今回は、省エネ性能表示制度の強化の一環として、本年1月20日に公表されパブリックコメントに付されている、「販売・賃貸時の建築物の省エネルギー性能の表示ルールのとりまとめの方向性（案）」を取り上げます。

※本稿は、月刊プロパティマネジメント（2023年3月号、綜合ユニコム社）に「法令ニュース第192回」として掲載されたものを加筆修正したものです。

再エネ法の令和4年改正

建築物省エネ法（建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律）は、建築物のエネルギー消費性能の向上に関する基本的な方針の策定について定め、一定規模以上の建築物の建築物エネルギー消費性能基準への適合性を確保するともに、建築物エネルギー消費性能向上計画の認定その他の措置を講じています。これにより建築物のエネルギー消費性能の向上を図ることを目的としています。

建築物省エネ法は令和4年に改正されました。改正の概要は、①建築物エネルギー消費性能基準への適合義務の対象となる建築物の範囲の拡大等、②販売事業者等による建築物の販売等に係る措置、③建築物再生可能エネルギー利用促進区域における措置等を内容とします（図表１参照）。

【図表1】

※国交省の立法資料から

省エネ性能表示制度

建築物省エネ法では、建築物の販売又は賃貸を行う事業者は、その販売又は賃貸を行う建築物について、エネルギー消費性能の表示に努めなければならないこととされています。省エネ性能表示制度は、建築物の販売又は賃貸を行う事業者の努力義務とされていますが、令和4年改正において制度が強化されました。

省エネ性能表示制度の対象となる「建築物」は、新築建築物のみならず、既存の建築物を含むとされています。また、住宅の場合には、新築の分譲住宅、マンション、中古の買取再版住宅、賃貸受託等が対象となります。但し、表示を行う主体が「事業者」に限定されていますので、個人が持ち家を売却する場合には適用はありません。但し、個人であっても事業者であれば適用があります。

省エネ性能表示制度において、表示すべき事項や、表示に関して事業者が遵守すべき事項は国交省大臣が告示で定めるとされています。この点について、国交省は、本年1月20日、販売・賃貸時の建築物の省エネルギー性能の表示ルールのとりまとめの方向性（案）を公表して、パブリックコメントに付しました。

販売・賃貸時の建築物の省エネルギー性能の表示ルールのとりまとめの方向性（案）

表示ルール取りまとめ案では、まず省エネ性能表示の時期・対象を、販売・賃貸を行おうとする建築物について、その広告を行うときに表示するとしています。具体的な広告表示の時期・対象については、宅地建物取引業法や不動産の表示に関する公正競争規約の定めるところによるとされています。具体的には、新聞・雑誌広告、 新聞折込チラシ、パンフレット、インターネット広告等が想定されています。一方、建築物の販売・賃貸に際して広告が行われない場合については、省エネ性能の開示措置により広告時の表示に代えることができるよう具体的な方法が定められると思われます。

表示すべき事項は、住宅及び非住宅の一次エネルギー消費量の多段階評価、並びに住宅の外皮性能の多段階評価が定められていますが、技術的な事項となりますので、本稿では割愛いたします。

次に、表示の方法についてですが、表示は原則、国が様式を定めるラベルにより行い、建築物省エネ法に基づく表示であることを明らかにするとされています。また、表示する省エネ性能は、自己評価・第三者評価のいずれによることも可能とされますが、第三者評価であることの表示は、当該第三者評価制度のルールにより行うとされています。当初の表示を行った後、表示した省エネ性能（多段階評価）を低下させる改変を行っていない限りにおいて、当初の評価時点を明らかにした上で、当初の評価結果の内容で引き続き表示可能とさています。なお、国が様式を定めるラベルのイメージも公表されています（図表2）。

【図表2】ラベルのイメージ

※パブコメ添付の資料より（以下同じ）

上記の表示に関しては、購入・賃借を行う者が建築物の省エネ性能をより的確に把握するための情報提供の方法等をガイドラインにおいて示すことが想定されています。また、購入・賃借の契約時等における省エネ性能の評価結果（評価書）の書面交付等により、追加的な情報提供を行うことを推奨するとされています（評価書のイメージは図表３）。

【図表3】

さらに、購入・賃借を行う者の理解を促進するための追加的な情報提供に必要な表示事項として、一次エネルギー消費量や外皮性能に関する具体的な性能値としてのBEI値（再生可能エネルギーを含む場合、含まない場合）、UA値等や、住宅における設計上の一次エネルギー消費量を、年額の光熱費の目安額に換算した「目安光熱費」を示すとされています。

既存建築物についての表示内容については、既存建築物の特性を踏まえ、非住宅については運用時のエネルギー消費の実績値等に基づく表示、住宅については、断熱や設備の部分的な仕様等に基づく表示について検討し、代替表示の方法をガイドラインで示されることが想定される予定です。

まとめ

表示ルールのとりまとめの方向性（案）は、今後変更される可能性もあります。いずれにせよ、具体的な表示内容や表示の方法については、今後、ガイドライン等で詳細が示されます。

以上