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才口弁護士に聞いてみよう(4)
2021.01.06
TMIの顧問弁護士であり、最高裁判事の重責も務められた才口弁護士に聞く、現代の「仕事」と「生き方」のヒント。
「私は1年目の弁護士です。司法試験に受かったことで、自分には文章力があると思っていましたが、弁護士になって以降、先輩たちからはとにかく文章を直される毎日です。『分かりやすい文章を端的に』ということを心掛けてはいるのですが、なかなか成長できない自分に、歯痒さを感じています。文章力・表現力を向上させるために、先生がやっておられた訓練や取組みなどがありましたら、教えていただけませんでしょうか。」
新年明けましておめでとうございます。
初春にふさわしい初年弁護士からのご下問ですね。
司法試験の合格と文章力とは全く関係ありません。
司法研修所は法律家の本分やテクニックは教えてくれますが、文章力の教育はしてくれません。
文章力は天分・才能か、努力がもたらす結果です。文章は主語、述語、目的語、補語で成り立ちますが、法律家の文章は権利や権力を対象としますから、要件事実や事情を上手く取り混ぜて作成しないと説得力のあるものになりません。表現者の「納得」と、受け手の「満足」が一致しないと話し合いが決裂し、敗訴判決の憂き目を見るのです。
ところで、君の文章は簡明ですか?情緒的ですか?
簡単明瞭文で有名なのは徳川家康の家臣であった本多重次の妻に与えた「一筆啓上、火の用心、お仙泣かすな、馬肥やせ」です。
情緒的かについては、人間国宝の落語家林家小三治師匠は、小説家の文書を比較して、藤沢周平の描写より山本周五郎や池波正太郎の方が“江戸前”で粋だと噺ています。感覚的に分かりますね。
簡潔過ぎず、情緒に流れない作文を心がけてください。
次に、君の文章作成方法は直言派ですか?推敲派ですか?
直言派は、遠慮せずに自分の信ずるところを文章化しますが、初年弁護士には難しいと思いますので、作成した文章から修飾語等を削ぎ落して字句を様々に考えて練る推敲派をお勧めします。
最後に、文章力・表現力の向上の方法を伝授しましょう。
1.先ず感銘を受ける文章や判決文等を沢山読み漁りましょう。
2.感覚にマッチした文章に出くわしたらそれを真似ましょう。
3.最後に仕上がった文章を要約しましょう。その際、文章の順序や組み立て方の極意である「起・承・転・結」(自調自考してください)を点検しましょう。
法律を駆使して紛争を解決し、あるいはクライアントに利便を供与することを生業とする弁護士は知的な説明力、要約力、説得力のある文章を作成できることが重要な職務の一つです。
どうぞ、以上の方法を意識しながら、日々研鑽・精進してください。必ず成果が顕れますよ。
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