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才口弁護士に聞いてみよう(3)
2020.12.08
TMIの顧問弁護士であり、最高裁判事の重責も務められた才口弁護士に聞く、現代の「仕事」と「生き方」のヒント。
才口弁護士作「弁護士10年1人前説」数え歌のお披露目もお楽しみに!
「私は5年目の弁護士です。最近、先輩と一緒に仕事をした際に、「5年目になってこんなことも分からないのか」と叱責されてしまいました。自分なりに5年間全力で頑張ってきたつもりでしたが、それ以降、同期の弁護士や後輩の弁護士でさえ、みんな自分よりも経験も知識もあるように思えてしまい、落ち込む毎日が続いています。5年間、全力で頑張ってきたにもかかわらず、成長を感じられない自分は、弁護士に向いていないのでしょうか。これからも頑張っていれば、成長していくものでしょうか。先生がこれまでたくさんの弁護士と接してこられた中で、弁護士の成長について、どのようにお感じでしょうか。」
五つとせ、いろいろ悩みは尽きなくて
顧問の才口千晴です。
私の「弁護士十年一人前説」の数え歌の五に“五つとせ、いろいろ悩みは尽きなくて”の一節を加えなければいけませんね。
A君、贅沢な悩みですね。そもそも君は職場環境を認識しなければいけません。大手法律事務所の新進気鋭の弁護士の一人でしょう。
事件処理で先輩に叱責された? 別に事件からはずされたのではないでしょう。先輩も君を叱るには相当の決意と気力が必要だったはずです。まさか君は「月は西から昇る」と言ったとか、条文や判例などを誤用したのではありますまい。
人生は横軸ではなく縦軸で歩みましょう。
どうして同期の弁護士や後輩の弁護士を意識するのですか?まずは自分の“身の丈”を見出し、等身大で職務を遂行してください。環境と能力に見合う仕事をするのです。今は眞に「何をなすべきか」(将来)を考え切磋琢磨する時期です。人生の縦軸はいずれ私のように「何をなしたか」(過去)に進むのですから。
そして、5年目の弁護士ですから、そろそろ小さな事件でもいいですから自分の事件を処理されるようお勧めします。気配り、目配り、耳配りなど並大抵な苦労ではありませんが、事件を通じて等身大の生き方を見出すことができるでしょう。
私は弁護士登録後、イソ弁を2年務めた後、一期後輩の弁護士と共同事務所を開設しました。遮二無二に事件処理をして「何をすべきか」(将来)を見出し、紆余曲折を経て今日に至りました。君のように大手法律事務所で修業を積んだわけではありませんが、職務や会務そして閥務を通じて著名な先輩から「執中」〔シッチュウ〕(中を執るが天下の大道なり)を伝授され、法曹の心得である「真理は常に中間にあり」も体得させてもらいました。
A君、先輩からお叱りを受けるのも今のうち、そして有難きこと。
現在の職場環境と地位を認識して等身大の法曹に向けて突き進んで下さい。切磋琢磨すれば必ずや道は開けます。
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