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クロスボーダー収納代行に係る規制内容の解説
2026.08.27
はじめに
2026年5月22日、金融庁は、2025年6月6日に成立した「資金決済法に関する法律の一部を改正する法律」に関係する政府令案及び事務ガイドライン案のパブリックコメントの結果を公表しました。その後、2026年6月1日に、改正法、関係する政府令及び事務ガイドラインが施行されました。本ブログでは、主要な改正項目のうち、クロスボーダー収納代行への為替取引に係る規制の適用について紹介します。
クロスボーダー収納代行とは、国内と国外との間での資金移動であって、収納代行の形式で行われるものをいいます(*1)。今般の法改正により、クロスボーダー収納代行に関しては、事務リスク・金融犯罪リスク等に照らし、為替取引に該当することが明確化されました。収納代行を行う事業者に広く影響が及ぶものであり、実務上は、適用除外類型に該当するかどうかが重要な検討ポイントとなります。
規制の経緯、改正法の目的
(1) 規制の経緯(*2)
収納代行とは、金銭債権を有する債権者から委託又は債権譲渡を受けて債務者から資金を収受し、当該資金を直接輸送することなく債権者に移転させる行為をいいます。
資金決済法の制定時において、代金引換等の収納代行は、為替取引に該当する疑義があるなどの意見があった一方で、支払人に二重支払の危険はないことなどの意見もあり、性急に制度整備を図ることなく、将来の課題とすることが適当であるとされ、為替取引の規制の適用はありませんでした。
しかしながら、その後の2020年の改正資金決済法により、割り勘アプリ等実質的に個人間送金を行う一部のサービスについて、為替取引に該当することが明示的に規定されました。その他の収納代行に関しては、それぞれのサービスの機能や実態に着目した上で、為替取引に関する規制を適用する必要性の有無を判断していくことが適当とされ、受取人が事業者である収納代行や、受取人が個人である収納代行のうちエスクローサービスに伴う収納代行や取引プラットフォーム提供者が行う収納代行に関しては、支払人に二重支払の危険がない場合に限り、為替取引の規制の適用がないとの整理がされていました。
(2) 改正法の目的(*3)
近年、クロスボーダー収納代行を用いた海外オンラインカジノや海外出資金詐欺の事案が存在しており、また、金融安定理事会は、クロスボーダー送金について「同じ活動・同じリスクには同じ規制を適用する」との原則に基づき、金融犯罪リスク等に照らした比例的な規制・監督を求めています。こうした状況を踏まえ、改正法により、クロスボーダー収納代行について、一定の適用除外類型を除いて、為替取引に係る規制を適用することが明示されました。
クロスボーダー収納代行の規制概要
クロスボーダー収納代行とは以下の資金決済法2条の2柱書及び第2号の要件を充足するものをいい、為替取引に該当します。クロスボーダー収納代行のうち、為替取引に該当しない適用除外類型(資金決済法2条の2第2号かっこ書)の具体的な内容は、資金移動業者に関する内閣府令(以下「移動業者府令」といいます。)に別途規定されています。
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第二条の二 金銭債権を有する者(以下この条において「受取人」という。)からの委託(国内から国外へ向けて資金を移動させ、又は国外から国内へ向けて資金を移動させる行為に係る場合にあっては、二以上の段階にわたる委託を含む。)、受取人からの金銭債権の譲受けその他これらに類する方法により、当該金銭債権に係る債務者又は当該債務者からの委託(二以上の段階にわたる委託を含む。以下この条において同じ。)その他これに類する方法により支払を行う者(以下この条において「債務者等」という。)から弁済として資金を受け入れ、又は他の者に受け入れさせ、当該受取人又は当該受取人からの委託その他これに類する方法により支払を受ける者(以下この条において「受取人等」という。)に当該資金を引き渡すことによって、債務者等から受取人等に当該資金を移動させる行為(債務者等から現金の交付を受け、当該現金を受取人等に交付することにより当該資金を債務者等から受取人等に移動させる行為を除く。)であって、次の各号のいずれかに該当するものは、為替取引に該当するものとする。 一 受取人が個人(事業として又は事業のために受取人となる場合におけるものを除く。)であることその他の内閣府令で定める要件を満たす行為(次号に該当する行為を除く。) 二 国内から国外へ向けて資金を移動させ、又は国外から国内へ向けて資金を移動させる行為(当該行為の態様その他の事情を勘案し、利用者の保護に欠けるおそれが少ないものとして内閣府令で定めるものを除く。) |
上記のクロスボーダー収納代行の要件(資金決済法2条の2柱書及び第2号)を簡略化すると以下のとおりです。
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❶金銭債権を有する者(受取人)からの委託(2以上の段階にわたる委託を含む。)、受取人からの金銭債権の譲受けその他これらに類する方法により、 ❷当該金銭債権に係る債務者又は当該債務者からの委託(2以上の段階にわたる委託を含む。)その他これに類する方法により支払を行う者(債務者等)から弁済として資金を受け入れ、又は他の者に受け入れさせ、 ❸当該受取人又は当該受取人からの委託その他これに類する方法により支払を受ける者(受取人等)に当該資金を引き渡すことによって ❹債務者等から受取人等に当該資金を移動させる行為であって、 ❺国内から国外へ向けて資金を移動させ、又は国外から国内へ向けて資金を移動させる行為であること |
適用除外類型(総論)
クロスボーダー収納代行のうち、以下のいずれかの類型に該当する場合は為替取引の規制は適用されません。各類型の具体的な検討は、次項において行います。

適用除外類型(各論1)
1 銀行等又は資金移動業者に再委託して行う収納代行

銀行等又は資金移動業者に再委託して行う収納代行は為替取引規制の適用対象外です(移動業府令1条の3第1項1号)。なお、同号に該当するのは、あくまで当該銀行等又は資金移動業者が再委託を受けて行う資金の受入れが「当該銀行等又は資金移動業者が行う為替取引に係る支払の受領に該当する場合」に限られることには注意が必要です(*4)。すなわち、(i)収納代行事業者が、銀行等又は資金移動業者に自社名義の口座を開設し、債務者等に当該自社名義の口座に金銭を振り込ませて行う収納代行については、単に収納代行事業者が銀行等又は資金移動業者において開設した口座を利用しているだけであり、銀行等又は資金移動業者が自身の行う為替取引として資金を受け入れているものではなく、同号に該当しません(*4)。また、(ii)銀行等又は資金移動業者に為替取引の規制を受けない方法で資金を受け入れさせて行う収納代行は同号に該当しません(*4)。
2 エスクローサービスに伴う収納代行・取引プラットフォームの提供者が行う収納代行

受取人が有する金銭債権に係る債務者に対し反対給付をする義務を負っている場合に、当該反対給付に先立って又はこれと同時に当該金銭債権に係る債務者等から弁済として資金を受け入れ、又は他の者に受け入れさせ、当該反対給付が行われた後に受取人等に当該資金を引き渡す行為(エスクローサービス)に伴う収納代行は為替取引規制の適用対象外です(移動業府令1条の3第1項2号)。

また、受取人が有する金銭債権の発生原因である契約の締結の方法に関する定めをすることその他の当該契約の成立に不可欠な関与を行い、当該金銭債権に係る債務者等から弁済として資金を受け入れ、又は他の者に受け入れさせ、当該受取人の同意の下に、当該契約の内容に応じて受取人等に当該資金を引き渡す行為(取引プラットフォームの提供者が行う収納代行)は為替取引規制の適用対象外です(移動業府令1条の3第1項3号)。
なお、取引プラットフォームの提供者が「契約の成立に不可欠な関与」を行ったといえるためには、例えば、委託販売者として売主を代理して買主と売買契約を締結する場合や、多数の者が参加して取引を行うことが可能なプラットフォームを提供し、利用規約において当該プラットフォームの利用条件や取引成立条件を定めている場合等の関与をしていることが必要であり、単なる決済方法の提供、商品の広告、又は顧客の紹介等を行うだけでは足りないことには留意が必要です(*5)。
3 グループ会社である受取人のために行う収納代行

受取人が自己と同一の会社等の集団に所属する場合に行う収納代行は、為替取引規制の適用対象外です。「受取人が自己と同一の会社等の集団に所属する場合」とは、受取人と収納代行を行う者との間に親子関係がある場合に加え、兄弟関係がある場合も含まれます(移動業者府令1条の3第1項4号)。
もっとも、為替取引の規制を免れるために受取人が第三者から金銭債権を譲り受けたなどの潜脱目的が認められる場合には、同号は適用されません。例えば、第三者から金銭債権を譲り受けて受取人となった者が、受領した当該金銭債権の弁済相当額を譲渡人に支払っている場合には、同号は適用されない可能性があります(*6)。
他方、受取人が、自己の金銭債権を早期に資金化(ファクタリング等)する目的で第三者に譲渡し、当該第三者から委託を受けて当該第三者と同一の会社等の集団に所属する者が債権を回収する場合には、為替取引の規制の潜脱目的は認められず、同号は適用されると考えられます(*7)。
4 国際ブランドが行う債権債務の清算業務としての収納代行

国際ブランド(クレジットカードに係るいわゆる国際ブランドのうち、告示において指定がされているものをいいます。詳細は(*8)をご覧ください。)が行う、国際ブランドに係る登録商標が付されたデビットカード、プリペイドカード又はクレジットカード等(以下「第三者型前払式支払手段等」といいます。)の利用に係る債権債務の清算に伴う収納代行は、為替取引規制の適用対象外です(移動業府令1条の3第1項5号イ)。なお、第三者型前払式支払手段等を用いた取引の解除又は取り消し等により、第三者型前払式手段等の発行者(イシュア)が受取人となる場合に国際ブランドが行う収納代行も為替取引規制の適用対象外です(*9)。
5 クレジットカードにより決済可能な商品・役務に係る取引における収納代行

※ 上記のスキーム図はクレジットカード決済を行う場合の一例です。受取人がクレジットカード加盟店である場合において、当該加盟店がクレジットカード決済により販売できる商品等に係る売掛金債権について行う収納代行については、同様に適用除外となります。
クレジットカード加盟店(厳密には、割賦販売法上のクレジットカード番号等取扱契約締結事業者との間でクレジットカード番号等取扱契約を締結している加盟店をいいます。)を受取人とする収納代行は、為替取引規制の適用対象外です(移動業府令1条の3第1項5号ロ)。なお、同号ロは、クレジットカード等購入あっせんにより決済「可能である」取引に係る収納代行を対象としていることから、クレジットカード等購入あっせん以外の方法により決済した取引に係る収納代行も含みます(*10)。
したがって、割賦販売法上の加盟店調査の対象となっている加盟店において、クレジットカードにより決済可能な商品・役務に係る取引の収納代行を行う場合であれば、当該商品・役務についてクレジットカード以外の方法により決済された取引の収納代行も同号の対象に含まれます。このような適用除外が認められた背後には、クレジットカード等購入あっせんに係る販売又は提供の方法により販売又は提供する商品・役務等については、割賦販売法に基づく加盟店調査の対象となっていることにより、金融犯罪等のリスクについて一定の低減措置が図られているとの考えがあるものと思われます。
6 第三者型前払式支払手段により決済可能な商品・役務に係る取引における収納代行
国内で登録を受けた第三者型前払式支払手段の発行者が発行する第三者型前払式支払手段の加盟店を受取人とする収納代行は、為替取引規制の適用対象外です(移動業府令1条の3第1項5号ハ)。なお、同号ハは、第三者型前払式支払手段により決済「可能である」取引を対象としていることから、第三者型前払式支払手段以外により決済した取引も含みます(*11)。
これは、上述「5 クレジットカードにより決済可能な商品・役務に係る取引における収納代行」の考え方と同様であり、資金決済法上の加盟店管理の対象となっている第三者型前払式支払手段により決済可能である商品・役務に係る取引に係る収納代行であれば、第三者前払式支払手段以外の方法により決済された取引に係る収納代行も同号の対象に含まれます。
7 エスクローサービス・取引プラットフォームの提供者から再委託を受けて行う収納代行


エスクローサービス又は取引プラットフォームの提供者から資金の受け入れ又は引渡しについて委託を受けて行う収納代行は、為替取引規制の適用対象外です(移動業府令1条の3第1項6号)(*12)。
なお、後述(「06 適用除外類型(各論2)」)のとおり、エスクロー事業者・取引プラットフォーム提供者が他の事業者に資金の受け入れ又は引き渡しを再委託する収納代行を行う場合であっても、他の事業者による資金の受け入れ又は引き渡しが適切に行うことがでない事態が生じた場合に、資金の円滑な引渡しが阻害されるおそれがある場合には、為替取引に該当します(移動業者府令1条の3第2項2号)。
事務ガイドラインによれば、エスクロー事業者・取引プラットフォーム提供者が受取人等に対して負う責任を当該他の事業者の選任・監督に限定する場合(*13)が、移動業者府令1条の3第2項2号の具体例として挙げられています。このような限定がなされている場合は、他の事業者による資金の受入れ又は引渡しが適切に実行されなかった場合であっても、エスクロー事業者・取引プラットフォーム提供者が当該資金の受入れ又は引渡しを行う責任を負わないことになると考えられるため、この点で「資金の円滑な引渡しが阻害されるおそれ」があると評価されているものと考えられます (*14)。
8 銀行等又は資金移動業者から委託を受けて行う収納代行

銀行等又は資金移動業者からの委託その他これに類する方法により、受取人が有する金銭債権に係る債務者等から弁済として資金を受け入れ、又は他の者に受け入れさせ、受取人等に当該資金を引き渡す行為は、為替取引規制の適用対象外です(移動業府令1条の3第1項7号)。
適用除外類型(各論2)
上述の移動業者府令1条の3第1項各号が定める適用除外類型に該当する場合であっても、「利用者の保護に欠けるおそれが大きい行為」に該当するクロスボーダー収納代行は、為替取引に該当します(移動業者府令1条の3第第1項柱書かっこ書)。「利用者の保護に欠けるおそれが大きい行為」とは、次のいずれかに該当する行為をいいます(移動業者府令1条の3第2項)。
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❶受取人が有する金銭債権に係る債務者等から弁済として資金を受け入れた時までに当該金銭債権に係る債務者の債務が消滅しないもの ❷エスクロー事業者又は取引プラットフォーム提供者が、収納代行業務を第三者に再委託して行う収納代行(移動業者府令1条の3第1項6号)において、当該第三者に当該6号に掲げる行為を適切に行うことができない事態が生じた場合に受取人等への資金の円滑な引渡しが阻害されるおそれがある行為 ❸賭博をする者又は他の者相互間で賭博を行わせる者が受取人である場合に、債務者等から弁済として賭金、勝金、入場料、手数料その他いかなる名称によるかを問わず支払われる当該賭博に係る資金を受け入れ、又は他の者に受け入れさせ、受取人等に当該資金を引き渡す行為 ❹受取人が有する金銭債権が、新たに発行される有価証券の取得を目的とする行為、有価証券の売買又はデリバティブ取引により発生したものである場合に、当該金銭債権に係る債務者等から弁済として資金を受け入れ、又は他の者に受け入れさせ、受取人等に当該資金を引き渡す行為 ❺❸又は❹に掲げる行為に類する行為であって、法令の規定又は公の秩序若しくは善良な風俗に反するもの |
検討フロー図
上記の内容をフロー図にまとめると、以下のとおりとなります。

最後に
本ブログでは、クロスボーダー収納代行に係る為替取引の規制内容を紹介しました。実際のスキームが為替取引の規制対象となるか否かは、資金の流れや当事者間の契約関係を踏まえた個別具体的な検討が必要となります。新規事業のみならず、既存事業が本改正法の対象となる可能性はないか、是非この機会にご検討ください。
以上
(*1)2025年1月22日付「資金決済制度等に関するワーキング・グループ報告書」( https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20250122/1.pdf )(以下「2025年WG報告書」といいます。)8頁
(*2)2019年12月20日付「決済制度等及び決済法制及び金融サービス仲介法制に関するワーキング・グループ報告書」( https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20191220/houkoku.pdf )16頁 脚注30、2009年1月14日付「資金決済に関する制度整備について ―イノベーションの促進と利用者保護―」( https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20090114-1/01.pdf )2~3頁
(*3)2025年WG報告書8頁
(*4)第三分冊:金融会社関係「14.資金移動業者関係」( https://www.fsa.go.jp/common/law/guide/kaisya/14.pdf )(以下「事務ガイドライン」といいます。)Ⅰ-2-2-2(1)、2026年5月22日付「令和7年資金決済法改正に係る政令の公布及びパブリックコメントの結果等について」別紙4( https://www.fsa.go.jp/news/r7/sonota/20260522/04.pdf )(以下「パブコメ回答」といいます。)14頁No31、32等
(*5)事務ガイドラインⅠ-2-2-2(3)
(*6)事務ガイドラインⅠ-2-2-2(4)
(*7)パブコメ回答19頁No45
(*8)現時点では、アメリカンエキスプレス、ジェーシービー、ダイナース、ディスカバー、ビザ、マスターカード、銀聯が指定されています。https://www.fsa.go.jp/news/r7/sonota/20251216/21.pdf
(*9)事務ガイドラインⅠ-2-2-2(5)
(*10)事務ガイドラインⅠ-2-2-2(6)
(*11)事務ガイドラインⅠ-2-2-2(7)
(*12)事務ガイドラインⅠ-2-2-2(8)
(*13)事務ガイドラインⅠ-2-2-2(9)
(*14)パブコメ回答38頁No106
(*15)事務ガイドラインⅠ-2-1
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