必要です。
また、コンセント制度の導入に伴い、需要者の誤認混同を防止する措置として、同制度を通じて登録された商標間で誤認混同が発生した場合にはその登録を取消すことができる制度も導入されています(商標法第119条1項5号の2)。
韓国特許庁によれば同制度の施行後6カ月で約600件もの共存同意申請がされたとのことです。「完全型コンセント制度」が高い利便性を有する点に加えて、韓国では施行日前にされた出願であっても施行以後に登録可否が決定される出願であれば同意書による対応が可能である点も、利用実績が多くなっている理由と考えられます。なお、ほぼ同時期にコンセント制度を導入した日本では、施行日以降にされた出願から改正法が適用されます。日本ではコンセント制度を利用して登録査定がされた件数は2026年1月13日現時点で約27件であることと比較しても、韓国においてコンセント制度が広く利用されていることが分かります。
模倣品の越境取引の取り締まり強化(2025年5月27日施行)
この度の改正で、「外国において商品または商品の包装に商標を表示したものを、運送業者など他人を通じて韓国国内に供給する行為」も「商標の使用」に該当することが明文化されました(商標法第2条1項11号ハ)。商標権侵害の成立には「商標の使用」の証明が必要であるところ、従来は個人が海外から直接購入した商品の輸入が「商標の使用」に該当するか否かが明確ではありませんでした。今回の改正により、このような行為が「商標の使用」に該当することが明白となり、個人輸入される侵害品を実効的に取り締まる明確な法的根拠が整備されました。税関における侵害品の取り締まりが強化されることが期待されます。
異議申立期間の短縮(2025年7月22日施行)
異議申立期間が従来の2か月から30日に短縮されました(商標法第60条1項)。本改正は出願公告日が2025年7月22日以降の商標登録出願について適用されます。
異議申立期間の短縮に伴い、出願人の立場からは迅速に権利を確保できることとなります。
一方で、異議申立を検討する立場からすれば、よりタイムリーなモニタリングが必要となります。出願商標は審査前の段階で公開されますので、不登録事由があると考える第三者商標が発見された場合には、出願商標の審査段階で特許庁へ情報を提供する「情報提供制度」を活用し、登録を阻止することも考えられるでしょう。
懲罰的損害賠償額上限の引き上げ(2025年7月22日施行)
故意による商標権侵害についての損害賠償額の上限が、損害と認められる額の3倍から5倍へ引き上げられました(商標法第110条7項)。韓国において模倣品の流通が増加しているところ、より強い権利保護を目的として懲罰的損害賠償の引き上げがなされました。本改正法は施行日後に発生した侵害行為から適用されます。
おわりに
今回ご紹介した法改正のうち、実務においてはコンセント制度の導入が特に大きな影響を与えるものと考えます。類似先行商標を克服するための手段として従来用いられていたアサインバックは手続上の負担が大きく、特に、出願人が既に類似商標の登録を有している場合や、先行商標の権利者が複数いるような場合には手続がより煩雑となり、アサインバックの利用が難しいケースもありました。今回導入された「完全型コンセント制度」は手続負担も少なく、また特許庁による混同の有無の判断がされないため、利便性が高いものとなっています。上述のように韓国では既に本制度が活用され、登録実績が増加しています。こうした実例の蓄積により、今後一層活発な利用が見込まれると考えます。
また、模倣品の越境取引の取り締まり強化、懲罰的損害賠償額上限の引き上げは、ブランド保護をより手厚くするものであり、韓国での更なる権利活用が期待されます。
Member
PROFILE
