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タイ法務のプラクティス(第5回)
2026.08.26
第5回も、前回までのタイの外資規制の概要の続きとなります。
今回は、④に関連して、BOIによる投資奨励制度についてご説明いたします。
BOIによる投資奨励制度
タイにおける特徴的な制度として、Thailand Board of Investment(タイ投資委員会。以下「BOI」といいます。)による投資奨励の制度があります。BOIとは、タイ経済に有益な投資を促進することを目的として設置されたタイ首相府所管の機関であり、BOIによる投資奨励を受けることで、法人(「外国人」に限りません。)がタイ国内への一定額の投資を行うことを条件として、税制上・非税制上の様々な特権を享受できます。
税制上の特権としては、法人所得税の免除、機械の輸入に係る関税の免除、原材料の輸入に係る関税の免除などが挙げられ、非税制上の特権としては、「外国人」による投資奨励事業の実施許可、土地所有の許可、外国人雇用規制の緩和などが挙げられます。
そのため、BOIによる投資奨励は、FBAに基づく外資規制との関係で、一定の事業をFBLなしで実施するための制度の一つと位置付けることができます(但し、場合によってはFBCを取得する必要があることは前回説明したとおりです。)。
他方、BOI投資奨励による特権は、あくまで認められた一定の投資奨励対象事業に限り付与され、投資奨励対象事業の種類によって付与される特権の内容や範囲も異なります。そのため、実施を予定されている事業が必ずしも投資奨励の対象となるとは限らない点や、「投資奨励」という制度の性質上、原則としてタイ国内への相応の投資が求められる点にも留意する必要があります。
BOIによる投資奨励対象事業について
BOIが公表する投資奨励対象事業は、(a)農業・食品・バイオテクノロジー・医療、(b) 機械・自動車・電気電子、(c)金属・素材・化学・公共インフラ、(d)デジタル・クリエイティブ産業・高付加価値サービスという4つの分野(更にその中で10の業種カテゴリー)に分類されています。一つ一つの分野や業種の詳細なご説明は割愛しますが(詳しくはBOIが毎年公表するガイドラインをご覧いただければと思います)、いくつか知っておくべき基本的な点をご説明いたします。
- BOIによる投資奨励は、法人単位ではなく、個々の事業プロジェクトごとに付与されます。そのため、同一法人内において、投資奨励対象事業プロジェクトと投資奨励非対象事業プロジェクトを並行して実施する場合であっても、投資奨励対象事業に付与された特権を投資奨励非対象事業のために利用することはできません。例えば、半導体の製造事業プロジェクトについてBOIの投資奨励を受け、製造機械の輸入関税の免除という特権を受けた場合であっても、その免税対象となった製造機械を用いて投資奨励非対象事業に係る製品を製造することは認められません。
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BOIによる投資奨励に基づき事業を実施する場合、当該投資奨励対象事業に通常付随する一定の活動については、当該投資奨励の範囲内で実施可能と考えられる場合があります。他方、「付帯する」という部分については、明確な規定は存在しておらず、事業の性質から慎重に検討する必要があります。
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BOIによる投資奨励に基づく特権の付与は、他の業法に基づく許認可の取得を免除するものではありません。
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申請準備から投資奨励証書の取得まで相応の期間を要し、案件によっては6か月~1年程度を要することもあるため、リードタイムを考慮した検討が必要となります。なお、正式に申請した後、BOI内の委員会にて投資奨励の付与の有無が検討されることになりますが、タイ首相府所管の機関であることから首相交代や政変の影響を受ける可能性もありますので、予め念頭に置いておく必要があります。
最後に
よくあるご質問として、「BOIの東京事務所に話を通せば早く申請が受理されるのではないか」ときかれますが、経験上では、申請が受理されるのは、BOIの委員会への申請内容の上程のタイミング次第と考えており、そのタイミングをコントロールすることはできないものと考えます。
次回に向けて
次回は、タイの外資規制の概要の最終回として、関連する文脈で出てくることの多いIEAT(タイ工業団地公社)の仕組みについてご説明いたします。
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