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【改正医療法】連載:令和7年医療法改正とオンライン診療規制 第1回 オンライン診療を取り巻く制度の沿革と改正の経緯
2026.07.13
はじめに
令和8年4月1日、医療法等の一部を改正する法律(令和7年法律第87号。以下「改正法」といいます。)のうちオンライン診療に関する部分が施行されました。これにより、これまで通知・指針という「解釈運用」のレベルで取り扱われてきたオンライン診療について、初めて医療法上に定義されることとなりました。
本連載では、この改正の内容を5回にわたって解説します。
第1回は、改正に至るまでの制度の沿革と背景を整理します。
オンライン診療とは
改正法の解説に先立ち、まず基本的な用語を整理しておきます。
「オンライン診療」とは、医師の使用に係る電子計算機と患者の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続し、映像および音声の送受信により、医師または歯科医師および遠隔の地にある患者が相手の状態を相互に認識しながら通話することが可能な方法による診療をいいます(医療法第2条の2第1項)。
すなわち、ビデオ通話による診療をいいます。
これは、より広い概念である「遠隔医療」(情報通信機器を活用した健康増進・医療に関する行為の総称)の一形態です。
また、単なる文字や写真・録画動画のみのやりとり(メールやチャットによる診療)とは区別されます。
制度沿革――「解釈運用」から「法令」へ
オンライン診療を取り巻く制度は、現在では、医師法と医療法という2つの異なる法律が交錯する複雑なものとなっていますが、歴史的には医師法との関係で議論されてきました。
具体的には、医師が治療や処方を行う際には、自ら診察することを定めた医師法20条です。
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医師法20条 |
つまり、対面ではない情報通信技術を用いた形態(ビデオ通話)での診察は、医師が「自ら診察」しているといえるのか?が問題となります。
この点について、規制当局である厚生労働省は、長い間、解釈による運用を行ってきました。
(1)1997年:最初の行政解釈
平成9年(1997年)、厚生省(現・厚生労働省)が「情報通信機器を用いた診療(いわゆる『遠隔診療』)について」と題する通知を発出しました。これが遠隔診療(現:オンライン診療)に関する最初の公式な行政解釈であり、一定の要件のもとであれば遠隔診療は医師法第20条(無診察治療の禁止)に違反しないとの考え方が示されました。
この通知で特に重要なポイントは、以下の部分です。
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医師法第20条等における「診察」とは、問診、視診、触診、聴診その他手段の如何を問わないが、現代医学から見て、疾病に対して一応の診断を下し得る程度のものをいう。したがって、直接の対面診療による場合と同等ではないにしてもこれに代替し得る程度の患者の心身の状況に関する有用な情報が得られる場合には、遠隔診療を行うことは直ちに医師法第20条等に抵触するものではない。 |
これは、その時の医学的な常識からして、疾病に対して一応の診断を下し得る程度の患者に関する情報が得られる場合には、医師法第20条に違反するものではない、という解釈を示しています。
(2)2018年:オンライン診療指針
平成30年(2018年)には、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(以下「指針」といいます。)が策定されました(令和8年4月最終改訂)。
これは、指針で示されている「最低限遵守する事項」を守れば医師法第20条に抵触しない、という建付けで策定されたものです。
策定当時は、初診については対面診療を原則とし、初診からオンライン診療をしたら医師法違反である、というルールになっていました。
(3)2020~2022年:コロナ禍をきっかけとした規制緩和
転機となったのは令和2年(2020年)のコロナ禍です。
「時限的・特例的取扱い」として、初診からのオンライン診療が解禁されました(令和2年4月10日付け事務連絡)。
そして、この特例措置によって実施されたオンライン診療の実情を踏まえ、令和4年(2022年)に、さらなる規制緩和がなされることになります。
すなわち、令和4年の指針改訂によって、初診からのオンライン診療が恒久的措置として認められることとなりました。また、同年の診療報酬改定においても、オンライン診療に係る初診・再診の評価が新設されました。
法改正に至った背景――顕在化した課題
こうした規制緩和と普及拡大の一方で、深刻な問題も浮上してきました。初診からの向精神薬の処方、チャットのみによる診療、GLP-1受容体作動薬やED治療薬等の安易な処方といった不適切事例が増加しました。
法改正前は、医事法制上、オンライン診療の明文の定義が存在せず、指針はあくまで「これを守れば医師法第20条に違反しない」という位置づけの通知であり、法的拘束力が弱く、行政処分の根拠としても不十分でした。
また、オンライン診療の「推進」の側面にも課題がありました。
医療資源が不足する地域においてオンライン診療は有用である反面、患者がオンライン診療を受ける物理的な場所の確保が困難であるなどの課題です。
これらの課題を踏まえ、「適切な」オンライン診療の「推進」を目指すという二面的な目的のもと、令和7年の医療法改正が行われました。
厚生労働省は、この改正の趣旨を、「適切なオンライン診療をさらに推進するため、現行制度の運用を活かす形で、医療法にオンライン診療の総体的な規定を設けるもの」と説明しています。

改正法の基本情報
最後に改正法の基本情報を整理しておきます。
改正法(医療法等の一部を改正する法律・令和7年法律第87号)は令和7年(2025年)2月14日に閣議決定され、令和7年12月12日に公布されました。
オンライン診療に関する部分については令和8年(2026年)4月1日に施行されており、関連する政令(令和8年政令第66号)・省令(令和8年厚生労働省令第46号)・告示(令和8年厚生労働省告示第115号)もそれぞれ令和8年3月27日に公布され、令和8年4月1日より施行されています。
また、施行通知として医政発0327第5号(令和8年3月27日付け厚生労働省医政局長通知)が発出されています。
次回は、改正法において定められたオンライン診療規制の体系を解説します。
【関連リンク】
■ 医療法改正関係
• 医療法等の一部を改正する法律
https://www.mhlw.go.jp/content/001681278.pdf
• 医療法施行令等の一部を改正する政令
https://www.mhlw.go.jp/content/001681281.pdf
• 医療法施行規則等の一部を改正する省令
https://www.mhlw.go.jp/content/001681282.pdf
• 「オンライン診療に関するQ&A」(令和8年3月作成)
https://www.mhlw.go.jp/content/001681026.pdf
■ 施行通知
• 「医療法等の一部を改正する法律の一部の施行等について(オンライン診療関係)」(令和8年3月27日付け医政発0327第5号厚生労働省医政局長通知)
https://www.mhlw.go.jp/content/001681277.pdf
■ オンライン診療指針・Q&A(令和8年4月改訂版)
• 「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(令和8年4月改訂)
https://www.mhlw.go.jp/content/001685701.pdf
• 「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に関するQ&A
https://www.mhlw.go.jp/content/001686805.pdf
■ 平成9年通知
• 「情報通信機器を用いた診療(いわゆる「遠隔診療」)について」(平成9年12月24日付け健政発第1075号厚生省健康政策局長通知)
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001233138.pdf
■ 令和2年コロナ特例(0410事務連絡)
• 「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて」(令和2年4月10日付け事務連絡)
https://www.mhlw.go.jp/content/000620995.pdf
■ 参考:厚生労働省「オンライン診療について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/index_0024_00004.html
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