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【危機管理・コンプライアンス】「令和7(2025)年改正風営法の概要 厳罰化と欠格事由の拡大(全風俗営業)」風俗営業法研究会ブログ
2026.01.26
はじめに
令和7(2025)年改正風営法について、第1回のブログでは、その全体像を概説し(リンク:https://www.tmi.gr.jp/eyes/blog/2025/17382.html)、第2回のブログでは、接待飲食営業に係る遵守事項・禁止行為について(リンク:https://www.tmi.gr.jp/eyes/blog/2025/17558.html)、第3回のブログでは、スカウトバックの禁止と職業安定法について(リンク:https://www.tmi.gr.jp/eyes/blog/2025/17746.html)、概説しました。
今回は、無許可営業等の厳罰化と欠格事由の拡充について解説します。
なお、本ブログ記事は、TMI総合法律事務所が運営する風俗営業法研究会における議論を踏まえたものです。
対象となる営業
今回の改正により、無許可営業に対する罰則が強化され、欠格事由の対象が拡大されましたが、それにより影響を受ける対象は、全ての風俗営業及び特定遊興飲食店営業です。
接待飲食営業に限らず、遊技場営業(4号営業、5号営業)も対象になります。
また、特定遊興飲食店営業は、法律上の分類としては風俗営業に含まれませんが、同様に許可制の対象とされているため、影響を受けることになります(欠格事由の拡大のみ。厳罰化の対象ではありません。)。
これに対して、性風俗関連特殊営業は届出制の対象であるため、もともと欠格事由の適用はありません。ただし、それらの営業の一部には立地制限があり、それに違反することは許可制下の営業を無許可で営業することと同様の違法性を有するため、性風俗関連特殊営業の一部も厳罰化の対象となっています。
改正の背景

(出典:警察庁「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律(令和7年法律第45号)概要」 https://www.npa.go.jp/laws/kaisei/houritsu.html)
【無許可営業等に対する罰則の強化】
従前においても、無許可営業等は処罰対象とされていましたが、接待飲食営業をはじめとする風俗営業は、短期間の営業であっても高額な売上を得ることができる業態であり、無許可営業等により摘発されるリスクに比べて売上のリターンが大きいなどの要因があり、無許可営業等が後を絶たない状況にありました。
また、風俗営業の許可を受けることができない暴力団員等による無許可営業も行われており、その収益が暴力団等の資金源となっていることも問題視されていました。
さらに、近年、暴力団員等が、性風俗特殊営業の禁止区域等に所在するマンションにおいて、メンズエステと称して、店舗型ファッションヘルス営業を営む事例が複数検挙されており、違法な営業による収益が暴力団等の資金源となっているという問題も生じていました。
このような背景から、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」)における産業廃棄物処理業の無許可営業に対する罰則を参考として、改正法では、5年以下の拘禁刑若しくは1000万円以下の罰金又はこれの併科へと法定刑が引き上げられました。
また、両罰規定(法人の代表者、法人又は人の代理人、使用人その他の従業者が、法人又は人の営業に関し、違反行為をしたときには、当該行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても処罰を行う規定)は、従前も存在していたものの、法人と人で適用する罰金刑に差を設けていませんでした。
しかし、実態として、法人営業の場合の方が、個人営業の場合と比べ、営業規模を大きくすることが可能となり、より多くの収益を上げている傾向があり、200万円以下の罰金では十分な抑止力になっているとはいえない状況にありました。
このような背景を踏まえ、廃棄物処理法の両罰規定において、廃棄物処理業の無許可営業等では法人についての罰金刑をより高額としていることを参考にして、法定刑が引き上げられました。
【親会社等が風俗営業の許可を取り消された法人】
風俗営業では、複数の法人が「グループ」を形成し、グループの中で主体となる法人(以下「主体法人」)が密接な関係を有する関連法人に風俗営業の許可を取得させた上で、
- 主体法人の役員を関連法人の社員として送り込み、当該社員に営業所の運営方針の決定を行わせる
- 主体法人と複数の関連法人がコンサルティング契約を締結して取引関係にある
などの手段によって、関連法人を支配・影響下に置き、その風俗営業に影響を及ぼしていることがあります。
従前は、グループ内の一店舗が許可取消処分を受けても、グループ内の他の店舗に影響を及ぼす仕組みがなかったため、処分を受けた経営者等が、許可を受けた関連法人に支配・影響力を及ぼすことで、法令違反行為等を理由として許可を取り消された者についてはその後5年間は風俗営業を行い得ないこととするという法第4条第1項第6号の趣旨を潜脱することができました。
今回の改正は、この潜脱を防止することを趣旨としています。
【警察による立入調査後に許可証の返納(処分逃れ)をした者】
従前から、公安委員会は、風俗営業の許可を受けようとする者が
- 許可取消処分に係る聴聞の公示日から処分決定日までの間に法第10条第1項第1号の規定による許可証の返納をした者(風俗営業の廃止について相当な理由がある者を除く。)で当該返納の日から起算して5年を経過しないもの
- 当該期間内に合併により消滅した法人又は許可証の返納をした法人(合併又は風俗営業の廃止について相当な理由がある者を除く。)の役員であった者で当該消滅又は返納の日から起算して5年を経過しないもの
- 当該期間内に分割により当該聴聞に係る風俗営業を承継させ、若しくは分割により当該風俗営業以外の風俗営業を承継した法人(分割について相当な理由がある場合を除く。)又はこれらの役員であった者で当該分割の日から起算して5年を経過しないもの
に該当するときは、許可をしてはならないこととされていましたが(法第4条第1項第7号から第9号)、当該期間前に許可証の返納をした者等及びその役員については、欠格事由の対象とされていませんでした。
そのため、立入調査が行われて法令違反行為が発覚した場合、その段階で、立入調査を受けた風俗営業者は、許可取消処分がなされることを予見して、自身やその役員が欠格事由の対象となることを逃れるために許可証の返納を行うことが可能でした。
このような営業許可の返納を利用した処分逃れによる規定の潜脱を防ぐため、今回の改正が行われました。
【暴力的不法行為者がその事業活動に支配的な影響力を有する者】
従前から、役員に欠格事由に該当する者がいる法人について風俗営業の許可をすることはできませんが(法第4条第1項第11号)、そこでいう「役員」は「いかなる名称を有する者であるかを問わず」と規定されているため(法第4条第1項第6号)、法人に関していかなる名称も有していない者については、仮に支配的な影響力を有していたとしても「役員」に含まれず、欠格事由の対象とされていませんでした。
そのため、
- 暴力団幹部が、自らの親族が経営する会社で勤務している従業者に接待飲食営業の許可を取得させて風俗営業を営ませ、同人に対して支配的な影響力を及ぼし、同店舗内で違法行為を行った事例
- 準暴力団構成員が、密接交際者に許可を取得させた風俗営業について、支配的な影響力を及ぼした上で、18歳未満の従業者を接待業務に従事させていた事例
のように、本来、風俗営業から排除されるべき、暴力的不法行為者が、その密接関係者である風俗営業者に対して支配的な影響力を行使することがありました。
今回の改正は、このような潜脱行為を取り締まることを趣旨としています。
条文解釈(無許可営業等に対する罰則の強化)
【条文】
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第49条 第57条 |
法49条では、
① 無許可営業
② 不正の手段による営業許可(法第3条第1項)、相続(法第7条第1項)、合併(法第7条の2第1項)及び分割(法第7条の3第1項)
③ 名義貸し(法第11条)
④ 営業停止の命令等への違反(法第26条等)
⑤ ⑥ 禁止区域等での店舗型性風俗営業及び無店舗型性風俗営業(法第28条等)
に該当した者が処罰対象となっています。
なお、営業許可を受けた時点の状態のみを考えればよいわけではなく、許可を受けた後における状態についても留意する必要があります。例えば、店舗型性風俗特殊営業を行う意思をもって、その営業が禁止されている地域において、法第2条1項1号に規定する風俗営業の許可を受け、後に営業所の構造又は設備を変更するなどして店舗型性風俗特殊営業を営んだ場合には、法第53条第5号(無届営業)だけでなく、法第49条第2号(偽りその他不正の手段により法第3条第1項の許可を受けたこと)、法第49条第5号又は第6号(禁止区域等営業)や法第51条第1項第1号(構造又は設備の無承認変更)の罪に該当することになります。
また、この引上げにより、改正法第49条の罪は、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(以下組織的犯罪処罰法)における「犯罪収益」の前提犯罪に含まれることとなりました(同法第2条第2項第1号イ) 。つまり、改正法第49条各号の施行後には、同条各号の罪に当たる行為により生じ、若しくは当該行為により得た財産又は当該行為の報酬として得た財産は、組織的犯罪処罰法上の「犯罪収益」に当たり、その隠匿(同法第10条)や収受(同法第11条)が取締りの対象となり得るほか、犯罪収益として没収(同法第13条)の対象ともなり得ることとなりました。
【両罰規定とは】
法57条はいわゆる両罰規定であり、違反した行為者を処罰するだけではなく、その事業主(法人又は事業者)についても処罰される可能性があるものです。
両罰規定とは、代表者、従業員、使用人等が業務に関して違法行為を行った場合、その行為者(従業員等)だけでなく、その行為者を雇用するなどしていた事業主も処罰を受けることを定めた規定です。
この規定は、違法行為の原因が行為者個人の問題だけではなく、事業主による監督義務違反や体制上の不備にあると考え、違法行為に及んだ行為者本人のみならず、事業主についても、いわば連帯責任的に処罰を受けるというものです。選任監督責任を問うものとして、行為者に対する罰金額よりも高額な罰金が定められていることもあります。
この点、事業主が処罰をされる根拠は、選任監督責任にあるため、事業主が、行為者に対する当該違反行為を防止するために必要な注意及び監督を尽くしたと認められた場合には、行為者が処罰されたときであっても処罰を免れることが理論的にはあり得ると考えられています。しかし、事業主の処罰規定は、事業主に選任・監督上の過失があったことを推定したもので、事業主側において過失がなかったことを証明しない限り責任を免れることができないため(最大判昭32・11・27集11-12-3113、最判昭40・11・9判時660-102)、実務上、そのような場合に該当すると認められるケースは極めて限定的です。
なお、ここで「事業主」とは、自己の計算においてその事業を経営する者をいい、事業主でなくなった後も、事業主である間の従業主の違反行為については、事業主処罰規定の適用を免れることはできません。
「従業者」とは、直接間接に事業主の統制・監督を受けて事業に従事する者をいい、契約による雇用関係がなくとも、事業主の指揮の下でその事業に従事していれば、従業者に当たり(大判昭9・4・26集13-527)、事業主の雇人が自己の補助者として使用する者も含まれます(大判大7・4・24録24-392)。
さらに、事業主が処罰されるのは、従業者の違反行為が「その法人又は人の業務に関し」て行われた場合に限られます。「業務」とは、社会生活上の地位に基づき反復継続して行う事務であり、定款に定められた事業には限定されず、法人の取引上の地位に基づいて、その業務としての客観性が認められる程度に一定の取引又は事業を遂行する場合も含みます(最判昭25・10・6集4-10-1936)。「業務に関し」には、外形的に事業主の業務に関連して行われていれば、従業員が内心で私的な利益を追求している場合であっても該当します(最大判昭32・11・27集11-12-3113、最判昭40・11・9判時660-102)
条文解釈(風俗営業からの不適格者の排除)
【条文】
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第4条(許可の基準) イ 当該許可を受けようとする者の株式の所有その他の事由を通じて当該許可を受けようとする者の事業を実質的に支配し、又はその事業に重要な影響を与える関係にある者として国家公安委員会規則で定めるもの(ロにおいて「親会社等」という。) ロ 親会社等が株式の所有その他の事由を通じてその事業を実質的に支配し、又はその事業に重要な影響を与える関係にある者として国家公安委員会規則で定めるもの ハ 当該許可を受けようとする者が株式の所有その他の事由を通じてその事業を実質的に支配し、又はその事業に重要な影響を与える関係にある者として国家公安委員会規則で定めるもの |
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八 次のいずれかに掲げる期間内に第10条第1項第1号の規定による許可証の返納をした者(風俗営業の廃止について相当な理由がある者を除く。)で当該返納の日から起算して5年を経過しないもの イ 第26条第1項の規定による風俗営業の許可の取消処分に係る聴聞の期日及び場所が公示された日から当該処分をする日又は当該処分をしないことを決定する日までの間 ロ 第37条第2項の規定による風俗営業の営業所への立入りが行われた日から聴聞決定予定日(当該立入りの結果に基づき第26条第1項の規定による風俗営業の許可の取消処分に係る聴聞を行うか否かの決定をすることが見込まれる日として国家公安委員会規則で定めるところにより公安委員会が当該立入りを受けた者に当該立入りが行われた日から10日以内に特定の日を通知した場合における当該特定の日をいう。)までの間 |
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九 前号イに掲げる期間内に合併により消滅した法人若しくは第10条第1項第1号の規定による許可証の返納をした法人(合併又は風俗営業の廃止について相当な理由がある者を除く。)の前号イの公示の日前60日以内に役員であつた者又は同号ロに掲げる期間内に合併により消滅した法人若しくは同項第1号の規定による許可証の返納をした法人(合併又は風俗営業の廃止について相当な理由がある者を除く。)の前号ロの立入りが行われた日前60日以内に役員であつた者で、当該消滅又は返納の日から起算して5年を経過しないもの |
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十 第8号イに掲げる期間内に分割により同号イの聴聞に係る風俗営業を承継させ、若しくは分割により当該風俗営業以外の風俗営業を承継した法人(分割について相当な理由がある者を除く。)若しくはこれらの法人の同号イの公示の日前60日以内に役員であつた者又は同号ロに掲げる期間内に分割により同号ロの立入りに係る風俗営業を承継させ、若しくは分割により当該風俗営業以外の風俗営業を承継した法人(分割について相当な理由がある者を除く。)若しくはこれらの法人の当該立入りが行われた日前60日以内に役員であつた者で、当該分割の日から起算して5年を経過しないもの) |
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十三 第3号に該当する者が出資、融資、取引その他の関係を通じてその事業活動に支配的な影響力を有する者 |
【7号 密接関係法人】
本号は、申請者と密接な関係を有する法人が風俗営業の許可を取り消されている場合は、当該取消しの日から起算して5年を経過するまでの間は、当該申請者は風俗営業の許可を受けることができないこととしたものです。

本号のイ~ハは、それぞれ、上図における
イ:A(親会社)
ロ:B(兄弟会社)
ハ:C(子会社)
に対応しています。
本号の改正に伴い、本号のイ~ハに該当する基準につき、「国家公安委員会規則で定める」とされている部分に関し、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則において、以下のとおり一部改正が行われ、規定されました(2025年11月28日施行)。
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第6条の3(許可を受けようとする者と密接な関係を有する法人) 2 法第4条第1項第7号ロ(法第31条の23において準用する場合を含む。)の国家公安委員会規則で定める者は、次に掲げる者とする。 3 法第4条第1項第7号ハ(法第31条の23において準用する場合を含む。)の国家公安委員会規則で定める者は、次に掲げる者とする。 |
このように、改正法第4条第7号における「事業を実質的に支配し、又はその事業に重要な影響を与える関係にある」に該当するか否かの基準として、同規則第6条の3各項第1号及び第2号において株式の保有又は資本金の拠出が過半数である場合には該当することを規定し、同条各項第3号中において「緊密な関係がある」場合に該当することを規定しています。
「緊密な関係がある」への該当性の判断に当たっては、両者の関係が形成された経緯、両者の関係状況の内容、両者の過去の議決権の行使の状況、両者の商号の類似性等を踏まえることになります。
例えば、
- 役員若しくは使用人である者、又はこれらであった者を、他の法人の代表権のある役員として派遣している法人
- 他の法人の資金調達額の総額のうち相当額について融資(債務保証及び担保の提供を含む。)を行っている法人
- 技術援助契約を締結しており、当該契約の終了により、事業の継続に重要な影響を及ぼすこととなる法人
- フランチャイズ契約等により著しく事業上の影響を及ぼすこととなる法人
等は、一般的に「緊密な関係がある」者に該当する者と考えられるほか、過半数には及ばないまでも相当数の議決権を有していること、接客や経営に関するマニュアルの配布、役員や従業員の指導・教育を通じて事業の方針の決定に影響を及ぼしていることなども含め、法人間の関係性を総合的に考慮して判断することとなります。
【8号 警察による立入調査後に許可証の返納(処分逃れ)をした者】
本号は、立入調査が行われた日から聴聞決定予定日までの間に許可証の返納をした場合は、当該返納の日から起算して5年を経過するまでの間は、当該許可証の返納をした者及びその役員について、風俗営業の許可を受けることができないこととしたものです。
本改正に伴い、本号ロに規定する聴聞決定予定日について、以下のとおり、同施行規則の一部改正により規定されました(施行日は同前)。
施行規則において、以下のとおり一部改正が行われ、規定されました(2025年11月28日施行)。
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第6条の4 (風俗営業者に対する聴聞決定予定日の通知) |
改正法第4条第1項第8号ロに規定する聴聞決定予定日については、
ア 施行規則第6条の4第1項により、立入りを行った日から90日以内の特定の日とすることとされているが、必ずしも聴聞決定予定日と実際の聴聞の日が一致する必要はなく、あくまでも、立入りを行った時点で、聴聞の要否が決定すると見込まれる日を聴聞決定予定日として通知することとする。
イ 聴聞決定予定日の通知は、「審査基準等のモデルの改定について(通知)」(令和7年10月17日付け警察庁丙保発第15号)法第26条第1項の処分基準に照らし、処分事由に係る量定及び処分を加重すべき事由の存否等を考慮して、法第26条第1項の取消処分を行う可能性がある場合に行うものとする。
ウ 聴聞決定予定日の通知は、必ずしも文書によってすることを必要とせず、口頭によることも認められるが、口頭で通知を行った場合であっても、同条第2項に基づき、聴聞決定予定日通知書を交付するものとする。
エ 風俗営業の廃止について相当な理由がある場合には、法第4条第1項第8号の欠格事由には該当しないこととされているところ、相当な理由がある場合とは、例えば、立入りが行われる以前から廃業を予定しており、従業員等にも立入りが行われる前にその旨を通告していた場合等であり、当該理由については、廃業をした者が立証することとなる。
とされています。
【9号 合併に係る欠格事由】
改正法第4条第1項第9号の趣旨は、法第26条第1項の規定による風俗営業の許可の取消しにより風俗営業の許可の欠格事由(法第4条第1項第6号)に該当することとなることを回避する手段として合併を利用しようとする法人の役員を、合併により法人が消滅した日から起算して5年を経過しない間、欠格者に該当させることにあります。
「前号イの公示の日前60日以内に役員であつた者」又は「前号ロの立入りが行われた日前60日以内に役員であつた者」を対象とするのは、こうした時期に役員であった者は、合併を実施するという意思決定に関与していた可能性が高いためです。
なお、相当な理由がある合併の場合には、本号の欠格事由には該当しないものとされています。「相当な理由がある」とは、例えば、合併を行うという内部的決定がなされた後に法26条1項の規定による風俗営業の許可の取消処分に係る聴聞の対象となる事由が発生した場合をいいます。
【10号 分割に係る欠格事由】
改正法第4条第1項第10号の趣旨は、法第26条第1項の規定による風俗営業の許可の取消しにより風俗営業の許可の欠格事由(法第4条第1項第6号)に該当することとなることを回避する手段として分割を利用しようとする法人及びその役員 を、分割の日から起算して5年を経過しない間、欠格者に該当させることにあります。
本号により分割の日から起算して5年を経過しない間欠格者となる法人は、
① 分割により法4条1項8号イの聴聞に係る風俗営業を承継させた法人
② 分割により法第4条第1項第8号イの聴聞に係る風俗営業以外の風俗営業を承継した法人
③ 分割により法第4条第1項第8号ロの立入りに係る風俗営業を承継させた法人
④ 分割により法第4条第1項第8号ロの立入りに係る風俗営業以外の風俗営業を承継した法人
です。例えば、A店とB店を営む風俗営業者たる法人甲があるとして、A店において聴聞に係る事由が生じた場合、甲がA店を他の法人である法人乙に承継させるべく分割をすると甲は①に当たることとなり、他方、甲にA店を残し、B店を法人乙に承継させると、乙が②に当たることになります。A店が立入りを受けた場合も同様に、甲がA店を法人乙に承継させるべく分割をすると甲は③に当たることとなり、B店を法人乙に承継させると乙が④に当たることになります。
要するに、行政処分を免れようとして分割に関与した法人のうち、聴聞を受けないこととなるものが本号の欠格事由に該当することになります。
この場合、当該分割の承認の申請がなされた時点においては、いまだ分割の効果が生じていないので、本号の欠格事由には該当せず、したがって他の欠格事由にも該当しない限りは承認がなされます。しかしながら、その後分割の効力が発生する日に至り、承認の効果として風俗営業者の地位の承継が生じた時点において、自動的に本号の欠格事由に該当することになり、法第8条第2号により許可の取消しがなされるべき対象となることになります。
一方、本号により分割の日から起算して5年を経過しない間欠格者となる役員は、法第26条第1項の規定による風俗営業の許可の取消処分に係る聴聞の期日及び場所の公示の日前60日以内に①若しくは②の法人の役員であった者又は法37条2項の規定による風俗営業の営業所への立入りが行われた日前60日以内に③若しくは④の役員であった者です。これは、こうした時期に役員であった者は、分割を実施するという意思決定に関与していた可能性が高いためです。
なお、相当な理由がある分割の場合には、本号の欠格事由には該当しないものとされています。「相当な理由がある」とは、例えば、分割を行うという内部的決定がなされた後に法第26条第1項の規定による風俗営業の許可の取消処分に係る聴聞の対象となる事由が発生した場合をいいます。
【13号 暴力的不法行為者がその事業活動に支配的な影響力を有する者】
本号は、風俗営業の許可を受けようとする個人の事業活動に支配的な影響力を有する者や、風俗営業の許可を受けようとする法人の事業活動に支配的な影響力を有する者で当該法人に関していかなる名称も有していない者が暴力的不法行為者に該当する場合について、風俗営業の許可をしてはならないこととしたものです。
「第3号に該当する者」(「暴力的不法行為者」)とは、「集団的に、又は常習的に暴力的不法行為その他の罪に当たる違法な行為で国家公安委員会規則で定めるものを行うおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者」であり、具体的には、次のような者が該当します。
① 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)第2条第6号に規定する暴力団員(以下単に「暴力団員」という。)
② 暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
③ 暴力団以外の犯罪的組織の構成員で、当該組織の他の構成員の検挙状況等(犯罪率、反復性等)から見た当該組織の性格により、強いぐ犯性が認められる者
④ 過去10年間に暴力的不法行為等(施行規則第6条)を行ったことがあり、その動機、背景、手段、日常の素行等から見て強いぐ犯性が認められる者
本号該当性の有無の判断に当たっては、申請者の事業活動と暴力的不法行為者との関わり方を個別具体的に検証することとなりますが、本号の「支配的な影響力」を有する者の範囲は、一般に、同項6号の「支配力」を有する者よりも広いと解され、例えば、風俗営業者たる法人に関していかなる役職等も有していない者であっても該当し得ることになります。典型的には、暴力的不法行為者が自己又は他人の名義で多額の出資や融資をしたり、多額の取引関係を持ったりしている相手方が、これを背景として当該暴力的不法行為者から事業活動に支配的な影響力を受けている場合が該当します。
また、本号中の「その他の関係」には、親族関係、人的資本関係、株式所有関係等、種々の関係が含まれ、例えば、次のような場合が考えられます。
① 暴力的不法行為者の親族(事実上の婚姻関係にある者を含む。)又は暴力団若しくは暴力的不法行為者と密接な関係を有する者が、事業者個人又は法人である事業者の役員であることのほか、多数の株式の所有等により、暴力的不法行為者が事業活動に支配的な影響力を有している場合
② 暴力的不法行為者が、名目のいかんを問わず、多額の金品その他財産上の利益の供与を受けていたり、売買、請負、委任その他の多額の有償契約を結んでいるという事実から、その者の事業活動に支配的な影響力を有していると認められる場合
なお、本号は法人たる風俗営業者のみならず、個人事業者にも適用される欠格事由です。
【申請時の添付書類】
本改正に伴い、申請時に提出する書類に関しても、以下のとおり変更がありました。
① 改正法第4条第1項第7号及び第13号に掲げる者のいずれにも該当しないことを誓約する書面
② 申請者と密接な関係を有する改正法第4条第1項第7号イからハまでに掲げる法人があるときは、その名称及び住所並びに代表者の氏名を記載した書面
③ 申請者が株式会社であるときは、株主名簿の写し
(注)この点についてはパブリックコメントの結果が公表されています。
警察庁 令和7年10月17日「『風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に基づく許可申請書の添付書類等に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令案』等に対する意見の募集結果について」
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCM1040&id=120250021&Mode=1)
事業者が留意すべき事項
今回の改正により、無許可営業等に対する罰則が強化され、法定刑が引き上げられましたが、それだけでなく、組織的犯罪処罰法上の前提犯罪に含まれたことで関連規定による処罰、没収及び追徴の対象となり得るようになったという文脈においても厳罰化を理解する必要があります。
また、今回の改正により、資本関係等による経営グループ(企業体)という視点が導入されることになり、一つの法人が許可取消処分を受けると、グループ全体が一蓮托生で取り消されることになりました(法第8条第2号)。従来は行政処分の影響を遮断するなどの目的から多数の法人を設立することがありましたが、本改正はそうした組織編制方針に影響を与える可能性があります。事業者としては、自社のグループを把握して密接関係法人を切り出した上で、全法人に問題がないことを確認し続けることが望ましいと思われます。
仮に、設立当初には問題がなかった法人であっても、その後の事情の変化によっては営業許可が取り消されるおそれがあります。とくに接待飲食営業に関しては、第1回から第3回までのブログでも紹介したとおり規制対象となる行為が拡大しているため、企業のコンプライアンスないし危機管理の観点からは、あらためて自社の現状を確認した上で、適切に対応することが重要と考えられます。
以 上
参照資料:警察庁 令和7年10月20日警察庁丙保発第14号等「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準について(通達)」
https://www.npa.go.jp/laws/notification/seian/hoan/hoantsutatu2/R071017hueikaisyaku.pdf
警察庁 令 和 7 年 1 0 月 1 7 日 丁保発第196号等「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に基づく許可申請書の添付書類等に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令等の公布について(通知)」
https://www.npa.go.jp/laws/notification/seian/hoan/hoantsutatu2/R071017hueihureikisokukouhu.pdf
警察学論集第78巻第12号「令和7年風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部改正について~改正の背景・経緯、審議状況等~」前警察庁生活安全局長 檜垣重臣 「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律について」前警察庁生活安全局保安課課長補佐 木村悠太等
なお、本ブログは、一般的な情報提供を目的としたものであり、当事務所の法的アドバイスではございません。また、本ブログにおける見解は、執筆者の個人的見解であり、当事務所の見解ではございません。個別具体的な事案に関する問題や、本改正法案に関してご不明な点等ございましたら、当事務所の弁護士にご相談ください。

