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【労働法ブログ】改正労働安全衛生規則による職場における熱中症対策の義務化(令和7年6月1日施行)について
2025.05.29
義務内容
近年における熱中症の発生状況を踏まえ、労働安全衛生規則(以下「安衛則」という。)の改正により、労働安全衛生法(以下「安衛法」という。)22条の健康障害防止義務の具体的内容として、事業者は、業種に関係なく、熱中症を生ずるおそれのある作業に従事する者(以下「作業者」という。)について、下記の各義務を負うこととなった(安衛則612条の2)[1]。
なお、「熱中症を生ずるおそれのある作業」とは、WBGT(湿球黒球温度/暑さ指数)28度以上又は気温31度以上の場所において[2]、連続して1時間以上又は1日4時間を超えて行われることが見込まれる作業をいう(施行通達)。
【報告体制整備義務】
義務内容(安衛則612条の2) |
想定される対応(施行通達) |
「熱中症を生ずるおそれのある作業」を行うときは、熱中症の自覚症状がある者や熱中症の疑いがある作業者を見つけた者がその旨を報告するための体制を整備しなければならない(同1項)。 |
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【手順等作成義務】
義務内容(安衛則612条の2) |
想定される対応(施行通達) |
「熱中症を生ずるおそれのある作業」を行うときは、作業からの離脱、身体の冷却、必要に応じて医師の診察又は処置を受けさせることその他熱中症の症状の悪化を防止するために必要な措置の措置の内容や実施手順を定めなければならない(同2項)。 |
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【周知義務】
義務内容(安衛則612条の2) |
想定される対応(施行通達) |
上記の報告体制と手順等を作業者に周知しなければならない(同1項・2項)。 |
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出典 厚生労働省リーフレット「職場における熱中症対策の強化について」
行政処分・罰則
事業者は、各義務(労働安全衛生規則612条の2)に違反した場合、労働安全衛生法22条違反として、都道府県労働局長又は労働基準監督署長より、作業停止、建設物等の使用停止・変更等を命じられる可能性があるほか(同法98条)、行為者は6か月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金(同法119条1号)、法人は50万円以下の罰金(同法122条)にそれぞれ処される可能性がある。
施行日
施行日は令和7年6月1日であるため、事業者は同日より本改正への対応が求められることとなる。
[1] 本改正内容の具体的な解釈については「労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行等について」(令和7年5月20日基発0520第6号。以下「施行通達」という。)において示されている。
[2] 当該場所に該当するか否かは、原則として作業が行われる場所でWBGT又は気温を実測することにより判断する必要があるが、通風のよい屋外作業について、天気予報(スマートフォン等のアプリケーションによるものを含む。)、環境省の「熱中症予防情報サイト」等の活用によって判断可能な場合には、これらを用いても差し支えない(施行通達)。
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