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才口弁護士に聞いてみよう(9)
2021.05.11
TMIの顧問弁護士であり、最高裁判事の重責も務められた才口弁護士に聞く、現代の「仕事」と「生き方」のヒント。
弁護士は、精神力と体力のいる仕事です。
私は精神力も体力も、幼少期から学生時代に培われたものが基礎になると考えています。実際、学生時代にラグビーに打ち込んでいたことが、今、仕事をやっていく上での基礎になっていると感じることもあります。
先生は心身共にタフな案件を多数扱ってこられたものと思いますが、どのような幼少時代を過ごされていらっしゃいましたか。
幼少時代
ご下問が大分個人情報にわたる領域に入ってきました。
特に「幼少時代」とは当惑します。事務所の最古参弁護士の一人で昭和20年(1945年)4月に小学校に入学し、8月に太平洋戦争の終戦という激動の中で幼少期を過ごした身の上です。参考になるかどうか疑問ですが、ご一読ください。
善光寺のお膝元である長野市で育ちましたが、幼少期は敗戦直後で「国破れて山河あり・・・」まさに杜甫の“春望”の詩のような状況と心境でした。
食糧難で主食は米が乏しく、麦、稗(ひえ)、粟(あわ)や昨今は珍味とされる藜(アカザ)や滑莧(スベリヒユ)などの雑草も食べました。
そんな状況でも国民の復興意欲は逞しく、蚤(のみ)、虱(しらみ)駆除をしながら、5年生の頃には学校給食が始まり、おいしくない脱脂粉乳を鼻をつまみながら飲み、幼少期を終えたのです。
顧みれば、逆境の中での幼少期に向学心や目的意識が目覚めたように思えます。
健全なる精神は健康なる身体に宿る
ご質問の方は学生時代にラグビーに打ち込んでおられたようですが、私の運動遍歴は、中学時代はバレーボール、高校時代は剣道、弁護士時代はゴルフ、そして判事退官後は弓道、昨今は早朝散歩と首尾一貫しない体力づくりです。
また、法曹への道程は、生来手先が器用でしたから建築家を夢見たのですが、中学校の担任教師の「法曹になれ」のアドバイスで弁護士になり、倒産弁護士として「民事再生法」等の立案に参画し、青天のへきれきで最高裁判事に任ぜられ、退官後はTMI総合法律事務所のおぼしめしで老残の身を置かせてもらっています。
ご指摘のとおり、「弁護士は精神力と体力いる仕事」です。そして最高裁判事の職務は在野法曹出身者にとっては試練と苦難の連続でした。この艱難辛苦(かんなんしんく)を乗り切れたのはまさしく精神力と体力のおかげです。
「健全なる精神は健康なる身体に宿る」とは、けだし名言で、適正・的確な判断をするには培われた体力と胆力が必要です。
昨年の暮れに惜しまれて逝去された当事務所の社歌の作詩者、なかにし礼先生の名作である石原裕次郎の“わが人生に悔いなし”の二番の歌詞に「親にもらった体一つで 戦い続けた気持よさ…」とあります。
私の今日までの生き様は「夢だろうと現実(うつつ)だろうと、わが人生に悔いはない」そのものです。
どうぞ、体力増強・精神倍増で弁護士道を勇往邁進してください。
完
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